久保建英、初のタイトル獲得なるか!?(前編)

 いまや100人を超えると言われる"欧州組"。だが、主要国でリーグ戦、カップ戦のタイトルに手が届くのはほんのひと握りに過ぎない。

久保建英は、25年前に中田英寿(当時ローマ)が切り開いた道を突き進むことができるか。

 4月11日(現地時間)、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英は、ハムストリングの負傷から3カ月ぶりの復帰を果たした。ラ・リーガのアラベス戦に途中出場すると、ヘディングで3-2とする逆転弾をアシスト。その後、試合は終了間際に追いつかれてしまったが、いきなりマッチMVPに輝いている。

 そして18日には、スペイン国王杯決勝のアトレティコ・マドリード戦で、自身プロキャリア初のタイトル獲得に挑む。

 もし優勝した場合、スペインのクラブに在籍する日本人選手としては歴史上初のタイトルとなる。控え目に言って、快挙と言えるだろう。これまでイングランド、イタリア、ドイツのクラブでは日本人が優勝を経験している。逆に言えば、スペイン挑戦の日本人の道のりは、それだけ困難だったことになる。

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 過去を振り返ると、ラ・リーガでエイバル、アラベス、ベティスに所属した乾貴士も「スペインで成功した日本人選手」と言える。

 特にエイバル時代、乾はホセ・ルイス・メンディリバル監督の"寵愛"を受け、サイドアタッカーとして成長を遂げた。ブンデスリーガからやって来た当初は、「守備ができない」「戦術面が未熟」という欠点が指摘されたが、日本人を色眼鏡で見なかったメンディリバルに鍛え上げられ、ラ・リーガでひと皮むけた(当時はブンデスリーガよりもラ・リーガのほうがレベルは明らかに上だった)。

 タイトル争いには縁遠かったが、エイバルを1部に残留させたことは一番の功績だったと言える。それは簡単なことではない。その経験があったからこそ、2018年のロシアワールドカップで活躍することもできたのだろう。

 そして久保が登場するまで、乾のほかにはこれまで明確に「スペインで成功した」と言える日本人選手がいないのだ。

【タイトルなどほど遠かった過去】

 大久保嘉人のマジョルカでの1年目、デビュー戦の華々しいゴールや終盤戦の救世主ぶりは今も語り草だが、あくまで活躍は部分的だった。香川真司(当時はサラゴサ/以下同)、岡崎慎司(マラガ。ウエスカ、カタルヘナ)、柴崎岳(テネリフェ、ヘタフェ、デポルティーボ・ラ・コルーニャ、レガネス)、橋本拳人(ウエスカ、エイバル)は2部が主戦場だったし、西澤明訓(エスパニョール)、中村俊輔(エスパニョール)、清武弘嗣(セビージャ)、ハーフナー・マイク(コルドバ)、井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)らは早々に退散。家長昭博(マジョルカ)や武藤嘉紀(エイバル)も1年を通じての活躍はできていない。

 また、昨シーズンからマジョルカでプレーする浅野拓磨もケガで戦列を離れることが多く、やはり1年を通じた主力にはなっていないのが現状だ。

 いずれも日本代表であり、Jリーグでは輝かしい結果を残した選手ばかりだが、多くが1年足らずでチームを離れている。これではタイトル獲得などほど遠い。「優勝」を云々するほど定着できていないのだ。

 そんななかで、久保はラ・リーガ7シーズン目になる。

マジョルカ、ヘタフェ、ビジャレアル、そしてラ・レアルで一気に羽ばたいた。自らが勝ち取ったチャンピオンズリーグを戦い、ベスト16にも進出するなど、何度もヨーロッパのカップ戦に出場している。これが、どれだけ破格なことか。

「タケはスペイン人よりもスペイン人らしい」

 現地で関係者たちはそう言っているが、久保は適応する必要がなかった。スペイン語を流暢(りゅうちょう)に話せることはアドバンテージだが、それ以上に、負けず嫌いは人一倍だし、チームメイトと一緒に楽しむバイタリティもある。むしろマイペースで、周りを自分のリズムに合わせさせる。それだけのパーソナリティの持ち主だ。

 それがピッチで持ち味であるコンビネーション力の高さに通じている。ラ・レアルの元監督イマノル・アルグアシルの師匠で、web Sportivaのご意見番でもあるミケル・エチャリは久保の資質をこう評価していた。

【処世術を含めての成功】

「タケ(久保)は本当にすばらしい選手だよ。とくにコンビネーションのところでは瞠目すべき技術を持っている。スモールスペースをまったく苦にしていない。

周りを使って解決できるから。ラ・レアルのように能力の高い選手がいるチームで輝けたのは必然と言える。たまに監督やチームについてあれこれ言ってしまうのも、彼の主張の強さの裏返しだろう」

 気の強い久保は、監督との相性はあるだろう。ウナイ・エメリ、ホセ・ボルダラス、ハビエル・アギーレとは明らかに相性がよくなかった。戦術の決め事が多すぎたり、アンチフットボール的だったり、極端にフィジカルの強さを求められたり、関係が合わない場合の"見切り"も早い。久保自身、「自分がどういうチームで生きるか」をわかっているのだ。

 その処世術も含めて、久保はラ・リーガで成功を勝ち取ってきた。

 ラ・レアルでの久保は、まさに勝利をもたらす男になっている。今や「Talisman」(お守り)と拝まれるほどの存在だ。

 2022年7月に入団して以来、久保はラ・レアルに幸運をもたらしてきた。2022-23シーズンは自身が得点を決めた9試合すべてでチームは勝利し、「久保がゴールすれば勝つ」神話が誕生。2023-24シーズンは6試合で7得点をあげ、一度だけ引き分けたが、負けていない。

2024-25シーズンも7試合7得点で7戦に全勝している。今シーズンは2得点2引き分けだが、黒星は回避し、不敗神話は続いている。

 ラ・レアル史上、最多試合出場を誇るディフェンダー、アルベルト・ゴリスが、「ディフェンダーだった立場からタケの長所を語るなら、まずは自分のプレーに確信がある点が脅威になる。迷いがない。それがチームに勝利をもたらす」と語っていたのが印象的である。

 少しも躊躇がないことで、最大限の効果を出せる。それは正念場での決定力にもつながっているのだ。

 はたして、久保はスペイン国王杯でも勝負をつける活躍ができるだろうか?

つづく

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