多量のタスクを悩みなく進めるにはどうすればいいか。UkiUki製作所代表の田村悠揮さんは「ビジネスでは5W1Hや3C分析といったフレームワークがあるが、僕が行き着いたのは最もシンプルな2つの○だ。
はじめて取り組む仕事でも、迷わず思考の取っ掛かりをつかめる」という――。
※本稿は、田村悠揮『考えてるつもりがなくなる。』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■「ルール」が思考をガイドしてくれる
日々の仕事で無意識に使っている「ルール」は、意外とたくさんあります。身近な例で言えば、会社で使う日報や報告書のフォーマットも、立派なルールの一つです。
「日報なんて面倒だ」と思うかもしれませんが、もしフォーマットが一切なく、真っ白な紙を渡されて「今日一日のことを分かりやすく整理して書いて」と言われたらどうでしょうか。
「何から書くべきか。どう構成するべきか……」
と、おそらく内容の前に「書き方」を考えて疲れてしまうはずです。
でも、「業務内容」「成果」「課題」といった項目が決まっていれば、それに沿って記入するだけで済みます。「どの項目で書いたらいいか」と迷うことがないのは、フォーマットという「ルール」があなたの思考をガイドしてくれているからです。
ビジネスでよく使われる「5W1H」も同じです。「いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)……」という項目を埋めるだけで、複雑な状況もスッキリ整理できます。
これらビジネスのフレームワークの正体はすべて、思考を迷わせないための「ルール」に過ぎません。
■仕組み化すると、「考える」がラクになる
ルールを使う最大のメリットは、漠然とした「考える」という行為を、具体的な「作業」に変えてくれることです。
「どうしよう……」と頭を抱えてひねり出すのではなく、決められた枠の中に情報を入れていく。手順が決まってしまえば、あとはそれに沿って手を動かすだけです。「何から手をつければ……」という悩みは消え、スッと迷わず最初の一歩を踏み出すことができます。
「考える」とは、決して気合で答えをひねり出す苦しい時間ではありません。
適切なルールを使い、脳が動きやすい「仕組み」を整えてあげる。
そうすることで、思考はもっと軽やかに進むものなのです。
世の中には「3C分析」や「5W1H」のように、3つや6つの要素を扱うルールもたくさんありますが、私が試行錯誤してたどり着いた結論は、最初の一歩には「○2つ」が最も適しているということでした。
その理由を解説していきます。
■視点を増やす「○2つ」
「視野を広げる」とは、物事を捉える範囲や幅を広げること。膨大な知識を蓄え、判断できる領域を広げ、多様な価値観を受け入れられるようになる。
そんな「全体像を理解できている状態」を目指すものです。
ですが、これほど難しいアドバイスもありません。
これを実現するには、長い時間をかけた経験の積み重ねと、高度なスキルが不可欠です。どれだけ意識したとしても、今日明日でいきなり「視野」が劇的に広がるなんてことはありません。
では、経験もスキルもない私たちは、どうすればいいのでしょうか。
発想を替えてみましょう。
いきなり「視野」を広げようとするのではなく、「視点を増やす」ことに意識を向けてみるのです。
想像してみてください。
暗闇の中でライトを持って立っている自分がいるとします。
見える範囲(視野)は、今持っているライトの光が届く範囲だけです。
この状態で「もっと広い範囲を見ろ」と言われても、ライトが1本しかなければ物理的に不可能です。
ですが、「もう1本のライトを持ち、照らしてみる」、これならより広い範囲を見ることができそうですよね。

この「もう1本のライトで照らすこと」こそが「視点を増やす」ということです。
1本のライトが照らす範囲は小さくても、ライトを2本に増やせば、結果としてあなたの目の前には「広い視野」が自然と現れてくるのです。
「広い視野で考える」、これを2つの視点から始めていけばいいのです。
この「視点を増やす」最もシンプルな方法が「○を2つ書く」ことなのです。
■いざ考え始めると本末転倒になることも
〔ステップ①〕一番上に「テーマ」を描く
ここからは、実際に「○2つ」を使って思考を動かしていきましょう。基本の「5つのステップ」をご紹介するので、一緒に手を動かしてみてください。
いきなり○を書く前に必ずやることがあります。
ノートの一番上に「今から何について考えるのか(テーマ)」を書くことです。
いざ考え始めると、思考が広がったり、「そもそも何について考えていたんだっけ?」と本末転倒になったりすることがよくあります。
テーマを最初に書いてピン留めしておくことで、迷ったときに戻ってくることができます。
今回は練習として、ノートの一番上にこう書いてみてください。
テーマ:「今日、定時までに終わらせるタスク」
今日はどうしても定時で帰らないといけないという日に限って、想定外の仕事が舞い込んだり、タスクがあふれて「何から手をつけたらいいのか……」と頭が真っ白になったりすること、ありますよね。

そんなときこそ、頭だけで考えずに○を2つ使って整理してみましょう。
■豪快にグルグルッと大きく書く
〔ステップ②〕○を2つとラベルを書く
テーマの下に、ノートに大きく「○」を2つ書きます。
ここでのコツは、「大きく書くこと」です。
小さく書くと、不思議と思考まで縮こまってしまうものです。
始めのうちは、1ページ使うくらいの勢いで、豪快にグルグルッと書いてください。
次に、○の上部に「ラベル(問い)」を書きます。
今回は「優先順位」を整理したいので、次のようにラベルを書いてみましょう。
左の○:「今日中にやること」
右の○:「明日でもいいこと」
ラベル選びに迷うことがあるかもしれません。そのときは次の例を参考に「仮置き」で進めてみてください。あとで書き直しても大丈夫ですから、気軽に選んでみてください。
【ラベルの例】

迷っているなら……「メリット」と「デメリット」

意見の整理なら……「主張」と「根拠」

人間関係なら……「自分」と「相手」
■「出すこと」を最優先にする
〔ステップ③〕思いつくままに書き出す
ここが最も大切な工程です。頭の中に浮かんでいることを、箇条書きでどんどん○の中に入れていきます。

ここでのルールは1つだけ。
「壁打ちするように、思いのままにノートに書き出すこと」
「ちゃんとした言葉で書かなくては」「論理的に書かなくては」と身構えなくても大丈夫です。誰かに見せるものではないので、単語だけ、殴り書きのような状態でも十分です。
「出すこと」を最優先にすると、不思議と書いていくうちに思考が整理されていきます。まず、思ったことをすべて吐き出すつもりで書き出してみましょう。
■スッと「気づき」が生まれてくる
〔ステップ④〕書き出した2つを見比べる
出し切ったと思ったら一度ペンを置いて一呼吸つきましょう。自分の頭の中から出てきた情報を一歩引いて客観的に見比べてみます。
すると、スッと「気づき」が生まれてくるはずです。
「あれ、左の○にタスクが偏りすぎている」

「『資料作成』は今日中じゃなくても、明日で間に合うかも」

「一番気がかりなのは『部長への報告』だ」
そんなふうに気になったところをペンでグルっと囲んだり、関係ありそうな言葉同士を線で結んだりしてみてください。
あなたの頭の中でバラバラだった情報がつながり、書き出したメモが「次の一歩」へと変わっていきます。
■思考は確実に前に進んでいく
〔ステップ⑤〕気づきや次のアクションを書く
最後は、全体を振り返ってまとめます。
2つの○の下に、大きく矢印を書いて、その下に「気づいたこと」や「次にやること」を書きます。

無理に行動まで決める必要はありません。整理してみて発見があれば、その気づきをメモするだけで充分です。
もし「まずこれはやろう」と思えることがあれば、忘れないうちに小さな一歩としてメモしておきましょう。どちらであっても、あなたの思考は確実に前に進んでいます。
今回の例なら、こうなるかもしれません。
「まずは部長に報告に行く。その後、資料の構成案だけ作る」
ここまで書けたら、一通りのステップが完了です。
大切なのは、頭の中だけで抱えていたものが、目に見える形になったということです。
ノートを広げる前の「何から手をつければいいんだろう……」というモヤモヤが、数分間で具体的なアクションにまで整理されている。
これが、○を2つ書くだけで思考が動き出すということです。

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田村 悠揮(たむら・ゆうき)

UkiUki製作所 代表

新卒でサイボウズ株式会社に入社。クラウドサービス「kintone(キントーン)」の立ち上げに事業責任者として従事。当社初の「エバンジェリスト」として、プロダクトのセミナーやチームワークの研修講師など、幅広く手がける。退職後、10年以上に渡りセミナーの企画実行を担い、事象をわかりやすく「伝える」スキルを磨く。

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(UkiUki製作所 代表 田村 悠揮)
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