パトリック・ワイマンとのインタビューを始めてから35分。
ヨーロッパの歴史、特にローマ帝国の滅亡とその後の世界を専門とする歴史家のワイマンを訪ね、彼がマザー・ジョーンズ誌に寄稿した記事について話し合った。ワイマンは、ローマ帝国の滅亡によって結束を固くした社会と崩壊した社会について書いている。そしてもちろん、話題は最近の伝染病とパンデミックへと移った。ワイマンは1300年代中期にヨーロッパの人口を半減させたペストの大流行を引き合いに出し、黒死病流行前夜のヨーロッパがどのような状況だったかを解説してくれた。
長期に渡る景気拡大と人口増加が頭打ちになった時、賃金は下がり、農奴は苦しい生活を強いられていた。一部の富裕層が贅を尽くして貧富の差がますます広がり、長い間安定していた経済状況も雲行きが怪しくなってきた。そしてついにパンデミックが訪れる10年ほど前には、ビジネスを広げ過ぎた伝統ある大企業が次々と倒産に追い込まれ、経済危機を招いた。
彼の発言に、二人とも現在との共通点を見出すと同時に不気味さも感じた。しかし彼が笑い出すと、筆者も続いた。悲観的な状況だ。恐怖を感じるが、私たちにいったい何ができるのだろうか?
現在の状況に無力さを感じる。
幸いなことに、筆者よりずっと歴史に造詣が深いワイマンは異なる見方をしていた。現在が深刻な状況であると見る点では筆者と共通しているが、最終的には明るい未来が待っているとワイマンは見る。
ワイマンとは、私たちの明るい将来についての話のほか、『帝国の崩壊を生き抜いた私たち』と題した彼の記事、社会に影響を与えた歴史上のパンデミック、古代ローマ人だったら現代のコロナウイルスをどう乗り切るか(或いは乗り切れないか)などについて話し合った。
注:本インタビューは一部内容を編集しています。
ー筆者: 古代ローマ帝国に関するあなたの研究の中で繰り返し主張されているのはつまり、私たちが高校で学んだ歴史は間違っている、ということです。ローマ帝国が滅亡したのは異邦人による侵略が原因でないという説は、今でも驚きです。侵略を受けた時、ローマ帝国は既に衰退していたという話でした。
ワイマン: 政治的な正統性、対策を必要とされるパンデミック、或いは突然起きた外国との激しい戦争など、あらゆる危機が存在する。それらの危機が既に悪化しているのではないか、または恐らくもう回復するのは難しいのではないかという状況の下では、何でも起こり得る。根深い問題は危機的状況になって初めて表面化し、そして誰もが目に見て取れるほど劇的な終わりを迎えるのだ。
私たちは危機も崩壊も経験している。そして両者を同じように扱っている。人は物ごとをストーリー仕立てにする生き物だ。私たちはそうやって世界を見ている。物ごとをクライマックスのあるストーリーとして認識し、崩壊はクライマックスとして捉えるのだ。より分析力のある目を持ち、システムの崩壊につながるとても小さなひとつひとつの出来事の集まりを見極めるのは、とても難しい。とはいえ、危機につながるひとひとつの小さな出来事自体は問題の直接的な原因とはならないが、問題を助長させる要因となる。
ー現在のCOVID-19への対応には、崩壊、システムの機能停止、問題の助長が見られるでしょうか? 既に限界に来ているシステムの崩壊についてのあなたの指摘は、米国内のICUのベッド稼働率が常に90~98%だというレポートでも裏付けられています。
正に私の言わんとしていることだ。失業率や回復力よりも効率やシェアホルダーの利益を優先する社会では、そのような結果になる。私の考えでは、それが崩壊につながると思う。シェアホルダーの利益に応えるためICUの収容能力を繰り返し減らすなど、私に言わせればシステムの崩壊だ。公共の福祉は必ずしも優先しなくともよい、などと言っているように思える。
公衆衛生を維持するためにかなり無理をして個人消費を抑えねばならないような経済には、システム全体に不健全さが潜んでいるといえるだろう。政治経済のシステムのどこかに欠陥があるから、コロナウイルス・ショックに耐えられなかったり対応できなかったりするのだ。失業率が20~25%に上昇し、食に困る人が増え、病気になって多額の医療費を負担しなければならない人が増加するようなシステム全体の危機は、コロナウイルス以前の潜在的な問題が原因になっている。
ー「危機によって社会が崩壊するのでなく、危機が訪れた時には既に社会が崩壊していた事実が発覚するのだ」という論理が当てはまる、世界を変えた歴史上の出来事はありますか?
人口の40~60%が犠牲になった地域もある、1300年代中期のペスト流行が挙げられる。当事者にとっては大惨事のように思えただろう。しかしペスト流行に至るまでのヨーロッパの状況を見ると、既に進行していた多くの問題がパンデミックをきっかけに加速したことがわかるだろう。
1200年代の終わりから続く長期的な景気後退の末に、黒死病の流行が訪れたのだ。
そうして13世紀(1200年代)の終わり頃には、農耕に使用できる土地はほとんど残っていなかった。じめじめして起伏があり農業に適さないような土地ですら、耕作に使われる状態だった。ただ、賃金が極端に低い人々を農業に使えた。多くの人々は自分の土地を持たず、ギリギリの生活を送っていた。土地を使わせてもらう代わりに領主に対して無償でサービスを提供しなければならないという交換条件が、当時盛んだった農奴制度を支えていたのだ。
気候的な要因もある。経済の全盛が長く続いた背景には、穏やかで暖かい天候があったのだ。種まきと収穫の時期さえわかればよい農夫にとって、天気良いかどうかというよりも、先の天気がどうなるか予測することの方が重要だ。しかし1200年代の終わりから1300年代初頭にかけて、天候が非常に悪くなった。
ペストが大流行する以前の1340年代中期、ヨーロッパ全土を支えていた歴史上「スーパーカンパニー」と呼ばれる多くの超巨大企業が倒産した。経営が行き詰まった原因はさまざまだが、各企業がビジネスを広げ過ぎたのと、経済全体の不安定さが大きな原因となった。
お金に余裕がない。人口が多い。賃金が低い。地価が高い。これらは全て、これからやってくる最悪の低迷期の予兆と言える。
ーどんなに酷い状況のことを仰っている自覚していますよね?
(ワイマンは長い沈黙の後で笑いながら答えた)
そう。
しかし深刻な犠牲も伴う。百姓の生活を改善するために、「サノスの指鳴らし(訳注:映画『アベンジャーズ』などに登場するキャラクター)」で人口の半分を強制的に消滅させたりしてはいけない。
ー正直に言って、何だか憂鬱な決定論のようです。1330年生まれの百姓は貧乏に育ち、そして恐らくペストに感染して25歳になる前に死んでしまった。一方で1360年に生まれればもっと明るい未来が待っている。これも全て運命だと言えるでしょうか。自分の孫にかつての豊かな暮らしについて語っても、不思議そうな顔をされるだけではないかと心配になりませんか?
ローマ帝国の崩壊は、決して全ての人の生活を悪化させた訳ではなかった。ここが重要なポイントだと思う。巨大国家の終焉が必ずしも人生の悪化にはつながらない。ローマ帝国には深刻な貧富の差があった。ローマ帝国の制度下では、多くの集団が酷い待遇を受けていた。ほとんどの人にとって、人生の価値観を決める基準となる前提条件は存在しない。だからローマ帝国崩壊後は多くの人々の生活水準が高まり、公衆衛生も改善されただろう。さらに、世界中で食生活も改善されたと思う。
とはいえ通常は、政治システムが崩壊すると生活も悪化するものだ。大国は、より良い生活のため、或いはさまざまな面で有益な政策を実現する。ローマ帝国崩壊後の世界はより荒れていたことを示す証拠もいくつかある。はっきりしているのは、人口が減少する中、地方で暮らす人が増えたということだ。都会の生活から離れ、遠距離同士のつながりが希薄になった。私の博士論文のテーマは、ローマ帝国崩壊後の遠距離コミュニケーションの減少だった。
孫の世代に関しては、気候変動についてかなり心配している。気温が高すぎて夏は外出できず、農作物も育たないのではないだろうか。ローマ帝国崩壊後も似たような状況にあったと推測できる。もしも気候状況が当時のまま続いていたら、今の世界はもっと荒れて混乱していただろう。必ずしも酷い状況になっているとは限らないが、孫の世代に対しては、彼らの想像もつかない全く異なる世界の話を聞かせている可能性もある。
ーしかしあなたは、社会の行く末は予め決められないと主張しています。崩れた社会システムの回復に成功した歴史上のリーダーたちを挙げてください。
ローマ時代に限って言えば、少なくとも2人は挙げられる。共和政ローマの末期(ジュリアス・シーザーの死後)に起きたアウグストゥスとマルクス・アントニウスとの争いが決着した時、帝国は無傷のままだった。
さらに興味深いのは、ローマ帝国全体のシステムを混乱させた3世紀の危機だ。この時は気候変動による大干ばつが起きている。干ばつ、飢饉、伝染病が続いた(当時の資料が乏しいため、どれほど酷い状況だったかは知る由もない)。気候変動に伴う災害に加え、経済のメルトダウンや異邦人による侵略が重なった。ローマ帝国は、3世紀に脆くも崩れ去っていたかもしれないのだ。
ところが、混乱した社会システムをどうにか収拾できた皇帝がいる。まずはアウレリアヌスで、それからディオクレティアヌス。彼らは古代ローマのシステムを根本から立て直し、全く違ったシステムを構築した。ローマ帝国の後期は、それまでとは全く異なる様相を呈していた。軍備が強化され、官僚政治による中央集権化が進んだ。帝国には、全体が結束して危機を乗り切るために、大幅なシステム変更が必要だったのだ。それでもその後、数世紀間しか存続できなかった。
ーアウレリアヌスや古代ローマ帝国から、今の私たちは何を学べるでしょうか?
アウレリアヌスから学べる教訓は、混乱を収拾するのに強力な軍人皇帝は必要ないということ。ローマ帝国が上手く危機を乗り切ったのは素晴らしいと考えるのであれば、アウレリアヌスの時代に必要とされたのは時代に合ったスキルセットを持つリーダーだった、というのが教訓になる。ローマ帝国が必要としたのは、冷酷で軍事的な才能が豊かなリーダーだった。現在の私たちが古代ローマ帝国を再現する必要は全くない。ローマ帝国はいろいろな意味で、人々の苦痛と奴隷制の上に成り立つ酷い圧政による社会だった。
しかし現在の私たちが直面する問題を解決するためには、適切なスキルセットを持った人間が必要だ。まず、今まさに起きている大きな問題の対策に国や州のリソースを注ぎ込むため、政治システムの舵取りができるリーダーが必要だ。そして病院に必要な備品が不足していることを認識し、備品を生産・供給する方法を保証できる人間が必要だ。またコロナウイルスの検査が必要になった時は、検査キットの生産・供給・利用を実現できる権限を持った人間が必要とされる。現在の状況では、このような人々が必要とされている。
私たちは、誰が適切なスキルセットを持っているか知っている。特に国や州のレベルになるとさらに明らかだ。スキルセットを持ったリーダーは、多くの命を救うために努力すべきだと思う。今は危機的状況にあると言っても過言でない。対照的なのはオクラホマ州知事だ。自分と家族が外食する様子をツイートした同知事は、彼のツイートを見て外出しようと決めた人々を感染させ、文字通り殺したかもしれない。フロリダ州知事は、春休みで賑わうビーチをなかなか閉鎖しようとしなかった。どんなに酷い対応か表現のしようがない。大人数の集まりを避けることは、ウイルスの感染を防止するのに有効な手段であることは明らかだ。それに反するような行為は、悪事だと言える。
ーあなたがマザー・ジョーンズ誌に寄稿した記事の、最後の部分が気にかかっています。あなたは「未来の歴史家たちは今回の出来事を、本当の転換期が訪れる前に我々を苦しめた問題を解決するチャンスであり、私たちは危機を乗り越えた、と振り返るだろう。今の私たちは、あらゆる場所にさまざまな深さの傷をたくさん負っている。しかし傷口をふさぐには今からでも遅くはないだろう」と書いています。私たちはどうしたらよいのでしょうか?
今回のような状況は、何が有効で何が機能しないかを見極めるチャンスだ。変革のチャンスでもある。現在も危機的状況は続いている。しかし最終的に収拾した時、事態の全体像が把握でき、本当に変化の必要なものが見えてくるだろう。そして今回の危機を、将来へ向けたより回復力の強いシステムを構築するチャンスとしたいものだ。
これが最後ではない。これまで長い間このような危機に見舞われなかったのは、運が良かっただけだ。また危機は訪れるだろう。

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