「1億年前の化石を手にした時、時間が私の手の中で止まったかのようだった」。中国科学院古脊椎動物・古人類研究所の化石でいっぱいの研究室で、日本の国立科学博物館の古生物学者、木村由莉さんは初めて化石に触れた感動を思い出した。
北京での出会い
今年は学術交流を行うため、木村さんは約10年近くぶりに北京を訪れた。木村さんは出発前にこの旅に特別な目標を立てていた。それは中国の出版社を訪れることだ。
木村さんは「化石探偵」という本を指さし、「昨年、この本が中国で翻訳出版されると聞いて、とても驚いた」と話した。「化石探偵」は作家の高士与市氏が執筆し、漫画家の吉川豊氏が作画を担当した化石に関する科学読物で、木村さんはその再版時の学術顧問だった。
「化石探偵」は1988年に日本で初版が発行されたが、一部の内容が時代遅れのため絶版となっていた。その後、木村さんの手によって修正が加えられ、2022年に日本で復刊され、さらに今年は北京科学技術出版社によって中国で出版された。木村さんは、この本は古生物学者を志すきっかけの一つで、中国との縁の始まりでもあると語り、中国版の心遣いに出版社に直接感謝を伝えたいと考えた。

本から現実へ
木村さんは幼い頃、恐竜展で小さな化石を手に入れた。「1億年前の化石を手にした時、時間が私の手の中で止まったかのようだった」。小学校に上がると、図書館で「化石探偵」を見つけ、その魅力に引き込まれた。これらの体験が古生物学者になりたいという憧れを抱かせた。その後、古生物学者の富田幸光氏に手紙を書き、進路についてアドバイスを求めた。
「化石探偵」第2巻は米国の学者が中国のゴビ砂漠で恐竜の卵の化石を発見した物語が描かれている。これは木村さんが最も好きな物語の一つで、心に「ゴビ砂漠」のイメージが深く刻まれることになった。
木村さんは2004年に初めて内モンゴル自治区のゴビ砂漠を訪れた。この経験で古生物学者になる決意を固めた。「当時、中国の調査隊には女性研究者が多く、とても感動した」と話す。当時、日本では古生物学者といえば男性のイメージが強かったため、将来についてずっと不安を感じていたが、中国に来て「女性は研究者になれるだけでなく、優れた成果を上げることができる」と確信したことが大きな励みとなった。
その後、米国に留学し、2009年に中米協力プロジェクトを通じて再び内モンゴルのゴビ砂漠を訪れた。この時、木村さんは重要な学術的ブレークスルーを達成し、化石を通じてステップオナガネズミ属の新種を発見し、この種の地質学的歴史を延長しただけでなく、ステップオナガネズミの祖先が北アメリカからアジアに移動したという長年の仮説を否定した。
島と大陸の化石の対話
日中両国の古生物分野での交流と協力について、木村さんは、日本列島はかつてユーラシア大陸とつながっており、多くの種がここに移動し、その後島と大陸が分離したことで新しい変化があったと語った。
「私たちは化石を分析することで古生物の姿を推測するが、日本は地震が多く、火山活動が頻繁なため、完全な化石が残りにくい。そのため私たちは他の地域の類似した動物化石の研究、特に中国の動物化石を重視している。
木村さんは将来、頻繁に中国を訪れて交流を深めることを期待しており、機会があれば中国のもう一つの「化石の宝庫」である雲南省も訪れたいと考えている。(提供/人民網日本語版・編集/SC)