世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中、いま音楽家はどのように生活をし、何を考え、行動を起こしているのか。これまで佐野元春SKY-HI野田洋次郎Kan Sanoらに取材してきた本企画にて、今回は、ライブハウスの支援プロジェクト「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」の発起人であるtoeの山㟢廣和と、レーベル「カクバリズム」代表・角張渉に話を聞いた。


toeが発起人となってスタートしたライブハウスの支援プロジェクト「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」。フォルダへのアクセス権をダウンロード購入することにより、自分が応援したいライブハウスと金額を選んで支援することができる代わりに、プロジェクトに賛同した70組以上のミュージシャンが提供した楽曲を期間内(2020年6月末日まで)であれば自由に聴くことができる。4月19日のスタート時は約120店舗だったライブハウスの登録は現在240店舗を超え、支援者数はのべ38000件に至っている。

緊急事態宣言が解かれるなど、状況は刻一刻と変化しているが、ライブハウスが元通り稼働できるようになるまでにはまだまだ時間がかかると言わざるを得ない状況であり、各ライブハウスの危機感はますます強まっている。そんな中で率先して声を上げ、「UNITE」を掲げたのが、メンバーそれぞれバンド以外の仕事を持つことで、インディペンデントな活動を続けてきたtoeだったというのは、非常に考えさせられるものがある。

今回はtoeの山㟢廣和と、山㟢がプロジェクトを立ち上げるにあたって最初に相談した中の一人だというカクバリズム代表の角張渉を迎え、対談を行った。
経営者としての視点を交えつつ(山㟢はインテリアデザイン会社の代表)、カクバリズム所属のceroがいち早く行った有料のライブ配信の可能性も含め、ライブハウスの現状について語り合ってもらった。

※このインタビューは2020年5月10日(日)に収録しました。

toe・山㟢廣和とカクバリズム・角張渉に聞く、ライブと新型コロナと行政の戦い


―緊急事態宣言の発令以降、どのように過ごされていますか?

山㟢:普段の生活で言うと、僕の仕事は設計で、内装の図面を書いたりしてるんですけど、会社に毎日行くことがなくなって、家で仕事をしてることが多いですね。バンドに関しては、もともと年始はあんまりライブを入れてなかったんですけど、3月と4月に入ってたライブは中止になって、その一方で、ライブハウス支援の動きをみんなと一緒にやってました。僕らは店舗を構えて営業しているわけじゃないし、コロナ前からの案件を引き続きやってる感じなので、今すぐお金がなくてヤバいってことはないけど、何となくドヨーンとした数カ月が続いてる感じですね。

角張:山さん、髪切りました?

山㟢:切りましたよ(笑)。


―ちょっと前にインスタで拝見してました(笑)。

山㟢:床屋に行くのもアレなんで、家で坊主にしちゃおうかなって。

この投稿をInstagramで見る色々モヤる日々もある。ので、ゆるふわ愛されヘアーに。Vulgar Display of Power !!!! YAMAZAKI HIROKAZU(@yamayamawo)がシェアした投稿 - 2020年 4月月30日午前2時37分PDT
―角張さんはどんな風にお過ごしですか?

角張:うちは所属バンドが10個くらいあって、ライブが月何十本あり、それに付随して物販だなんだっていうのがあって、常に動いて稼いでる会社なんですけど……2月24日にceroが名古屋のダイヤモンドホールでライブしたのが最後の現場かな? 最初は「5月か6月くらいになればまたライブできるっしょ」って楽観的に思ってたんですけど、情報が逐一入るに連れ、日本政府のやり方も含めてですけど、「これは長くなるな」って、徐々に会社のあり方を考えるようになりました。損失を計算するとすごい額になっちゃうので、最初は計算しないようにしてたんですけど(笑)、流石に計算しないとまずいんで、銀行の融資や国の金融公庫のことを調べたりもしてます。
これまでやってた仕事の分が2カ月後払いで4月や5月に入ってくるんで、僕らも今すぐどうなるってわけじゃないんだけど、この先稼いでないっていうのが事実としてあるんで、「さて、どうしよう?」っていう日々を過ごしてる感じですね。

「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」が立ち上がるまで

―そんな中で、toeが発起人を務めるライブハウス支援のプロジェクト「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」が4月にスタートしたわけですが、もともと山㟢さんが支援を思い立って、最初に相談したのが角張さんだったそうですね?

角張:そうだったんですか? 嬉しい。

山㟢:角張くんと、あと何人かです。始めるにあたって、声をかけたバンドに全然賛同してもらえなかったらやる意味がないので、まずは信用している人たちに「こういうのやろうと思うんだけど、どうかな?」って一回話を聞きました。カクバリズムには好きなバンドが多いので、確実に頼むことになると思ったし、他の案件でも、音楽に関することは一回角張くんに相談するのが通例というか。僕らは一バンドマンとして、自分らでしかやってないけど、角張くんはインディシーンをちゃんと理解した上で、オーバーグラウンドのことも考えながら、何年も自分のレーベルを維持しているわけで、それは確かなアンテナを持ってるってことだと思うから。


角張:「最初に相談してくれてたんだ」っていうのを今知ったので、ありがたいですね。嬉しいです! あれで「最初だったんだ」って思ったっていうのは、山さんから話が来た時点で、「こういうシステムでやりたいんだけど」っていうのがすでにちゃんとした絵になってたからで。友達としゃべってて、「こういうのやりたいね」って言って、具現化しないまま終わることって多いけど、すでに具現化の手前の手前くらいまで来てるプロットで示してくれたので、すぐに「いいじゃないですか!」って感じ。
toe・山㟢廣和とカクバリズム・角張渉に聞く、ライブと新型コロナと行政の戦い

toe・山㟢廣和とカクバリズム・角張渉に聞く、ライブと新型コロナと行政の戦い

「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」参加バンド・ミュージシャン

角張:そもそも「ライブハウスを助けなきゃ」みたいな動きって、新代田FEVERの西村さんが、YouTubeでSuper Chatをする条件をクリアするために呼びかけたことがあったじゃないですか?

―Super Chatを利用するには「チャンネル登録者数1000人以上、過去12カ月の再生時間4000時間以上」という条件があって、西村さんが呼びかけた結果、すぐに条件をクリアしましたよね。

角張:YouTube側があの条件を今はもっと下げてくれりゃいいのにって思うんですけど、とにかくあそこで最初の一波があったわけですよね。ただ、どうしても人気商売の側面があるから、ライブハウスごとの偏りが出てしまう。
そこで、使う人にとって使い勝手のいいフラットなシステムを作るっていうのは、僕じゃ絶対考えられなかったなって。うちでも仕事がなくなっちゃったスタッフさんに寄付する方法を考えたんですけど、Tシャツを売るとか、そういう直接的なアイデアしか出なくて。そういう中で声をかけてもらって、すごく助かりました。

―ECサイトを使って、寄付したいライブハウスを選べるようにしたのは、どのような考えが背景にあったのでしょうか?

山㟢:それまではクラウドファンディングとか、それこそTシャツを売ったりとか、各ライブハウスごとの窓口しかなくて、それはそれで必要だと思うけど、ライブハウスっていう業種に対して、もっと大きな形でお金を集めて、支援できないかと思ったんです。ライブハウスって固定費があるけど、少なくとも3月の時点で、国の支援はどうやら時間がかかりそうだった。僕も会社をやってるからわかるんですけど、大変なときって気持ちで応援もらうのもありがたいんですけど、何よりもホントお金が必要なんですよ。
お金がないとどうにもならないから。じゃあ、横の繋がりがない業種に、僕らのバイアスができるだけかからない形で、早くお金を分配するにはどうしたらいいかっていうのを、今回サイトを作ってくれたCIDER inc.の阿部ちゃんに相談したら、STORESってECサイトを上手く使えば、まとめサイトみたいな形でできるんじゃないかってことで、今の形になりました。

ライブハウスも、団体・組合を作って行政と動くことが必要だったのだろうか?

―「横の繋がりがない」というお話があったように、ライブハウスには団体や組合がないから、1か所にお金を集めて、等分配することは難しかったわけですよね。この先のことを考えたときに、団体や組合の必要性についてはどうお考えですか?

山㟢:そういったものがなきゃいけないとは思わないし、実際こういうことがなかったら必要ないとも思うし。音楽に携わる人って、そもそもそういう群れ化というか、団体に所属するのは嫌な人が多いと思うんですよ。

角張:我々は特にそうですね(笑)。

山㟢:今回は西村くんが全国のライブハウスとやりとりをして、今登録が240を超えてるので、西村くん自体が組合みたいな状態になってますけど(笑)。だから、「何県にこういうライブハウスがあって、こういう窓口があって」っていうのがわかるインフラがあれば、それくらいのことでいいのかもしれない。普段から会費を集めて、みんなで集まって何かやりましょうってことはなくていいと思うけど……まあ、常に行政と一緒に動いて、ライブハウスっていう業種が保護されなきゃいけないって思わせる政治運動みたいなことをすれば、お肉券とかお魚券の話じゃないけど、結局そういうところが得するわけですよね。そういう恩恵を受けたいのであれば、団体みたいにならなきゃいけないと思うけど、でもそれはそれっていうか。そこと同じ土俵に上がっちゃうのもどうかと思うし、とりあえず今回に関しては、実際問題として支援するには不便だったってだけかな。

角張:僕は山さんがtoeの前のバンドをやってるとき、まだ10代の頃から渋谷のGIG-ANTICとか新宿のANTIKNOCKとかでスタジオライブを観てますけど、我々みたいなインディーズ音楽の出身って、誰かのオムニバスに参加するにしても、ちゃんと納得しないとゴーを出さないんですよ。toeはレーベルも自分たちでやって、どこにも属さずやってきたわけですけど、僕らも40歳を超えて、「ライブハウスに金がない」っていう急務が、自分たちのこだわりよりも上に来たんですよね。今回のタイミングは。そこで山さんが旗を振ってくれたっていうのは、ホントこだわりうんぬん言ってる場合じゃねえっていう、『あまちゃん』で言う「ダセエとか言ってんじゃねえ」みたいな、あの台詞くらいの感じで(笑)。

―わかります。今回の状況に対していち早く動いたのがtoeだったっていうのは、少なくとも長年インディシーンを見てきた人たちにとって、何かしら思うところがあっただろうなって。

角張:「こういうやり方があるんだ」って、教えてもらったんですよね。思い出野郎Aチームも自分たちでクラウドファンディングを始めたんですけど、直接ライブハウスとやりとりして話を聞いてみると、思ってた以上に大変な状況だっていうのがわかってきて、でもそれを知ったことで、バンドの中での意見も活性化していって。そういうきっかけをもらったし、今回いろんな事情で参加できなかったバンドも、認識が上がったと思うんですよね。震災のときもそうでしたけど、何となく終わって、何となく慣れてしまう。僕もそういうことはいっぱいあったし、別にミュージシャン全員に「やれ!」って言いたいわけじゃないけど……血流の弁ができるっていうか(笑)。何か引っかかりができて、それによって、次のアクションもしやすくなると思うし、そうなっていったらなって。期待も込めて。

思い出野郎Aチームは、自主企画「ソウルピクニック」を中心にライブイベント、パーティーを開催させていただいた場所と今年出演予定で延期になってしまったフェス、イベントへの支援を目的としたプロジェクト「ソウルピクニック・ファンディング」をスタートします!https://t.co/DDqgODUc9R— 思い出野郎Aチーム (@O__Y__A__T) April 18, 2020

山㟢:まあ、僕らはそもそもお礼を言われる立場でもないというか、バンドにお願いして、付き合わせちゃった部分もあると思っていて、そこに関してはとにかくありがたいなって。さっきも言ったように、今の僕らは来月くらいまで食ってく目途があって、もっと困窮してる人が目の前にいたときに、助けられる余力があるから協力しているだけというか。しかも、何となく「支援する側・される側」って見えるけど、僕はこれをやって何か損してるわけでもないし、「支援」っていう行動をしてること自体が精神的な安定剤になるというか、自分が何かをやることで助けられてる部分もあるので。ライブハウスの話をするときによく言うんだけど、演者とお客さんって分かれてなくて、一緒になってライブをやってる感覚だから、今回の支援も「する側・される側」じゃなくて、全部一緒くたなんですよね。

国の補償に対する、ミュージシャン&CEOとしての見解

―ライブハウス支援の広がりについては、どのように感じていますか?

山㟢:窓口はいっぱいあっていいと思っていて。ライブハウスは最初に行政から名前が出ちゃったのがすごく大きかったわけだけど、逆に言えば、困窮してることが一般の人にもわかりやすく伝わったわけですよね。でも、僕らの周りで言うと、イベンターさんとか、PAさん、ローディーさん、ライブに関わる人たちが一斉に仕事がなくなって、しかもそういう仕事はフリーの人が多いので、すごく打撃を受けてると思うんです。だから、ライブハウスだけじゃなくて、それに付随する職業の人も同じくらい大変で、でも一本化しにくいから、支援も難しい。それは音楽に限らず、演劇にしても何にしても、人前で何かをやる表現を収入にしてる人たちは一律何もできない状態なので、国や自治体が現状をある程度把握して、補償してくれるのが一番だとは思うんですけどね。

―国の補償に対しては、何か思うことがありますか?

角張:僕は実際に会社で融資の相談をしていて、やりとりは面倒ですし、業績を見られちゃうとかはありますけど、でも融資って金を貸すことなんで、借りることに対してポジティブな会社にとってはすごくいい条件だと思います。金利がなかったり、あっても相当低く普通より安く借りられるわけだから、借りれるなら借りた方が今後を考えると会社を経営してる身としては思いますね。ただ、フリーの人たちにとってはわかりづらいし、実際融資なり助成金なりが認可されるのは遅いって銀行の人も言ってたので、溢れ落ちてる部分がいっぱいあると思います。

山㟢:僕が体感的に思うのは、今は政府がダメ過ぎちゃって、実際に対応してる区役所の人とか保健所の人は「こうしてあげたい」って気持ちをみんな持ってるけど、それが上からの指示でスムーズにできないっていうか。俺も会社のことで区役所とか信金に行って話をすると、やっぱりこういう状況だから、何でもないときに金借りに行くよりも、親身になってくれる人が多いんです。でも、政府と現場で働いてる人の感覚がまったく合ってない。そこにすごく現状が表れてるなって。インターネットの情報なのでわからないですけど、市井の人の生活を第一に考えて、素早く動いてる国は上手く切り抜けられてると思うんですよね。日本はちょっと遅れて流行ったから、成功例を見てるのに、何でそれを取り入れて、素早く動けないのかなっていうのは思いますね。

―「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」に関しては、「6月末まで支援を続ける(6月末まで音源が聴ける)」という形で動き出したわけですが、現状を踏まえて、今後に関してはどうお考えですか?

山㟢:実際に動き始めてからも、いろんなバンドの方から「参加したい」って言ってもらったんですけど、今回は最初に期限を決めて、そこに向けてみなさんに時間のない中いろいろな障害をクリアして動いてもらったので、後から言ってくれたのは追加してないんです。すごくありがたいんですけどね。ただ、全国のライブハウスの窓口に辿り着けるインフラができたので、第2弾なのか……要は商品だけ変えて、同じ仕組みを使えば、引き続き何かできるんじゃないかっていう気はしてます。

ライブの配信は、現場の代替案でしかない

―ライブハウス支援の一方で、現状できることのひとつとして「ライブ配信」があると思います。ceroは3月にいち早く有料でのライブ配信を実施して、その後の広がりを生んだと言ってもいいかと思うのですが、実際にやってみて感じた可能性、あるいは課題について、どんな風にお考えですか?

角張:前の週にNUMBER GIRLとかBAD HOPとかaikoさんが無料で配信ライブをやっていて、俺らもただ延期は悔しいからライブやりたいってなったんですけど、無料配信でやるにしても、機材代とか場所代で80万くらいかかっちゃうから、「これからお金が明らかに減ってくだけなのに、そんなに払うの?」っていうのは普通にあって(笑)。もともとSAKEROCKで解散ライブをYouTubeで配信したりしてたから実際の配信制作経費もわかるし、何となく見てくれる人の数も予想がついていたのはありました。だったら、ちょうどスタッフの仲原君がZAIKOとやりとりしてたこともあって、今回は有料にして、1000円のチケットを例えば500人が買ってくれたら50万弱売り上げで、30万赤字ならまだいいでしょって感覚だったんです。ところが6000枚くらい売れて、結構なお金になってくれて。

この投稿をInstagramで見る"Contemporary http Cruise”ご覧頂いた皆様、VIDEOTAPEMUSIC、ご協力頂いた関係者の皆様ありがとうございました!初の試みということで手探りな部分もありましたが実現できてよかったです!また何か面白い試みができればと思いますので引き続きよろしくお願いします!#cero #cero_chc(写真 廣田達也) cero.official(@cero.official)がシェアした投稿 - 2020年 3月月13日午前7時43分PDT
―そこは予想外の反応だったわけですね。

角張:結局今回の支援にしてもそうなんですけど、ライブハウスの月々の売り上げには届かなくても、1万でも2万でも入ってきてるっていう事実が、ちょっとやる気にさせてくれるんですよね。うちらは3月のあの日に数百万稼いだっていう事実があるから、4月にズーンって落ち込んでも、もうちょっと頑張ろうって、キープオンできる原動力になりました。実際その後も4月にクレイジーケンバンドさんの有料配信の相談を受けて、一瞬「有料配信制作会社をやってくか!」みたいなノリだったんですけど(笑)、非常事態宣言が出て有料配信自体もそもそも延期になっちゃって。なので、非常事態宣言が明けて、「このくらいのスタッフの人数でだったら大丈夫」っていう規定がクリアになったら、やれることはあるんじゃないかと思います。

―逆に、マイナス面に関してはどうお考えですか?

角張:ツアーとかはできないですよね。例えば、磔磔を使って有料配信したいと思っても、東京から京都に行くのって、言ったら、無駄な移動費ってことになっちゃうから、そういう情緒がなくなっていくというか。あとは、スタジオとかライブハウスじゃない場所でやる人も増えるでしょうね。ただ、機材費がかかるけど。要は、外音を出さなくても、アウトのミックスを臨場感あるものにできれば、配信する場所は今後少し幅が出ていくでしょうね。

―山㟢さんはライブ配信についてはどうお考えですか?

山㟢:そもそも「ライブができないから配信でやる」っていう、代替案でしかないと思っていて。僕らがライブをやったり、観に行ったりするのは、単純に「音楽が聴きたい」っていうだけが目的じゃなくて、お客さんもライブの重要な一要素っていう特殊な空間がそこにあるから、それを体感するためにバンドをやってるっていうのもある。現状みんなライブができないから、苦肉の策として配信でライブをやっていて、それはそれで面白いコンテンツになり得ると思うけど、そもそも全然別個の話かなって。とにかく、自分はライブハウスのあの感じがなくなってほしくないっていうのが一番だから、今できるのは声を上げて、ちょっとでも足しになるように支援をするぐらいだと思ってます。

角張:下北沢SHELTERの前でちょっと話して、ビール一杯だけ飲んで、ライブ観ないで帰る、みたいな日もありますからね(笑)。もうちょっとウイルスに対する知識と対応策がわかってくれば、入口で検温すればオッケーとかになるとは思うんですけど。

山㟢:そう思うし、それを願ってます。

―おそらく最初は人数を減らす必要があって、例えば、200人キャパを100人に絞るってなったときに、今の期間でライブ配信の設備を強化しておくことで、100人以上の人にも楽しんでもらえるし、お金にもなるのかなって。「コーチェラ」にしろ「フジロック」にしろ、すでにライブ配信との相乗効果を生んでるし、ライブハウスもそうなる可能性はあると思うんですよね。もちろん、全部がそうなればいいわけじゃなくて、やりたいところがそうなれば。

角張:なるほどね。東京都でもテレワークの機材を買うお金を支援するとかありますし、ライブハウスは今キャッシュがなかったとしても、そういうのを使って買うのもアリですよね。急に競馬の話になるんですけど(笑)、佐賀競馬場の入口に除菌シャワーをつけてて、あれいいなと思って。要は、小学生がプールに入る前に塩素に入るみたいなものだと思うんですけど、ああいうの上手く使えたらなって。

佐賀競馬場の厩舎団地入口に除菌ミストトンネルが設置されました
コロナはここで( ◉-◉ )STOP pic.twitter.com/HSp0cxW5wL— paris HARA (@paris8383) May 4, 2020
山㟢:ネットで見たけど、中国の保育園だっけ? しっかりやってたね。

角張:そういうシステムが整ったライブハウスを国が見本として作ってくれたらなあ(笑)。

―異業種のやり方だったり、あとは日本より先んじて動き出すであろうアジアの他の国のライブハウスのやり方だったり、参考はいろいろあるでしょうからね。

山㟢:ある程度終息して、ライブハウスが普通に稼働できるようになったとして、これから先も感染症ってまた起こりうるわけじゃないですか? SARSとか、すでに21世紀で3回くらいウイルス感染症の流行があったわけだし。それを経験値として「また違うウイルスが出たときはこうしましょう」みたいな、セーフティーネットは今のうちに考えておくべきだなって思いますね。

角張:2030年にもう一回コロナみたいなのが来たとして、10年前のことが全然生かされてないじゃんって思いたくはないですよね。

toe・山㟢廣和とカクバリズム・角張渉に聞く、ライブと新型コロナと行政の戦い

MUSIC UNITES AGAINST COVID-19
https://www.savelivehouse.com/

<INFORMATION>

カクバリズム、Bandcampレーベルアカウント
https://kakubarhythm.bandcamp.com/

toe・山㟢廣和とカクバリズム・角張渉に聞く、ライブと新型コロナと行政の戦い

mei ehara
『Ampersands』
発売中
https://kakubarhythm.com/special/ampersands/

toe・山㟢廣和とカクバリズム・角張渉に聞く、ライブと新型コロナと行政の戦い

YOUR SONG IS GOOD
『Sessions 2』
発売中
https://yoursongisgood.com/discography/sessions/