2019年4月20日にフロリダ州マイアミのハードロック・スタジアムでスタートするザ・ローリングストーンズ「ノー・フィルター・ツアー」最終レグは、2015年のZIP CODEツアー以来となるアメリカでのツアーだ。

開催地にはフロリダ州ジャクソンビルなど、ストーンズが何十年も訪れていない場所も含まれている。
チケットはアメリカ現地時間11月30日から一般発売された。今回のインタビューでは、ライブで演奏したい曲、チャーリー・ワッツ(Dr)の魅力、さらには2005年の『ア・ビガー・バン』以来のアルバムについてリチャーズに質問した。

ー最近はどんなことを?

最近は、そうだな、たいしたことはしてないな。1カ月くらい前にミック(・ジャガー/Vo)とスタジオに入って数日間一緒に演奏したよ。それ以外は、12月のどこかでセッションをするかもしれないけど、まあ、あんまりあてにしてないよ。

ーミックとのセッションはいかがでしたか?

最高だった。
プロデューサーのドン・ウォズも一緒にいくつかアイデアを練った。まだ調整段階って感じかな。いい時間だった。いろんなアイディアも出てきた。

ーそのときの音源をアルバムとしてリリースする予定は?

それはないな。さっきも言ったけど、まだ準備段階なんだ。
今はこのツアーがあるから、ひょっとしたら来年は……って感じになるかもしれないけど、どうだろう。でも、計画としては理にかなってるかもしれない。

ースタジオで生まれたサウンドについて教えていただけますか?

だめだ、表現できない。知ってるだろ! ギター、ドラム、ベースのサウンドだよ。

ー今後の予定は盛りだくさんですね。ツアーのセカンドレグ初日のダブリン公演を拝見しました。
初日の感想を教えてください。

あのライブはよく覚えてる。寒い夜だったけど、オーディエンスはすごくあたたかかった(笑)。今回のレグを行う理由も実はそこにあるんだ。前のツアーが最高に気持ちよかったから。それに、イギリスがメインだったからね。
ツアーが終わってもみんな「まだ続けよう!」って気持ちになった。久しぶりにアメリカでもライブをする気になったのには、こういう気持ちがあったからなんだ。それに、アメリカは俺たちのはじめての猟場だから。

ーどのようにしてツアーを決定したのですか? どこかの一室にメンバーが集合して話し合ったのか、それとも電話やメールなどで連絡を取り合ったのですか?

まあ、本当のところ、今回のアイデアそのものが前のツアーの終わりと同時に湧いてきたものなんだ。それも「もう一度やろう! でも、どこで?」みたいにすごく根本的な形で湧き上がったんだ。思いつきによる場合が多いかもしれない。
でも、ストーンズには見えない時計みたいなものがあって、バンドやメンバーにとっていいタイミングっていうのが何となく感じられるんだ。アメリカツアーがはじまるときは、9カ月近くライブから遠ざかっていることになるから、リハーサル期間はけっこう長くなると思う。それは必然だよ。9カ月後に集まってすべてがうまくいくなんて思ったらいけない。当然ながら、入念な準備ってのが必要だ。

ー何十年も一緒に演奏していますが、それでもリハーサルは必要ですか?

なんとなく聞きたいことの意味はわかるよ。
でも、いつも一緒に演奏しているわけではないから、集まるたびにそれぞれの機材もチェックしないといけないんだ。9カ月放置された名車を駐車場から引っ張り出してくるようなもんさ。一から調整し直さないといけない。それに、リハーサルは最高に楽しいよ。「ちょっと待って、あの曲もう1回やろう、とかあの曲もやってみよう」なんて言える最高の時間なんだ。そこから本番の形、いわゆるセットリストを作り上げていく。どの曲でスタートするかとかね。そうしたものはすべてリハーサルで形成されるんだ。

ー初めてアメリカを訪れた頃と今回の最大の違いは何でしょう?

しいて言うなら、当時の俺たちはステーションワゴンに乗ってたことかな。1960年代半ばのアメリカはまったくの別世界だった。本当のことを言うと、ここまで長生きするなんて思わなかった。俺はアメリカの成長をずっと見守ってきたんだ。ほとんどのアメリカ人よりもアメリカのことをよく知ってる。俺のほうが年寄りだからな!

ー今のアメリカについてどう思いますか?

今だって? そんなこと話したって仕方ないだろ。だから話さない。みんなわかってるんだから。神のご加護がありますように(笑)。

ースタジアムのどういうところが好きですか? アリーナでのライブとの違いは?

両方好きだよ。天気がよくて、風があまり強くないときはスタジアムで演奏するのは最高だ。なんだか、神の手の中にいるような気分になる。屋外の制御された環境で演奏するのも好きだ。でも、野外でのライブにはリスクもある。死ぬほど雨が降ることもある。

ーギターを演奏することで何を得ていますか? 演奏の原動力は?

生活がかかってるから(笑)。まあ、それが俺の仕事だからな。5万人のオーディエンスを寄こしてくれたら、そこが俺たちのホームになる。バンドのみんなもそうさ。ロニー(・ウッド/Gt)と俺はライブの前によく言うんだ「さあ、ステージで平和と静けさを味わおう」って。

ーさすがです。ブルースミュージックが芸術の形として次の世代に受け継がれていくと思いますか?

もちろん。新しいブルースプレイヤーもたくさんいると聞いてるよ。ブルースは絶好調だ。素晴らしいプレイヤーも何人かいる。名前は忘れたけど、いいバンドも知ってるよ。ブルースは音楽に欠かせない要素なんだ。それが失われることはない。

ーゲイリー・クラーク・ジュニアの新作も最高ですよ。

だろ? そうなんだ、クラーク・ジュニアは最高だ。

ー同じノー・フィルター・ツアーではありますが、またメンバー揃ってリハーサルを行うわけですね。これまでのレグとはまったく異なった内容になりそうですね。

曲順も変える。いろんなことを試してみるよ。ミックは決まった曲に対していくつもの演出を考えているから、いろいろ試す必要がある。来年の4月にはバンドと機材のコンディションを最高の状態に持っていく。

ー前のツアーではほぼ毎晩「ライク・ア・ローリング・ストーン」を演奏していましたが、その理由を教えてください。

最高の気分だったんだ。ミックも楽しんでいた。とくに最後のハープの部分でね。まあ、それで演奏が少し長引いてしまうんだけど、いい曲だ。ボブ・ディランには脱帽せずにはいられないね。名曲だよ。

ーヨーロッパでは珍しく「シーズ・ア・レインボー」を演奏しましたね。

なんだか不思議だよね。だってこの曲はオルゴールみたいだから。でも、いろんなことを試そうとしていた時代ならではの曲なんだ。それに、オルガニストのニッキー・ホプキンスが最高に美しい作品に仕上げてくれた。

ー「Sweet Virginia」と「Dead Flowers」も演奏しました。アメリカツアーではどの曲を演奏しますか?

前回のツアーから提案してるけど、なかなか実現できずにいるのがソロモン・バークと一緒にやった「Cry to Me」なんだ。これはぜひフルバージョンでやってみたい。まあ、どうなるかだな。

ーリックス・ツアーであなたとソロモンが「Everybody Needs Somebody to Love」を演奏している動画は圧巻です。またストーンズとしてシアターツアーを行う予定は?

わからない。一つひとつのツアーに集中したいから、先の計画は立てないんだ。でもぜひ実現したいね。シアターで演奏するのは大好きだから。シアターはまさに天国だよ。

ードラムは身体的にかなり消耗すると思うのですが、77歳のチャーリー・ワッツはどうやってこなしているのでしょう?

チャーリーはものすごく秘密主義なんだ(笑)。こんなことができるのは彼くらいだよ。でも、何か特別なことをしているわけではないと思う。チャーリーはチャーリーなのさ。それがあいつのすごいところなんだ。チャーリー・ワッツと一緒に演奏できて光栄だよ。

ー時には、ホテルでチャーリーと語りながら夜を過ごすこともありますか?

いいや。ツアー中のチャーリーはわりと一人でいることが多いんだ。それに、ライブの後は大抵へとへとだ。でもバーなんかにいるとひょっこり現れたりする。時には一緒にディナーもする。でも、ツアー中はどちらかと言うと仕事モードだね。

ーミックとはどうですか? 最近のツアーで何か楽しいことはありましたか?

あったよ。実際ツアーがはじまると、けっこう個人主義になるんだ。メンバーと一緒に過ごす夜もあれば、一人のときもある。ローリング・ストーンズとして一室をあてがわれて全員がそこで演奏するってわけじゃないけど。ツアーはとてもプロフェッショナルなイベントなんだ。

ー昨年は数多くの引退ツアーが開催されました。それについてどう思いますか? 最近、ロッド・スチュワートが3年かけて行われるエルトン・ジョンのさよならツアーは「不誠実で金儲けのにおいがする」と言っていました。

まあ、いろんな見方があるよな。言ってる本人がそう思うなら、そういうことさ。俺はまだそこまで頭では考えていないよ。答えが出るかどうかもわからない。もしかしたら、今回のツアーが最後になるかもしれない。

ーツアーに向けてフィジカル面ではどんな準備を?

朝ちゃんと起きることだ(笑)。