就職氷河期世代はこれまでの人生においてさまざまな困難を乗り越えてきたわけだが、40~50代になっても「しんどい職場から逃げられない」という現実がある。逃げ道のない状況で消耗しないために、同世代のひろゆき氏が勧めるのは「何もしない」というスキルだ。
「何もしない」というスルーできる力は、意外と貴重なスキル
「しんどい場面でも逃げない人は組織内で重宝される」これはわりと世の常です。ただ、会社においては「タフな人」というポジティブ評価だけじゃなく、「いついなくなるかわからない社員より、簡単には辞められない(=逃げられない)社員のほうが扱いやすい」という、打算的な思惑もあったりします。
例えば、昭和の時代には「結婚したりローンで家を買ったりしたほうが出世しやすい」と言われていました。これは、責任感が増すという効果だけでなく、「家庭や借金があると会社を辞めにくくなる」という意味でもあります。
つまり「逃げない人」という信頼感は、裏を返せば「逃げられない人」でもある。組織で「逃げない人」という評価を得るには、実績だけでなく上司に「こいつは逃げられないな」と思われているかどうかにも左右されるわけです。
とはいえ、「こいつは逃げないし頼れる」と思われると、今度は面倒くさい仕事ばかり振られて、さらに逃げたくなりますよね。そもそも人間は「明日やればいい」などと、やらない理由(=逃げ道)を簡単につくってしまう生き物です。夏休みの宿題だって先延ばしにする子がほとんどだけど、提出しなければ怒られるという「逃げられない状況」だから最終的にやるわけで。
それに、氷河期世代の場合は、そもそも逃げ道なんてない人も多いでしょう。今の職場がしんどい環境でも、転職などリスクの大きなチャレンジはしづらいし、なんとか今のポジションを維持するほうが現実的です。
そこで大事になるのが、「何もしない」というスキルを手に入れることだと思います。
「うまいこと言わなきゃ」と思うほど消耗する
例えば、取引先から理不尽に怒られても、正論をぶつけたり言い返したりせずに、「ただ時間が過ぎるのを待つ」という冷静な対処をする。うまいことを言う能力を身につけるのは難しいですが、へたなことを言わないのは、黙っていればいいだけなので誰にでもできます。多くの人は「何か言わなきゃ」「正しいことを言わなきゃ」と焦ってしまうから、自分から消耗してしまうわけです。
でも、しんどい場面を前にしたら、「何もしない」だけでも逃げなかったことになります。何かを実践するのがスキルだと思われがちですが、「何もしない」ことだって立派なスキルなのです。
反省しているかどうかより、反省しているように見えるか。修羅場で焦って自滅するのではなく、嵐が過ぎるのを待てるかどうか。そうやって一歩引いたプレーができるようになると、得する場面が意外と増えます。
今の世の中は積極的な行動ばかり求められますが、だからこそ「何もしない」という存在が、相対的に貴重になっている部分もあるわけです。実際に、「レンタル何もしない人」という、何もせずにそばにいるだけでお金をもらえる人がいるくらいですから。
構成・撮影/杉原光徳(ミドルマン)
―[ひろゆきの兵法~われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?~]―
【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。
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