結婚相手に年収を求める「スペック婚」の普及により何が起こっているか。環境活動家の谷口たかひささんは「日本では結婚相手に求める条件のトップが『年収・経済力』だが、この『スペック婚』と呼ばれる状態になると、より条件の良い相手を探し続けてしまう」という――。

※本稿は、谷口たかひさ『休む勇気 人生で一番大事な仕事は「思い出づくり」』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
■調査でわかった「交際相手に求める条件」
日経新聞の記事(2025年5月10日付)によると、現代日本社会では、「アプリ婚」がじつに4人に1人という状態に。男女の出逢い、とくに婚活を目的としたアプリでは、「収入」を入力するのが当たり前になっているようです。
また合コンのような男女の出逢いの場でも、生々しい数字が飛び交うかはともかく、職業や身に着けているものを通して、経済的に安定しているか否かが、恋人(とくに女性が男性)を選ぶ際の大きな判断基準となっているといいます。
「恋愛はともかく、結婚ともなれば経済的な安定を最重要視するのは当たり前」、そう思われるかもしれませんが、じつはそういった国ばかりではないようです。
それは僕自身、世界100カ国を回って、複数の国に住んだ経験からも実感がありますし、実際に次のような調査もあります。
日本最大手の結婚相談所IBJのウェブサイトに掲載されている「日本vs 海外!結婚相手に求めるものはこんなに違う」という記事の中に、国別の「結婚相手に求める条件トップ5」というものがあります。
結婚相手に求める条件トップ5
① 年収・経済力(※女性から男性)

② 学歴・職業

③ 清潔感・身だしなみ

④ 価値観の一致

⑤ 家族との相性・育ち
日本では、とくに女性から男性に対しては、いの一番に「年収・経済力」が挙げられています(ちなみに男性が女性に求める条件では、「家庭的で協力できるかどうか」が見られることが多いようです)。
■欧米は「この人と一緒にいて楽しいか」
では、「欧米(少し大きく括りすぎだとは思いますが)」の回答を見てみましょう。
結婚相手に求める条件トップ5
① 愛情・フィーリング

② コミュニケーション能力

③ ユーモア・一緒に楽しめるか

④ 自立しているか

⑤ 外見の魅力
日本に比べ、「この人と一緒にいて楽しいか?」という人柄が重視されることが多いようです(これは実際にイギリスやドイツに住んでいて強く感じました)。
では、合コンで収入が重視される国は日本だけなのでしょうか?
それは少し言い過ぎで、欧米で4番目に来ている「自立しているか」の中には、もちろん経済的自立も含まれますし、日本のように「経済力」が最重要視される国もあります。中国や韓国です。

反対に東南アジアでは、男女共に「家族思いであること」が大事だそうです。確かに僕の東南アジアの友だちを思い浮かべてみても、大家族で、家族をとても大事にしています。
日本や韓国のように、女性が男性に対して、いの一番に経済力を求める国のもう一つの特徴には、経済的な男女格差があります。
OECDが2023年に発表した「男女賃金格差」で、32カ国中韓国はワースト1位、日本もワースト3位という結果が出ています。
また、欧米では共働きが当たり前なのに対して、日本は(昔に比べればそうではなくなってきているにしろ)まだまだ夫の一馬力で家計を支えるという文化があることも、こういった結果に繋がっていると考えられます。
この「スペック婚」と呼ばれる状態こそが、日本と韓国が「少子高齢化」の最前線を走っている理由なのではないか? という仮説について考えていきたいと思います。
■3年間で約800万人の子どもが団塊の世代に
第二次世界大戦が1945年に終わりを迎えて、戦争が終わって80年以上の時が過ぎました。
考えてみれば、「今年は戦後80年ですね」と言えるのは、とても幸せなことですよね(あれ以来戦争をしていないから言えるので)。
これを「戦後90年だね」「戦後100年だね」と言えるように続けていけるかは、僕たち一人ひとりが政治に関心を持って声をあげていけるかにかかっているのだと思います。
さて、戦後間もない1947~1949年にかけて、この国では「第一次ベビーブーム」と呼ばれる現象が起きました。
戦争が終わったため結婚や出産が相次ぎ、3年間で約800万人の子どもが生まれたのです。
2024年に生まれた子どもの数が約70万人だったことと当時の人口(約8000万人)を考えると、どれだけこの数字が驚異的であるかがわかりますね。

この「第一次ベビーブーム」で生まれたのが、今日も僕たちが「団塊世代」と呼んでいる人たちです(みんな昔は子どもだったんですね、当たり前ですが)。
「第一次ベビーブーム」から約25年後となる1971~1974年にかけて、今度は「第二次ベビーブーム」と呼ばれる現象が起きます。
「第一次ベビーブーム」で生まれた「団塊世代」が結婚や出産をするような年齢を迎えたためです。
この「第二次ベビーブーム」で生まれた人たちは「団塊ジュニア世代」と呼ばれ、1973年には年間出生数が200万人を超えています。
■「第三次ベビーブーム」が起きなかった理由
この流れでいくと、またその約25年後、つまり1990~2000年の間ぐらいに「第三次ベビーブーム」と呼ばれる現象が起きてもおかしくなさそうですよね?
しかし実際には、「第三次ベビーブーム」が起きることはありませんでした。
なぜ「第三次ベビーブーム」は起きなかったのでしょうか?
それが起きるはずだった1990年代という時代を考えれば、真っ先に思い浮かぶのは「バブルの崩壊」ではないでしょうか。
ここで、「バブル崩壊」について簡単におさらいしておきましょう。
「バブル崩壊」というと、「それまでは上がり続けていた土地の価格や株価が大暴落して、好景気が一転して不景気になったこと」と認識している人が僕の世代には多いように思います。
しかし、そもそもなぜ土地や株価が上がり続けていたのでしょうか?
そのきっかけとなった出来事から説明したほうが、より全体像をつかみやすいように思います。
アメリカは当時、深刻なドル高に悩まされていました。あまりにもドルが高すぎると、輸出品が売れなくなるからです。
例えば1ドル=100円が1ドル=200円というドル高になると、円を持っている人からすれば、100円で買えていたものが、200円出さないと買えなくなってしまうからです。

アメリカはこの状況を改善するため1985年、ニューヨークのプラザ・ホテルに先進5カ国の財務相・中央銀行総裁が集まり、ドル高改善を目的とした「プラザ合意」と呼ばれる歴史的な合意がなされました(プラザ・ホテルで行なわれたことからその名前がつきました)。
これをきっかけに、一気に円高が進み、今度は反対に日本の輸出企業が大打撃を受けます。
■金利が低く、お金が社会にあふれていた
この不況を打開するため、日本銀行(日銀)は金融緩和策として、金利を大幅に引き下げ、企業がお金を借りやすい状況をつくりました。
金利が下がり、お金を借りやすくなったことで、企業は借りたお金で海外に工場を建て、安い製品をつくるなどして、経営を立て直していきます。
これが功を奏して好景気が訪れましたが、金利は下がったままで、いくらでもお金を借りやすい状態が続きました。
そうやってあふれていくお金を使って、企業は本業に投資するのではなく、土地や株を買いあさって転売し、利益を得るということが相次ぎました。その利益によって、従業員の給料も上がっていきました。
お金が社会にあふれ、買いたいという人が多くいたため、土地の価格も株価もどんどん上がっていきました。
しかし、土地の価格が急激に上がるということは、様々な社会問題を引き起こすことになります。
不動産業者がまとまった土地を手に入れようと、半ば強引な「地上げ」と呼ばれることを行なったり、土地の価格とともに上がっていく固定資産税や相続税を払うことができず、住んでいる場所を出ていかざるを得ない人も相次ぎました。
このような状況を受け、日銀は金融緩和から一転、引き締め政策に出て、1990年には、6パーセントという水準にまで金利を引き上げました。
■バブル崩壊からの失われた30年
また政府も、土地の売買を目的とした融資を規制したり、土地保有に課税するなどして、急激な引き締め政策を行なったのです。

日銀や政府が目指したのは、「土地の価格が適正に落ち着くこと」だったとされていますが、落ち着くどころか、今度は売りたい人ばかりになり、一転して大暴落する結果を招きました。これが「バブル崩壊」と呼ばれるものです。
銀行は貸し付けたお金の回収が困難になり、「不良債権」と呼ばれるものをたくさん抱えるようになりました。その結果、新たにお金を貸すのに慎重になり、お金を借りられないことによって倒産する企業が相次ぎました。
消費は低迷し、買いたい人が減ることで物価も下落していき、それによって企業の収益も減り、給料を下げたり解雇したりせざるを得なくなり、それによってまた消費が低迷する――。
この「デフレスパイラル」と呼ばれる状況から、日本は抜け出せなくなり、「失われた10年」が「失われた20年」となり、それがまた「失われた30年」に延びました。
「バブル崩壊」というと遠い昔のことのようですが、今日の日本に蔓延(はびこ)る生活苦とじつは密接に関わっているのです。
■「恋愛結婚」よりも「見合い結婚」の時代
さて、「バブル崩壊」についての説明が長くなりましたが、ここまで読むと、「第三次ベビーブーム」が起きなかった原因は、「バブル崩壊」から来た生活苦だと思われた方も多いかも知れません。
それほどインパクトの大きい出来事ですし、実際にそれが原因である部分も少なくないと思います。
しかし、他にも指摘されている要素があるのです。
上のグラフは、男女共同参画局が発表している、結婚の「出会いのきっかけ」です(図表1)。
「第二次ベビーブーム」が起こったあたりまでは、「恋愛結婚」よりも「見合い結婚」のほうが多かったのです(そういえば、僕の両親も「見合い結婚」でした)。

「恋愛結婚」だろうが「見合い結婚」だろうが、最終的に本人が選ぶのだから大差ないと思われがちです。
しかし、「見合い結婚」の場合は、親族や近しい間柄、職場の人間関係からの紹介がきっかけで、断るハードルがより高くなったり、周囲の後押し(?)がより激しかったりすることもしばしばだったようです(僕の母のケースもそうでした〈笑〉)。
■少子高齢化の原因は「スペック婚」か
一方で「恋愛結婚」の場合は、(日本は文化的に両親の介入が比較的大きいとは言え)本人たちの自由である場合がほとんど。
そうなると、いわゆる「スペック婚」ではないですが、より条件の良い相手を探し続けるあまり、結婚が遠のく、というケースもあるようです(それが良いか悪いかはまた別の話で、個人の価値観に委ねられるべきだとは思います)。
日本もさることながら、韓国などではこの「スペック婚」と呼ばれる傾向がより強まっており、日本よりもさらに出生率が低くなっていることが指摘されています。

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谷口 たかひさ(たにぐち・たかひさ)

環境活動家

1988年大阪生まれ。10代の時に起業し、イギリスへ留学。卒業後、アフリカのギニアで学校設立に携わり、メガバンク/M&A/メディアのコンサルタント、グローバルIT企業の取締役を経験した後、社会課題解決を志してドイツへ移住し、起業。2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに、気候危機に関する講演を開始。その中で、最大の脅威は「他の誰かが何とかするだろう」という思い込みであることを感じ、自己肯定感も講演内容に加える。現在も講演を続けており、累計で22カ国、2400回余に。趣味は旅と勉強で、訪れた国は100カ国。
保有資格は国際資格や国家資格を含め30種以上。著書に『シン・スタンダード』(サンマーク出版)、『自分に嫌われない生き方』(KADOKAWA)。

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(環境活動家 谷口 たかひさ)
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