沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺への中国海警局の公船による領海侵入が相次ぐ現状を受け、海上保安庁が上空からの警備に大型無人航空機「シーガーディアン(MQ9B)」を投入し、本格運用を始めた、と共同通信などが報じた。尖閣諸島周辺を含む東シナ海では中国の無人機も頻繁に飛行している。
シーガーディアンは、米ジェネラル・アトミクス社製で全長11.7メートル、幅24メートル。名前は「海の守護神」を意味する。機内に操縦室や避難用設備はなく、陸上のコックピットから遠隔操作する。
操縦者が交代すれば24時間以上の飛行も可能で、昼夜を問わず監視活動ができる。機体には高性能カメラや夜間用の赤外線カメラが配備され、高い監視能力を備えるが、武器や弾薬は搭載していない。
海保は2022年10月、海上自衛隊八戸航空基地(青森県八戸市)を拠点にシーガーディアン1機の運用を始め、23年5月に3機体制に増強した。今年1月末には拠点を福岡県・北九州空港に移して稼働。10月以降は新たに2機増やして計5機体制となる。
共同通信によると、尖閣諸島周辺の領海は約4740平方キロと広大なため、最新鋭のレーダーや監視機器を装備したシーガーディアンを活用。従来の巡視船や有人航空機と合わせて監視力を高め、警備体制の拡充につなげる。
シーガーディアン投入は尖閣諸島への主権を主張する中国側の一方的な現状変更の試みを阻止する強い姿勢を示す狙いもある。シーガーディアンは4月以降に複数回、日本領空を含む尖閣周辺の上空を飛行。
一方、防衛省によると、昨年度に南西諸島周辺で飛行を確認し、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進(スクランブル)させた中国無人機の数が21年度比で約7倍の30機(推定含む)に上った。無人機が飛行する空域も沖縄本島の北東まで急速に拡大している。
防衛省が初めて無人機1機(国籍不明)の飛行を明らかにしたのは13年度。その後、中国無人機について17、18年度に1機ずつ公表し、21年度4機、22年度10機、23年度には9機の動きを発表した。
今年6月4日には中国軍の偵察・攻撃型無人機「TB-001」が鹿児島県・奄美大島沖を飛行したのを初めて確認した。無人機は東シナ海から飛来し、沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に出で洋上を奄美大島沖まで飛行した後、反転して同じルートを戻り、中国大陸へ向かった。空自の戦闘機が緊急発進したが、領空への侵入はなかったという。(編集/日向)