久保建英、初のタイトル獲得なるか!?(後編)

 いまや100人を超えると言われる"欧州組"。だが、主要国でリーグ戦、カップ戦のタイトルに手が届くのはほんのひと握りに過ぎない。

久保建英は、25年前に中田英寿(当時ローマ)が切り開いた道を突き進むことができるか。

 4月18日(現地時間)、セビリア。レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英は、初のタイトルをかけてアトレティコ・マドリードとスペイン国王杯決勝を戦う。アトレティコは14日のチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝で、バルセロナを2試合トータルスコア3-2で下し、ベスト4に勝ち上がって意気盛んだが......。

 久保にとって、ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコは"お得意様"と言っていいほど活躍している相手であり、復活弾も期待される。ハムストリングの負傷から約3カ月ぶりのアラベスとの復帰戦では、後半途中出場でいきなりヘディングによる逆転弾アシストを記録した。その勢いで決勝の舞台に立つわけで、相変わらず"星の下に生まれた感"は半端ではない。

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 今シーズンの久保は国王杯を、3回戦の3部エルデンセ戦と、ラウンド16で延長PK戦の激闘になったオサスナとの試合以外はケガなどで欠場している。この間に新たにペッレグリーノ・マタラッツォ監督が率いることになったチームは調子を上げており、国王杯でも決勝まで勝ち進んできた。ただ、長いケガから復帰したばかりの久保は、先発より交代の切り札として起用される可能性もある。

 復帰したアラベス戦でも、久保はジョーカーになっていた。後半途中に出場すると、右サイドアタッカーを起点に自由に動き、ゲームチェンジャーとなった。

左サイドからクロスが上がる瞬間、ゴールポスト近くまで走り込み、ヘディングで折り返し、オーリ・オスカルソンのゴールをお膳立てしたシーンは、ボールを引き出すランニングのタイミングも出色。勝利に対する野心も濃く出ていた。

 その後も右サイドでボールを受けると、1対1ではドリブルで相手を圧倒。ディフェンダーを置き去りにしてクロスボールを供給していた。崩す力は健在で、敵のサイドバックにとっては悪夢のような存在だろう。

【キーマンは両軍の右サイドに...】

 アトレティコ戦では、イタリア代表のマッテオ・ルッジェーリとのマッチアップになるか。ルッジェーリはバルセロナとのCL準々決勝1レグ(8日)で、対面したラミン・ヤマルを相手にクリーンシートに貢献。ディフェンスだけではなく、攻撃でも厚みを加えて守備を安定させる。2レグでもひじ打ちを顔面に食らって出血しながらピッチに立ち続けて、イタリア人守備者としての遺伝子をアップデートしたような選手だ。

 確かに難敵だが、久保が怯む必要は少しもない。緩急の変化だけで、カードを誘発できるだろう。そうなればそこからは独壇場になるはずで、切り札的に投入された場合、一気に戦局を動かせそうだ。

 そのアトレティコはCLに全力を捧げている。1レグと2レグの間のラ・リーガの試合は先発をほとんど入れ替えるほどで、そのかいあって闘志を振り絞ってベスト4に進出した。しかしその代償として心身ともに消耗した状態である可能性も高い。

 その点、ラ・レアルはアトレティコ戦に万全の準備ができるだけに優位に立つ。

 ラ・レアルのキーマンが右サイドの久保だとしたら、アトレティコのキーマンも右サイドのジュリアーノ・シメオネと言える。ジュリアーノは、言わずと知れたシメオネ監督の息子である。今シーズン開幕前、久保がアトレティコに移籍するという噂が立ったが、「あり得ない」と筆者が書いたのは、まさにジュリアーノがいたからだ。

 もっとも、「監督の息子がいるから」という理由ではない。シメオネはジュリアーノのようなスピリットを持った同胞のアルゼンチン人が大好きなのである。不屈の闘志で右サイドを躍動し、どん欲にゴールを狙う一方、必死にバックラインまで下がって激しくディフェンスするジュリアーノは、好戦的なアトレティコを象徴している。CLバルサ戦1レグも、馬力のあるランニングで抜け出し、パウ・クバルシのファウルを誘ってレッドカードで10人に減らし、勝利の立役者になった。

 アトレティコのツートップ、元ラ・レアルのアントワーヌ・グリーズマン、アルゼンチン世界王者のフリアン・アルバレスは強力だが、アレクサンダー・セルロート、アレックス・バエナという久保の元チームメイトふたりが交代の切り札になるかもしれない。

セルロートは単純に高さ、強さがあってCLバルサ戦でもゴールを決めており、ポストプレーもうまく、起点になれる。またバエナはキックの精度はラ・リーガでも屈指で、一発のあるアタッカーだ。

 久保は3カ月ぶりの復帰戦を戦ったばかりで、実戦から離れていたハンデがあるのは否めない。アラベス戦はマッチMVPに輝くすばらしい復帰戦になったが、試合勘のなさも露呈していた。終了間際、自陣でボールを受けたときに背後からボールを突かれて、それが同点弾につながってしまったのだ。

 もっとも、チームはマタラッツォ監督が率いて以来、調子は上向きで、開幕当時が嘘のような戦いを見せている。カルロス・ソレール、ゴンサロ・ゲデス、ドゥイェ・チャレタ・ツァルなど新加入選手がフィット。ミケル・オヤルサバルはスペイン代表の中心となり、アンデル・バレネチェアも新たに代表に招集された。さらには若手センターバックのジョン・マルティンもビッグクラブからのオファーを受けており、メンバー的にも決勝進出はフロックではない。

 復帰した久保が、決勝の舞台で真価を見せる。

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