中国メディアの環球時報は9日、国際NPO「プロジェクト・シンジケート」のウェブサイトに掲載された、米国人教授による手記を紹介した。

手記の著者はノースウェスタン大学経済学教授であるナンシー・チェン氏で、このほど経営大学院(ビジネススクール)の学生らと共に中国を旅行したという。

チェン氏は「コロナ後に中国を訪れる米国人が少ないことに驚いた。上海のガイドも、米国人のツアーはまだ一つしか受け入れていないと言っていた」と説明。「これはニクソン大統領の1972年の訪中以来、米中関係が最低になったことを表している。米国の政治家や評論家が中国を経済的・地政学的脅威として描く一方で、中国メディアは米国の民主主義は誤りであり、米国は中国の成長と発展を不当に抑制していると主張している」とした。

また、「両国のニュースの多くはマクロ経済や地政学的な問題に集中し、一般人の生活や視点にはほとんど目が向けられない。これでは(相手に)共感を覚えるチャンスは少ない」とし、米国の2023年の世論調査では中国を好意的に見ている割合はわずか15%と、2018年の53%、1989年の72%から大きく減少したことを紹介。

新型コロナウイルスのパンデミックによりさまざまな分野で直接的な交流が減少したことに触れた上で、「中国では西側のジャーナリストの活動が制限されているという事実を加えれば、多くの部外者にとってこの国が異質で不透明に感じられる理由は簡単に理解できる」と述べた。

その上で、今回の旅行について「私たちは2週間の間、中国について多くを知ることができた。3都市を訪れ、たくさんの中国と米国の企業を見学した。繁盛しているところもあれば、生き残りをかけて戦っているところもあった」と紹介。「最終日に学生たちに最も印象に残ったことを尋ねると、さまざまな回答があった。中国の交通インフラと清潔さ、経済発展に感銘を受ける人もいた。

上海などの華やかさの影に明らかな貧困があると指摘する人、政府による監視が常に存在していることを指摘する人も多かった」とした。

一方で、「街の人々から数十億ドルのファミリービジネスの後継ぎに至るまで、あらゆる階層の中国人との出会いには、全員がうれしい驚きを抱いていた。彼らは中国人が温かく、謙虚ですらあることに気付いた」とも言及。「中国に警戒心や疑念を抱いていた学生も今回の経験に影響されたようだ。彼らはこの国についてもっと知りたがっている」と述べた。

また、「喜びと安心感はお互いのものだった。

ある学生がヨチヨチ歩きの子どもを抱き上げて“高い高い”をすると、子どももその親も笑った。1杯6元(約120円)の麺を売っていた女性は、中国語が分からない学生たちにも中国人客と同じ割引を適用してくれた。現地の人たちは学生らを『イメージ通りの米国人で、愉快で開放的だ』と評し、談笑して記念撮影をした。彼らは米国人を懐かしんでいた。何年にもわたる孤立と否定的な報道を経て、彼らは米国人が変わってしまったのではと心配していたのだ」と振り返った。

チェン氏は、「もちろんすべての中国人と米国人が良い関係を築けるわけではなく、今回の旅行で学生らが急に中国の大ファンになったということもない。

しかし、世界第2の人口大国の複雑さを理解するのに役立ったことは確かだ。学生らは中国の一般の人たちが、中国政府や米国のニュースの見出しが示すものと同じではないことを目の当たりにしたのだ」とし、「米中の意見の相違は一足飛びには解決しないが、顔を合わせてコミュニケーションすることは必要だ。中国人と米国人は共通の人間性を見失ってはならない。政府間の緊張が高まるほど、この点は重要になる」と結んだ。(翻訳・編集/北田)