米ロサンゼルスのApple Music Studioにて、ゼイン・ロウと藤井 風による対談が行われた。世界的な注目を集めるコーチェラ・フェスティバルでのパフォーマンスや、ニューアルバム『Prema』の制作秘話について、二人は深く語り合った。


コーチェラのMojaveテントでステージを披露した藤井は、新たな観客と出会えたことへの純粋な喜びと感謝を口にした。今回の対談で特に注目を集めたのは、新作『Prema』が自身初の全編英語アルバムであるという点だ。藤井はこの挑戦について、長年の夢がようやく形になったと感慨深げに明かしている。

アルバムの方向性について、藤井は「モダンなサウンドに縛られることをやめ、自分が本当に聴きたいと思う音楽を作ることにした」と語った。制作の背景には、80年代のビッグ・プロダクションや夏のエネルギー、そしてどこか懐かしさを感じさせるノスタルジックなバイブスへの強い情熱があったという。また、伝説的なプロデューサー・ユニットであるジャム&ルイス(Jam & Lewis)への深いリスペクトを表明するなど、細部にまでこだわり抜いたサウンドメイキングの舞台裏を詳しく解説した。

以下、インタビューの模様をお届けする。

コーチェラでのパフォーマンス

ゼイン:土曜日にMojaveテントに行って、素晴らしいパフォーマンスを観ることができました。美しく、洗練されていて、深みがあり、本当に真摯なステージでした。以前からレコーディングのファンだったのですが、今回で立体的に理解できた気がします。すべてが腑に落ちた感じです。だからこそ、そのライブを届けてくれたアーティストをApple Music Radioにお迎えできることが、本当に嬉しくてたまりません。
皆さん、盛大な拍手でお迎えください。藤井 風さん、お会いできて嬉しいです。お元気ですか?

藤井 風:なんて素晴らしい紹介なんでしょう。ありがとうございます。呼んでいただいてありがとうございます。

ゼイン:いえいえ。カリフォルニアへようこそ。お元気ですか?気分はいかがですか?

藤井 風:今、お腹がドキドキしています。

ゼイン: 私もです。

藤井 風:えっ、本当ですか?

ゼイン:ええ、いつもそうなんです。でもこの感覚、好きですよ。誰かのことを知っていくワクワク感、その人を突き動かすもの、原動力になるもの、考えさせるものを理解していく過程というか。
今この瞬間を大切に過ごすという意味で、今朝目が覚めたときどんな気分でしたか?

藤井 風:あー、今朝はすごく眠かったです。朝早いですもんね?

ゼイン:そうですね、かなり早いですよね。カリフォルニア時間の9時42分に、いきなり大きな質問を浴びせてしまってすみません。

藤井 風:そうですね(笑)。

藤井 風がゼイン・ロウと語る、コーチェラでのパフォーマンス、ニューアルバム『Prema』制作秘話【Apple Music】

(c) Apple Music / The Zane Lowe Show

藤井 風がゼイン・ロウと語る、コーチェラでのパフォーマンス、ニューアルバム『Prema』制作秘話【Apple Music】

(c) Apple Music / The Zane Lowe Show

ゼイン:先週末のフェスティバルはいかがでしたか?風さん自身の言葉で、コーチェラの体験を聞かせてください。

藤井 風:そうですね、本当にすべてのことに感謝しています。来てくれた皆さん、そして一緒に働いてくれた皆さんに感謝しています。本当に素晴らしいバンドと一緒にやれました。

ゼイン:本当に素晴らしかったです。

藤井 風:ありがたいことです。

ゼイン:とても洗練されていました。火曜日にLuisa Sonzaというブラジルの素晴らしいアーティストと話していたんですが、彼女はブラジルをはじめ世界各地でとても有名な大成功したアーティストです。
コーチェラへの出演が好きだと言っていたのですが、ある意味、良い意味で再スタートを切るような感覚になれるから、と。既存のファンに3回目、4回目、5回目として自分を見せるのではなく、初めて自分を知ってもらうチャンスがある、と。あなたも同じように、旅をして、ステージで初めて出会うオーディエンスと繋がることを楽しんでいますか?

藤井 風:もちろんです。初めての出会いですよね。ええ、本当にそう思います。

ニューアルバム『Prema』制作秘話

ゼイン:このアルバム、リリースされた『Prema』についてお話しましょう。制作の背景として、作り始めたとき、究極的に自分の中に何を求めていたのかを教えていただけますか?

藤井 風:自分の中に、ですか。うーん、音楽的には今まで自分がやったことのないことをやりたかったんです。80年代のあの感じ、大きなプロダクション、大きなエネルギー、夏の、夏らしいフィーリング。あのノスタルジックな雰囲気。それをそのままストレートにやることが怖くて。なぜかというと、モダンなサウンドにして2020年代の世界に合わせなきゃいけないって感じていたから。
でもそういうことを気にするのをやめて、プロデューサーとして、ある種の存在として、自分が聴きたいものを作るようにしました。できる限り客観的な視点を持とうとして、ある意味で楽器のように自分自身を使おうとしたんです。

ゼイン:それはどんなアーティストにとっても、成功を収めたあとに下せる最も勇気ある決断の一つだと思います。

藤井 風:そうですね、全編英語のアルバムに完全に踏み込むのは、本当に緊張しました。

ゼイン:そうですよね。

藤井 風: はい、大変でしたが、やって本当によかったと思っています。英語でアルバムを作ることはずっと夢だったので。まさに夢が叶いました。それが実現して、本当に感謝しています。

藤井 風がゼイン・ロウと語る、コーチェラでのパフォーマンス、ニューアルバム『Prema』制作秘話【Apple Music】

(c) Apple Music / The Zane Lowe Show

ゼイン:聴いていると感じ取れる音楽的な参照点がいくつかあって、クラシックでとても革新的なR&Bのサウンドと空気感が伝わってきます。ところどころJam & Lewisを感じる瞬間があります。

藤井 風:まさにそうです。


ゼイン:Jam & Lewisについて少しマニアックに語りませんか?踊りながら泣かせてしまう、そんな二人のプロデューサーであり作家ですよね。

藤井 風:ああ、本当にそうですよね

ゼイン:それがインスピレーションの一部になっているんですか?あなたの音楽にはたくさんの動きがありますが、感情的な音楽でもありますよね。

藤井 風:そうですね、そう言えると思います。彼らのプロダクション、彼らが作ったアルバムにはストーリーがあって、とても多彩なんですが、同時にまとまりがあって、良いエネルギーとソウルがある。ソウルフルな音楽なんです。

ゼイン:ソウルフルな音楽。

藤井 風:ええ、でも同時にとてもキャッチーで革新的でもある。それが大好きなんです。

ゼイン:同じく、僕もとても好きです。グルーヴの中に引き込まれて、ある場所にいると思ったら、コード・チェンジをして、「あ、バラードだ!」ってなる瞬間も大好きです。もう速い曲じゃなくて、いつの間にかバラードになっているという感じで。

藤井 風:ええ。


ゼイン:常に切り替え、切り替え、切り替え続けるんです。すごい、本当に素晴らしい。

スピリチュアルに、テレパシーで

ゼイン:今回のレコードで他の人たちとどのように作業しましたか?あなたはプロデューサーでもあって、自分が求めるサウンドのビジョンを持っていて、何でもできる。では、他の人たちとのコラボレーションについてどう感じていますか?また、自分に合うコラボレーターに何を求めますか?何が大切ですか?

藤井 風:僕にできることって、ピアノを弾いてメロディーを作ったり、少し歌詞を書いたりすることだけなんです。だからいつも、サウンド・プロデューサーとコミュニケーションを取りながら、サウンドの方向性や参考にするものについて話し合うようにしています。人と協力することは大切というか、僕にとっては必要不可欠なんです。新鮮なアイデアが必要だし、他の人たちはいつも色々なことをよく知っている。他の人から知識と力をもらう必要があります。

ゼイン:アイデアをどうやって人に伝えますか?明らかにとても深く感じているものを、何とか形にしなければならない、それが音楽を録音することの難しさですよね。自分が感じていることを他の人に伝えて、具体的な体験として形にするために、どのような方法を好みますか?

藤井 風:そうですね、とにかく正直であることがとても重要で、常に具体的なことを言う必要はないと思います。雰囲気やとてもスピリチュアルなものを伝えるだけでいい。多くを語らなくても本当に自分を理解してくれる人と一緒に仕事がしたいです。話したり説明したりするのがすごく苦手なので。

ゼイン:いや、全然そんなことないですよ。今、とても素晴らしい会話ができています。

藤井 風: ありがとうございます。でも、言いたいことを感じ取ってほしい、そういう感じなんです。

ゼイン:ずっとそういう方でしたか?若い頃から、言語ではない別の手段で自己表現する方が自分に合っていると感じていましたか?

藤井 風:ええ。日本語でも、どんな言語でも同じです。今、どの言語もまともに話せていないですよ。ほぼ。

ゼイン:子供の頃は物静かでしたか?

藤井 風:ええ、どちらかというと静かでした。でも時々はっちゃけることもありました。180度変わるみたいな感じで。

藤井 風がゼイン・ロウと語る、コーチェラでのパフォーマンス、ニューアルバム『Prema』制作秘話【Apple Music】

(c) Apple Music / The Zane Lowe Show

ゼイン:これまで、本来内向的な性格なのに、パフォーマンス・アーツの世界に飛び込んで8万人の前に立つことになったアーティストたちと、インタビューしたり、話したり、出会ったり、友人になったりしてきました。プライベートでは静かで内気な人が、どこかに日産スタジアムのステージに立ちたいという気持ちを持っているというのが、いつも不思議で魅力的に感じます。どうかしてるんじゃないですか(笑)?

藤井 風:必ずしもそういう欲求があるわけじゃなくて、なぜ今こうしているのか正直わかりません。神様が連れて行くところへ、ただ身を委ねている感じです。

ゼイン:そう感じているんですか?自分の成功やここまでの歩みは、自らの欲求ではなく、何か存在的な導きによるものだと感じていますか?

藤井 風:まったくその通りです。ただレコーディング・ブースでレコードを作りたかっただけで、それで十分だったんです。それがずっとやりたかったことです。でも人前でパフォーマンスするなんて、正気じゃない。どうやってやるのか、今でも理解できません。

ゼイン:初めてのスタジアム・ショーはどんな感じでしたか?そういう心構えでプロセスを信頼しながら、自分が一番それを予想していなかった人間として。後ろにいるクルーの皆さんが笑顔でいるのを見るのが微笑ましいです。みんなこの話に引き込まれているみたいですね。初めてのスタジアム・ショーはどんな体験でしたか?覚えていますか?

藤井 風:ええ、でもそれはかなり個人的な体験でした。観客を群衆や大勢の人、あるいはオーディエンスとして見ていなくて。見えるのは一人の人間なんです。ただ会話を交わしているような感じで。いつも親密な、ほとんどスピリチュアルなコミュニケーションなんです。目を開けなくてもいいくらい。スピリチュアルに、テレパシーで人と交流しています。言葉では上手く言えないけど、そういう感じです。

【写真ギャラリー】藤井 風 with ゼイン・ロウ(※記事未掲載カット多数)
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