PTA会費は適正に使われているのか。教育行政学者・福嶋尚子さんと公立中学校事務職員・栁澤靖明さんは、使い道によっては削減できるものが多く、中には法律に触れる可能性を含むものもあると指摘する――。

■PTA会費は年間1000円~9000円
PTAは本来、設置が任意なら、その入退会も任意であり、活動や取組内容も会員の合意で決められる任意団体だ。しかし、本人の入会意思が確かめられることなく自動的に入会したことになっていたり、会費の支払いや活動への参加や協力が半ば強制的に求められたりするPTAがあり、批判の声が上がることも多い。
会費を原資とするPTAの予算規模は、ところによりさまざまだ。
総務省統計局が公表している「小売物価統計調査(動向編)」の最新版(2026年3月)によると、PTA会費は地域により大きく異なり、年間1000円程度から高いところでは9000円台にも及ぶ。
例えば、都内区部の小学校では1世帯あたり年間2240円で、仮に1校で500世帯が加入しているとすると、この学校のPTA予算は年間112万円となる。800世帯が加入しているとすると、179万円だ。横浜市は小学校が年間3610円と、少し高く、500世帯加入だと180万円、800世帯加入では288万円ほどになる。
1世帯あたり月額百数十円から300円程度なので、「これくらいなら」と疑問を持つことなく支払っている家庭も多いかもしれない。また、PTAの活動内容や予算は、特段の見直しをすることなく前年度を踏襲することも多い。活動計画書や予算・決算報告書が配られるのは、ただでさえ忙しい年度初めや年度末だ。役員決めほどの関心は集まらないのが実態だろう。
しかし、学校単位でみると、年間百数十万円から300万円近い予算規模になる。
そもそもこれだけの予算がPTAに必要なのだろうか。そしてこの予算は、適切に使われているのだろうか。
■PTA会費は何に使われているのか
こうした予算を、PTAはなにに支出しているのか。一つひとつ見ていこう。
まず、PTA自体の運営費である。会員に向けた連絡のためのおたよりや事務用品、会議を開催する際の会場費、資料の印刷費用、お茶代などがこれにあたる。印刷機をリースしたり、パソコンを所有したりしていることもある。昨今は、メールやビジネス用SNS、オンライン会議を活用することで運営費を圧縮するPTAも増えている。
次に、PTAの活動費である。レクリエーションや講習会など、PTA主催イベントなどの事業費用が該当する。必要物品の購入費や会場費、講師やゲストの謝礼のほか、広報紙をつくっている場合は印刷費、制作費、デザイン料がかかるだろう。
ただし、工夫すれば会費をほとんど使わずに活動することもできる。
イベントの飲み物は各自が持参するようにしたり、参加者の合意のもと実費を参加費として集めて用意したりもできる。PTA行事として人気の給食試食会も、参加者が自分の給食費を支払って参加することが多い。広報紙も、構成を簡素化したり、ペーパーレス化で印刷代を削減したりしているケースがある。バザーや廃品・資源回収、地域のお祭りの出店などで収入を得て、活動費を賄うこともできるだろう。
■問題が相次ぐ上位団体への分担金
PTAが、市区町村、都道府県などの上位団体のPTA協議会/連合会に加入している場合、会費を支払う必要がある。
ただし、日本PTA全国協議会(いわゆる日P)では、会計管理が問題となり刑事事件にまで発展した(*1)。下部組織の退会が相次ぎ、会員数の急減が起きている(*2)。さらには、岡山県PTA連合会に次いで埼玉県PTA連合会が2026年3月、解散を決議している(*3)。今後も会員が支払った会費から上位団体に会費を“上納”するしくみは、各地で見直されていくだろう。
また、「PTA保険」に加入している場合、PTAが会費から保険料を一括して支払っていることもある。PTA保険は、PTA活動中の事故に伴うけがや物品の破損などが補償される保険だ。個人で支払うよりかなり安いことに加え、P連にとっては「事務手数料」名目での保険事業収入が大きな収入源となっていることが多い。

しかし、収益が横領される事件が起きたり、営利団体でもないのに余剰金が多くなったり(*4)、個人で加入している保険で対応できる場合もあることから、「PTA保険」への加入にも疑問の声が上っている。

*1 2024年8月18日朝日新聞デジタル PTA全国組織「日P」に激震 元幹部逮捕で会計管理の甘さ浮き彫り

*2 2025年4月19日 読売新聞オンライン PTA全国組織、1年間で会員100万人減…不祥事受け千葉県や横浜市など下部組織が退会

*3 2026年3月27日 埼玉新聞 埼玉県PTA連、解散へ…80年の歴史に幕、全国2例目 各校PTA会長がオンラインで議決、賛成多数で反対は1校のみ 1949年に結成、生活スタイル変化、不適切運用…これまでの変遷 会長「PTAはなくならないと思う」

*4 2024年8月20日 朝日新聞デジタル 「割安」な保険料のPTA保険 手数料収入で会費の抑制にも
■記念品は「加入者の子どもだけのもの」なのか
入学式、卒業式、運動会などの学校行事で子どもに記念品を配る場合も、会費から賄うことがある。鉛筆やノート、消毒用アルコールなどの比較的安価なもののこともあれば、マグカップやTシャツなど比較的高価なもののこともある。
これについては時々、「PTAに加入しなければ、あなたの子どもだけ運動会の記念品がもらえなくなる」と言ってPTAへの加入を強いるケースなどが、SNSなどで話題になる。
厳密にいうと、PTAの会員はあくまでも保護者であり、子どもは会員ではない。学校の教育活動や行事のなかで、PTAの構成員ではない子どもたちに記念品などを贈るのであれば、すべての子どもたちに公平に贈る必要がある。保護者が会員である子どもや、担任教員が会員である学級の子どもたちのみに配布するようなことは、教育基本法第4条1項の掲げる「教育の機会均等」原則や、第6条1項の掲げる学校の有する「公の性質」に反する可能性が高い。
ここまでに挙げた費用は、効率化の余地はあるし、適切な手続きや管理が必要ではあるが、PTA会費の使いみちとしては問題のないものだ。しかし、そうではないものもある。
■プロジェクターやエアコンをPTAが“寄附”
2023年に東海テレビは、PTAから名古屋市の学校に対する寄付総額が、過去5年間で約1億8400万円にのぼっていたと報道した(*5)。高額なものでは、プロジェクター(115万円)やエアコン(89万円)などがあり、本来なら設置者負担、つまり自治体が負担すべき費用である。
このことを報道では、PTAが学校の「第二のサイフ」になっていると問題視している(*6)。


同様の事態は、香川県やさいたま市、福島県などでも報道されてきた。
寄附の対象は、高額な備品や設備に限らない。フラットファイルや封筒、インクカートリッジなどの事務用品、教室のカーテンクリーニング代や消毒用アルコール、部活動で使うボールかごやネットを張るポールなど多岐にわたる。
青森県八戸市のある小学校では、駐車場の整備にかかった122万円を、PTA会費と、学校が保護者から徴収した「環境整備費」で賄っていたことなどが、包括外部監査によって明らかになった(「令和4年度 包括外部監査結果報告書」)。
福島県郡山市では、2024年9月までの5年間で、PTAから296件の寄附を受け取っていた学校があることも判明した(*7)。この学校では、PTAの銀行口座の通帳と印鑑が学校で保管されており、日常的にPTA予算で学校に必要な物品購入を行っていたようである。しかも当初、郡山市ではPTAからの寄附は5年間全くなかったことになっていた(*8)。全校調査で初めて、多数・多額の寄附が適切な手続きもなしに行われていたことが明らかになった。
これらは氷山の一角だろう。学校からの要望にこたえてPTAが学校の備品を買う(支払う)という話は、よく耳にする。PTAから学校への寄附は、表に出ていないだけで、全国各地で行われている可能性があるのだ。

*5 2023年5月17日 東海テレビ PTAは『第二のサイフ』か…学校等で“ルール無視”のPTAからの寄付 1億4800万円 名古屋市教委が調査結果公表

*6 東海テレビ かわるPTA

*7 2025年4月19日 河北新報オンライン 福島・郡山PTA費問題 296 件の寄付を受けた小学校も 寄付調査の全回答書を河北新報オンラインで公開中

*8 2024年10月8日 河北新報オンライン 福島・郡山市立小中PTA費による備品購入 全校で過去5年寄付記録なし 専門家「ごまかしの論理か」
■学校への寄附は法律に抵触
PTAから学校への寄附は、何が問題なのか。


総会や常任理事会に諮るなど、予算承認の正規の手続きを踏んでいるのであれば問題ないと思うかもしれない。しかし、そもそも「学校からの要望に応えて備品を購入し、寄附する」ことは、法律に抵触する可能性が高い。
1948年に施行された地方財政法の第4条の5「割当的寄附金等の禁止」には、以下の条文がある。
(……)地方公共団体は(……)住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない
「自治体」を「学校」に、「住民」を「保護者」に読み替えると、学校からの要望にこたえて会費からものを買う(支払う)行為は、この条文に反していると読める。強制がない場合の寄附(自発的な寄附)は法的に認められているが、その場合は学校から寄附採納手続き(学校の備品として自治体に登録する手続き)をしてもらう必要がある。
さらに、地方財政法第27条の4地方財政法施行令第52条は、学校の職員給与や建物の維持修繕に必要な費用は、直接であっても、PTAをとおして間接的にであっても、保護者に負担させてはならないと規定している。
■本来は税金で賄うべき
PTAからの寄附は、「学校のためなら」「子どものためなら」という保護者の善意を利用して、行政(税金)で賄うべき学校運営費の「穴埋め」をしていることになる。
高額な備品であれば、「おかしい」と気づく人もいるかもしれないが、少額の寄附が都度同意を得ることなく日常的に行われている場合、気づかれていないこともある。学校が衛生用品や文具すら公費で買えないと聞けば、気の毒に思って「これくらいは協力してもいいのでは」と思ってしまうかもしれない。
しかし、本来、公費予算が足りず必要なものを買えないなら、学校が自治体に要求し、税金で解決すべきである。
PTAが安易に肩代わりすると、予算不足という事態が覆い隠されたり、自治体が「PTAが出してくれるなら予算をつけなくていい」と甘えてしまったりする。負のスパイラルが生じるのだ。
また、保護者の経済力(PTAの財政力)によって、学校の教育環境に格差が生まれてしまう。全ての学校で求められる教育活動、例えばICT教育を進めるためのプロジェクターの整備は、自治体が全学校で行うべきで、経済的余裕のあるPTAに支えられた学校だけが行えばよいものではない。
善意で行われる寄附が、教育環境に影響をもたらすことは、あってはいけないのだ。
■PTA会費は削減できる
運営費は効率化の余地が大きく、もっと削減できるはずだ。そして活動費も、会員が本当に参加したい、取り組みたいと思う活動のあり方を模索し、見直せるのではないか。また、PTA協議会や連合会などへの分担金や保険料については、そもそも上位団体への加入自体に意義が感じられないのであれば、見直すべきだろう。子どもたちへの贈り物も、会員が減少しており費用負担が大きいのであれば、やめることを考えてもいい。
中には、「PTA会費は学校に寄附をするためにある」と思い込んでいる人もいるかもしれない。しかし、それは法律に抵触する可能性が高いことに加え、本来は税金で賄うべきものを保護者が穴埋めすることにもなり、教育のありかたをゆがめてしまうことになりかねない。
端的に言えば、適正かつ会員全員が納得感をもつような使途だけに絞れば、PTAにはそれほど大きな予算は必要ないはずだ。筆者の所属していたPTAは、法に抵触しかねない学校への寄附をやめるなどした結果、年額4000円から2000円まで減額することができた。
PTAは任意団体だからこそ、会員一人ひとりが意義を感じられる会費の使い方を模索する必要があるだろう。
PTA活動や予算は、変えてはいけないものではない。まずは、活動計画書や予算書、決算報告を開き、PTA予算と決算を確認することから始めてみてはいかがだろうか。

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福嶋 尚子(ふくしま・しょうこ)

千葉工業大学准教授、教育行政学者、「隠れ教育費」研究室 チーフアナリスト

新潟大学大学院教育学研究科修士課程を経て、2011年、東京大学大学院教育学研究科博士課程に進学。2015年より千葉工業大学の教職課程に助教として勤務し、教育行政学を担当(現在は准教授)。2016年12月博士号(教育学)取得。「子どもを排除しない学校」「学校の自治」「公教育の無償性」の実現、「教職員の専門職性」の確立を目指し、教材教具整備・財務に関わる学校基準政策、学校評価・開かれた学校づくり・チーム学校等の学校経営改革について、現代的視点と歴史的視点の両面から研究している。著書に『占領期日本における学校評価政策に関する研究』、共著に『公教育の無償性を実現する 教育財政法の再構築』、『隠れ教育費 公立小中学校でかかるお金を徹底検証』、『教師の自腹』など。

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栁澤 靖明(やなぎさわ・やすあき)

公立中学校事務職員、「隠れ教育費」研究室チーフディレクター

「事務職員の仕事を事務室の外へ開き、教育社会問題の解決に教育事務領域から寄与する」をモットーに、教職員・保護者・子ども・地域、そして社会へ情報を発信。研究関心は「教育の機会均等と無償性」「子どもの権利」「PTA活動」など。主な著書に『学校徴収金は絶対に減らせます。』(学事出版、2019年)、『本当の学校事務の話をしよう』(太郎次郎社エディタス、2016年)、『隠れ教育費』(太郎次郎社エディタス、2019年)、『学校財務がよくわかる本』(学事出版、2022年)、『教師の自腹』(東洋館出版社、2024年)、『学校安全がよくわかる本』(学事出版、2025年)など。

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(千葉工業大学准教授、教育行政学者、「隠れ教育費」研究室 チーフアナリスト 福嶋 尚子、公立中学校事務職員、「隠れ教育費」研究室チーフディレクター 栁澤 靖明)
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