音楽業界のウィリー・ウォンカは、最近落ち着きを見せるようになった。
その結果として生まれたのが、4月にリリースされた『Fear of the Dawn』、7月22日発売の『Entering Heaven Alive』という、ホワイト・ストライプスを思わせるオールドスクールなサウンドから、ビートルズを彷彿とさせる実験性、王道のアメリカン・ジャズなど、多様で振れ幅の大きい2枚のアルバムだ。
ーあなたはパンデミックの間に2枚のアルバムを完成させました。やはりじっとしてはいられなかったと?
ジャック:僕はあまり個人的なことを曲にしないんだけど、今回は病院や刑務所、あるいは保護施設とか、簡易ベッドで眠ることでビジョンや考えを整理することができる場所についての曲(「That Black Bat Licorice」)を書いたんだ。自分の限界に挑もうとしていて、1日に16時間くらい作業する時もあった。足の骨を折って入院すれば、作業を中断して作品を客観的に評価できるかもしれないなんて考えたこともあったよ。
(パンデミックの間に)家具作りを再開したんだけど、いい気分転換になった。
ーアルバムを2枚発表する理由は?
ジャック:かなりの数の曲を書いたんだけど、どれも方向性がバラバラだった。かなりヘヴィなやつもあれば、もはやスピードメタルみたいな曲もあるし、すごく穏やかなものもある。20~25曲くらいあったかな。最近は2枚組のアルバムって歓迎されないからね。
『Entering Heaven Alive』の先行シングル「If I Die Tomorrow」
ー『Fear of the Dawn』では初めてサンプリングを導入しています。キャブ・キャロウェイの「Hi De Ho」をサンプリングした理由は?
ジャック:ある日キッチンにいた時に、ラジオで彼の曲を聴いたんだけど、ものすごく刺激を受けたんだ。それで曲の一部をサンプリングして、フィットするドラムパターンを考えて、次はベースライン、みたいな感じで曲を形にしていったんだけど、その過程でこう思ったんだよ。「Qティップのラップを乗せたらすごく面白いんじゃないか?」ってね。
その5分後、彼がトラックにスキャットを乗せて送り返してきた。
ロックの未来、新しいヘアスタイル
ーロックは今後どこに向かうと思いますか?
ジャック:ロックというフィールドは無数のアーティストによって探求されてきたけど、最も才能のある人たちがその歴史を塗り替えたのは大昔のことだ。でも希望がないわけじゃない。
ー8カ月の間に作った家具の中で、一番の自信作は?
ジャック:My Sonic Temple(と題したベンチ)だね。
ー新作のレコード盤を出すにあたって、何か特別なプランを用意していますか?
ジャック:バージョン違いをたくさん作る予定だよ。ポップスターがレコード盤を複数のバリエーションで出すようになったことを、僕は大いに歓迎してる。子供と一緒にTarget(アメリカの大手スーパー)に行って「ほら、ラモーンズのTシャツが売ってるよ。セックス・ピストルズのレコードもある」なんていう会話を交わすことに、僕はすごく喜びを感じるんだ。作品を少しでも多くの人の手に渡るようにすることって、本当にものすごくクールなことなんだよ。
今年は取材の場で必ず、40年前にあったようなレコードのプレス工場を作ってくれるようメジャーレーベルに呼びかけることにしているんだ。やつらは神様よりも多くの金を持ってるんだからさ。
ー新しいヘアスタイルについても教えてください。ブルーがすごく似合っています!
ジャック:特に理由はないけど、Targetで人から気付かれなくなったのは嬉しいね。ラモーンズのTシャツくらい黙って買わせてくれよ、なんてね。冗談さ。嫌な思いをさせられたことなんてないし、愚痴をこぼしたこともないよ。何もかも一新して、新しいスタートを切ったって感じてるんだ。一緒に仕事するチームも変わったし、誰もネガティブな要素を持ち込んだりしない。そういう環境の変化が、自分の外見にも現れたってことなんじゃないかな。今は何もかもが新鮮なんだ。
ジャック・ホワイト
『Fear of the Dawn』
発売中
視聴・購入:https://orcd.co/fearofthedawn
ジャック・ホワイト
『Entering Heaven Alive』
2022年7月22日リリース
視聴・購入:https://orcd.co/enteringheavenalive
FUJI ROCK FESTIVAL 22
2022年7月29日(金)~31日(日)
新潟県 苗場スキー場
※ジャック・ホワイトは7月30日(土)出演
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/