■日本は「座りすぎ大国」
1日8時間以上座っている人が多数を占めている、「座りすぎ大国」の日本。
じつは1日8時間以上座っている人は、4時間未満の人と比べると死亡リスクが1.5倍になるという研究結果が明らかになっています。
座っている間は全身の筋肉の60~70%を占める下半身の筋肉を使わないため、活動代謝があまり行われません。
また、下半身の血液を心臓に送るふくらはぎがうまく機能せず、血流や血中の脂質代謝が低下します。
ゆえに、血液中の中性脂肪の増加、善玉コレステロールの減少、血中インスリン感受性の低下などを引き起こし、最終的には動脈硬化などにつながるとされています。
さらに、脳の血流も悪くなることで認知症にかかるリスクも高まります。活動の低下は認知機能の低下やうつ病といったメンタルヘルスへの影響も大きいといわれています。
■シニアにおすすめ「ウォーキング」
シニアの方でも手軽にはじめられる運動としておすすめなのがウォーキングです。
身体的に負担を感じずにできる有酸素運動で、運動習慣がない人でもはじめやすいでしょう。
軽く息が弾む程度のウォーキングは、心肺機能を高め、体力向上や健康維持に役立ちます。
また、日に当たることで、ビタミンDが体内で生成され、骨の形成をサポート。骨密度の低下を防ぎ、骨粗しょう症のリスクを回避できます。
丈夫な骨を育てるにはカルシウムの摂取だけではなく、骨に適度な衝撃を与えることも必要。足裏からの振動は骨を強くするのに適しています。
■下半身の筋肉がフルに活動
ウォーキングによって太ももやお尻などの下半身の筋肉が鍛えられますが、それでも老化による筋力の減少を抑えきれません。
筋力を上げたいという方はストレッチやウエイトトレーニングも行うとよいでしょう。
筋力がつくと足の運びが軽くなり、ひざ痛の予防や速い動作をするときに使う速筋が鍛えられて、つまずくことも減ります。
ウォーキングを行うと第2の心臓といわれるふくらはぎをはじめ、全身の筋肉の60~70%を占めている下半身の筋肉がフルに活動します。
その結果、血液や栄養が体全体に行き渡るのです。
■ウォーキングで生活習慣病が改善
ウォーキングが習慣になれば、内臓脂肪が燃焼し、筋肉がより活発に動き、血液循環や血流が良好になります。
ゆえに心疾患、脳卒中な脳疾患の危険性が低下し、肥満や糖尿病、高血圧、動脈硬化といった生活習慣病の改善や予防につながります。
よく痛みがあって受診しても検査では異常なしと診断される不定愁訴(漠然とした体の不調)を訴える方が多いのですが、これも血行不良や血流の低下が大きく関係しています。
ところで、肥満というと脂っぽい食事のとりすぎというイメージが強いかもしれませんが、じつはその多くが糖質のとりすぎによるもの。
ウォーキングでも肥満予防になりますが、炭水化物、糖分の摂取を減らすことが対策としては最も有効です。日常生活で糖質の過剰摂取を控えることも意識しましょう。
■ウォーキングで睡眠の質が上がる
日中活動している間に壊れた細胞をメンテナンスするのが睡眠です。
年を重ねると、なかなか寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く目が覚めたりすることが多くなりますが、ウォーキングを行うことで適度な疲労がもたらされ、それによって、より質の高い睡眠を取ることができます。
さらに疲労回復にも効果的で、ウォーキングで筋肉を動かすと全身の血流がうながされ、たまっていた疲労物質や老廃物が排出されます。したがって、栄養や酸素を取り込みやすくなり、筋肉の緊張を取ることや疲労回復につながります。
また、外の風景が変化することによる視覚的な刺激で、脳も活性化します。
一人暮らしや家からほぼ出ない方など孤独な状態でのうつ病の発症リスクは通常の2.7倍、アルツハイマー型認知症の発症リスクは2.1倍、心疾患のリスクは1.3倍にあがるといわれています。ウォーキングでこれらのリスクも減らすこともできます。
■ランニングの負担は3~5倍
しっかりと体ができあがっていない高校球児が頑張りすぎてケガをするのと同じように、基礎体力が低かったり、筋力が衰えていたりといったシニアの方が、昔できていたジョギングやスポーツをしてケガをしたり、登山でひざや腰を痛めたという話をよく聞きます。
例えば、ウォーキングでの着地時に足にかかる負担は体重の5倍といわれていますが、ランニングではそれが3~5倍と一気に跳ね上がります。
■1日1万歩も必要ない
それだけの負荷がかかってもそれを支えられる筋肉、関節があれば問題ありませんが、衝撃を受け止める筋力がなければひざや腰を痛めたり、思わぬ事故につながったりします。
若いころと比べて筋肉や骨などの身体機能が弱まり、認知機能やバランス感覚も低下しているため、健康のために行っているつもりの運動が逆にリスクになっている場合もあるのです。
いきなり激しい運動をするのは危険です。まずは自分の体力に合った運動を選ぶことが大切です。
健康的な生活を送るために1日1万歩を歩くことを目安にしがちですが、それは厚生労働省の「健康日本21」が明記している基準で、成人のための目標です。
毎日それだけの歩数を歩くのは大変と思いながらも、1日1万歩必要だと思い込み、一生懸命実践している人、無理にその目標に近づこうとしている人もいるのではないでしょうか。
実際に厚生労働省の基準では、シニアの目標値は男性が6700歩、女性が5900歩とされています。
仮に1日1万歩を歩くことを目標にしたとしても、いきなり1万歩を歩くのではなく、徐々に増やしていくことが大切です。
足の裏や股関節周りが痛くなるなど、筋肉から「ちょっと休憩させてくれよ」というサインが出ているときや、次の日になっても疲労が回復しないのは明らかに歩きすぎの状態です。
次の日でも痛みが残っている場合は、筋疲労していることも多いので、無理して歩かず休息しましょう。
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荻野 秀一郎(おぎの・しゅういちろう)
作業療法士、「フラミンゴの介護予防チャンネル」主宰
1989年生まれ。2012年より回復期リハビリ病院で勤務し、在宅復帰に向けたリハビリ業務を行う。
著書に『動画つきで一目でわかる 家庭の介護 要介護にならない!自宅でできるかんたんストレッチ』(株式会社アスク)がある。
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(作業療法士、「フラミンゴの介護予防チャンネル」主宰 荻野 秀一郎)

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