
[総理大臣杯1回戦日本大(関東1部)1-0富士大(東北1部)、3日、宮城・七ヶ浜サッカースタジアム]
1回戦が行われ、日本大が2年前の大会王者富士大を撃破して2回戦へ駒を進めた。
この日後半20分から投入されたJ1東京ヴェルディ内定FW平尾勇人(3年、四日市中央工高)は、長所の鋭い動き出しからチャンスを創出してチームの勝利に貢献した。
プロの舞台で磨く長所
相手の堅守をすり抜けるようにして攻撃のアクセントとなった。
富士大はコンパクトな陣形でブロックを固めてスペースを消しにかかるも、平尾はわずかな隙を見逃さないように出足の早いオフザボールの動きから急所を突いた。
タイトなブロックからチャンスを演出した平尾(左)「ヴェルディでもシャドーで(スペースの)間で受ける練習をしていたので、間についてきたら背後を取る。少ないスペースでもポケットは取れるので、しっかり狙って、何度かチャンスを作れた感じですね」と振り返った。
ただ「プロに入って走る回数は通用しましたけど、質の部分がなかなか通用しなかった」と適応に苦しむシーンもあったが、指導を受けて背後を取る動きの質が向上していった。
先月1日に東京Vから2027年加入内定と特別指定選手の承認を発表されてから、チームの戦力として存在感を見せている。先月9日に開催されたJ1第25節横浜F・マリノス戦でプロデビューを飾り、次節京都サンガ戦にも出場した。
「プロの舞台は歓声がすごくて、何万人も集まる舞台でサッカーをしたことがなかったので、そういう周りの環境はすごいと感じました。中に入ってみて、覇気というか、人生を懸けて戦っている周りの感じがすごく伝わりました。自分も入って、命をかけてやろうと考えました」と、プロでの戦いを経て覚悟が決まった。
東京Vで一皮むけた男は、富士大の張り付くようなプレッシャーを物ともしなかった。
落ち着き払った振る舞いで相手の虚を突き、包囲網をすり抜けるようにして突破。
「(プロを)経験したから、ここでは余裕を持ってプレーできる」と言うように、大学サッカーで他を寄せ付けない域へと成長した。

プレースタイルは四日市中央工高のレジェンドであるスペイン1部マジョルカの日本代表FW浅野拓磨を彷彿とさせる。
「手本にしている部分もあります。圧倒的なスピードがあるわけじゃないので、タイミングと質や相手との駆け引きしながら、プレーしていく必要があると考えています」と偉大な先輩の背中を見てさらなる進化を目指している。
2回戦は5日午前11時に宮城・セイホクパーク石巻フットボール場で大阪経済大と対戦する。
平尾は「優勝しかないですね。近年日大もだんだん強くなってきて、今大会は優勝を狙えるチームであると思う。そこで結果を出しつつ、ヴェルディの方々に見てもらって、Jリーグにつなげていきたいです」と、同大初の大会制覇に向けて突き進む。
(取材・文・撮影 宇田春一)