Reiはブルーズやロックにポップの感覚を合わせた独自の詞曲を作って歌うシンガー・ソングライターだが、それ以上に卓越したテクニックを持つギタリストとして広く知られているのは間違いのないことだろう。そのReiの新しいミニアルバム『XINGS』は「ギター・プレイをフィーチャーした」作品だという。


前作『VOICE』こそ歌声とソングライティングに焦点を当てた、彼女にとっては少し異色のミニアルバムだったわけだが、「ギター・プレイをフィーチャー」することはこれまでもずっとやってきたわけだし、ギタリストなのだから当たり前のことなんじゃないか。そう思った人もきっといただろう。では、ギター・プレイのフィーチャーの仕方はこれまでと何がどう違うのか。違うのはギター・フィーチャー度の割合なのか、新しさなのか、なんなのか。その答えが『XINGS』にあり、聴けばなるほどと深く納得することになるのだが、Reiの口からも直接そのあたりを聞きたいとインタビューに臨んだ。このタイミングで「ギター・プレイをフィーチャーした」作品を作ったことにはどういう意図と思いがあったのか。そこに迫る前に、まずは最近のライブの話から始めよう。

スガシカオやRHYMESTERから学んだこと

―今年のフジロックは大活躍でしたね。まず初日のGypsy Avalonステージでのライブが凄かった。単独での出演は7年振りとあって、めちゃめちゃ気合いが入っているのを感じました。

Rei:はい。気合い入ってました。


―その翌日にはFIELD OF HEAVENステージでスガシカオさんのバンドのギタリストを務めました。別のアーティストのライブやレコーディングにゲストで参加することはこれまでにもありましたが、バンドの一員として参加して一緒にツアーをまわるという経験は初めてですよね。いかがでしたか?

Rei:ものすごく刺激的な経験でした。去年はRHYMESTERと一緒に曲を出して(RHYMESTER「My Runway feat.Rei」)、その流れでのツアーに帯同して、武道館にも立たせていただきました。そして今年はスガさんのツアーに参加させていただいたわけですけど、そうやってほかのアーティストさんの横でギターを弾くことでフィードバックがあるんです。まず自分のプレイを振り返って精査する必要があるので、反省点を洗い出したり、ここが弱いなと思うところを強化することを繰り返して、スガさんの理想に近づけるようにギターのレベルアップを図りました。それが今回の作品にもすごく活きていると思います。

―スガさんとのツアーと今回のミニアルバムの制作が同時進行で行なわれていたわけですね。

Rei:そうです。

―因みにスガさんは大のプリンス好きじゃないですか。そんなスガさんはReiさんのギター・プレイにプリンスっぽさを感じて抜擢したんじゃないかな、なんてことを考えてみたんですが。

Rei:そうだったとしたら、めっちゃ嬉しいですね。


―そんな話はしたことないですか?

Rei:その話はしてないですけど、スガさんはJ-POPの世界のなかでもブラックミュージック、特にファンクに対する造詣が深くて。ブラックミュージックとJ-POPの融合って、すごく技術のいることだと思うんですけど、それを長年やってらっしゃる方ですからね。私もブラックミュージックをたくさん聴いて育っているので、何かシンパシーを感じてくださったのかなとは思ったりしました。ここのカッティングはプリンスのあの曲の感じでとか、ここはスライ・アンド・ザ・ファミリーストーンっぽい感じでとか、具体的に名前を出しながら、いろいろご指導をいただきました。

Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味

Rei Release Tour 2024 ”SIX XINGS” 2024年10月9日、恵比寿リキッドルームにて撮影(Photo by 服部恭平)

―ところで最近のReiさんのライブを観ていると以前よりもお客さんの熱量が高くなっていて、それによってReiさん自身も開放され、一体感が生まれているという印象を受けます。とりわけ3月に渋谷クアトロで行われたRelease Tour 2024 ”VOICE MESSAGE”のファイナルを観てそのことを強く感じたんですが、そうした変化はご自身も感じますか?

Rei:ほかのアーティストのライブをいろいろ観させていただくなかで、自分は良くも悪くもお客さんとの距離があるほうのアーティストだなと自己分析してまして。自分のライブのお客さんは演奏に集中して観てくださる方が多く、お決まりの手振り身振りとか合いの手をみんなで入れるというような景色にはあまりならないんです。私自身、集中して圧倒されながら観るライブが好きなので、それはそれで正解だと思っています。でもそれなりにキャリアを積んできて、ファンダムを作っていくことも意識するようになりました。K-POPとか日本のアイドルの世界ではファンダムがすごく重要とされていて、ファン同士の繋がりも強い。そこで私のファンというひとつのコミュニティみたいなものをもう少し強化していったらどんなふうになるんだろうという好奇心が生まれたんです。

それと、RHYMESTERのライブを観ていて思ったんですけど、彼らは本当にお客さんと一体となるのが上手で、ステージの運び方も凄いんですよ。
いくつもの曲がひとつの曲に思えるくらいのメドレー感でよどみなく進んでいって、この曲はどんなふうにノレばいいんだろうみたいなことを考える間もなく波に吞み込まれる。自分もこういうライブができるようになりたいなとは思いました。まだ試行錯誤の最中なんですけど。

―一体感を生み出せるライブにしたいと思いながら臨むことが増えたということですか?

Rei:う~ん。でもまだ自分のなかで答えは出てなくて。というのも、私はペトロールズを尊敬しているんですが、彼らはライブのときにいつも「好きなように楽しんでね」「ドリンクを取りに行きたくなったら行けばいいし」というようなことを言っていて。強要をしない。そういうアティテュードも私はすごく好きなんですよ。私も楽しみ方を強要したくはない。それを踏まえた上でのいいバランスが見つかればいいなと思っているところです。ひとりで観に来た人も、自分の居場所がここにあると思えるような安心感のあるいいバランスを探れたらいいなと思いながら、最近はライブをやっています。

―実際、声を出して開放された状態で楽しんでいる人も、集中して静かに演奏を聴いている人もいて、そのバランスはどんどんよくなってきているように感じます。


Rei:ありがとうございます。

―でもReiさん、最後の曲をやり終わると振り返りもせずにスタスタと歩いて一瞬でステージから去ってしまうところは相変わらずですよね(笑)。

Rei:あはははは。なんかこう、用が済んだのでサヨナラ!って感じにどうしてもなっちゃうんですよね。いろんなタイプの演者がいると思いますけど、私はどんな事柄でも終わったら後腐れなく颯爽と去るのがかっこよくて好きですね。メンバーもびっくりするみたいです。終わった瞬間に私がステージから消えてるから(笑)

―はははは。まあ、あれもまたReiさんらしいなと思って観てますけどね。

ギターは心の触手、抱きしめられる楽器

―では新作の話をしましょう。今回はギター・プレイにこだわった作品ということですが、前作『VOICE』を制作しているときから次はそういうものにしようと考えていたんですか?

Rei:考えていました。歌とギターで対になる作品を出したいと思っていました。

―昔から先を見て計画的なリリースをするタイプでしたよね。
インディーのときには『BLU』『UNO』『ORB』と、しりとりみたいに文字の繋がったタイトルの3部作を出したり、そのあとも『CRY』『FLY』と対になる作品を出したり。

Rei:『スター・ウォーズ』好きなので、単体でも楽しめるけど連続だとより楽しめるみたいなものが好きなのかもしれません。

―歌とメロディを重視した『VOICE』を作ったことで、ギターをフィーチャーした今作のイメージがより明確になったというところはありましたか?

Rei:『VOICE』は自分にとって挑戦の作品でした。お客さんだったりスタッフだったりミュージシャンだったりが私のことを形容するとき、「ギターの子」みたいな感じで言われることがほとんどなんです。それは自分印みたいなことだから嬉しいことですけど、でも歌だったりソングライティングだったりにも私としては相当の拘りを持って作っているつもりなので、それがもっと伝わればいいなという想いはずっとあって。ある意味ではギターよりもソングライティングの幅の広さのほうが自信があるんです。だからそこをもうちょっとしっかり伝えたいというのが『VOICE』だった。とはいえギターの聴きどころも自分なりに追及して作った作品でした。でもやっぱりギターの音を欲しがっている人からしてみると、『VOICE』は物足りないところがあったみたいで。

―物足りない、か。それはギュインギュインと激しいギターを弾き倒すReiさんを求めている一部の人ですよね。

Rei:そうです。
シングルノートで歪ませて、どうだー!みたいな感じで思い切り弾いてほしいという人がいらっしゃって。私自身、ジミヘンもレイ・ヴォーンも大好きだから、そういうギター・プレイも好きだけど、でもギターはそれだけじゃない。だから優しかったり切なかったりという表現も追及してきたんですけど、それでもそうやってもっと激しいギターの音を聴きたいというフィードバックが来ると、自分が求められているギタースタイルはこれじゃないんだなみたいに、ちょこっと切ない気持ちにもなったりして……。

―そうだったんだ。

Rei:もちろんポジティブなフィードバックもあったんですよ。でも私は基本的に天邪鬼だから、欲しがっている球を直球で投げるみたいなことは今まであんまりやってこなかった。それよりも幅を見せたいという気持ちがあったから。でも、「そんなに言うんだったら欲しいものをくれてやるよ」じゃないけど、そんなふうに半分怒ってるような感覚で直球を投げるということを一回やってみようかと。「だったらこれでどうだ!」みたいな。だから質問の答えとしては、確かに『VOICE』を作ったことで今回の作品のイメージやトーンがより明確になったところはありましたね。

Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味

Rei Release Tour 2024 ”SIX XINGS” 2024年10月9日、恵比寿リキッドルームにて撮影(Photo by 服部恭平)

―『VOICE』のように歌とメロディに比重を置くとガーリーなReiが濃いめに出てきて、今作のようにギターを大フィーチャーすると「やってやろうじゃねえかよ」といった感じの強気のReiが出てくる、というところは実際ありますよね。それが面白い。

Rei:マニッシュというか、”女前”な感じがね。

―やっぱりエレクトリックギターってそういう楽器だったりするんですかね。持つと勇ましくなるような。

Rei:そうなんですかねえ。今回は”ギターと私”というテーマを音楽だけじゃなくアートワークにも反映させているんですけど、ギターを持つと人格が変わるとかっていうのではなくて、一心同体なんだなってことは思いました。勇敢な日もあれば、愛情深い日もある。怒っている日もあれば、弱っている日もある。そういう自分の心の機微みたいなものを一番正確に表わせるものが、私にとってはギターなのかなって。おっしゃったように持つと勇ましくなるというところもありますけど、それだけではなくて、心の触手みたいな感じで自分の感情を一番なめらかに表現できるものではあるのかなと思います。

―昔はよく、「オレのオンナはいい音出すんだぜ」みたいな感じでギターを女性のように扱うロックギタリストがいたものですが、Reiさんからするとギターは同性のイメージですか、異性のイメージですか。って、ジェンダーで分けるのもヘンですけど。

Rei:どうなんですかね。植物みたいにおしべもめしべもあるような感覚かもしれません。「ギターの好きなところは?」って聞かれると、私は「抱きしめられるところ」だと言っていて。身体との接点が大きいし、特にアコースティックギターだとサウンドホールが私と同じ方向を向いているので、自分に一番近い存在だと思えるし、言葉とかよりも本音に近い状態で表現ができる気がします。

―「GUITARHOLIC」で歌ってますもんね。「胸の真ん中 空いた穴から 溢れる本音 聴いてほしい」と。「寂しがり屋の僕のそばに 抱きしめられる存在が必要です」とも。

Rei:そうなんです。

―今作のアートワークは、まさにギターとReiさんが一体となっていて。Reiさん自身がギターになっているような写真もある。

Rei:そうです!身体に弦が張られてあって。

―この撮影中、どんなことを考えていたんですか?

Rei:今晩は親子丼を食べたいなとか、そんなことですかね(笑)。

―ははは。ギターと一体であることが自然すぎて、特別なことは考えなかったと。

Rei:ロックギタリスト然とした威嚇するような表情よりかは、何を考えているのかわからないニュートラルな表情がいいかなとは思っていました。キッと眼光鋭くみたいなことではなく、ミステリーが残っているような表情というか。

ギターと向き合いながら、人生の意味を見つめ直す

―ギターをフィーチャーした作品ということで、具体的には今回どんなことを意識して作ったんですか? 作る手順が変わったところなんかもありました?

Rei:私は作品によってギターで作ったり鍵盤で作ったり打ち込みから作ったりと作曲の手法を毎回変えるようにしているんですけど、今回は統一して全てギターで作ろうとか、ルールを設けてそれを基準に進めました。それからギターソロを全曲に入れようということも初めから決めていましたね。あとは、ひとつひとつ奏法を使い分けることを意識した。タッピング、ハーモニクス、フィードバックを入れたりと、ひとつひとつギターの聴きどころを明確に決めて作っていきました。

―つまり、Reiのギターのシグニチャーはこう!というのをあからさまにバーンと示すよりは、引き出しのいろんなところを開けて見せるというような。

Rei:そうです。ブルーズという音楽を大事にしていることも、クラシック出身だということも、どちらも自分のカラーだと思っていますし。ロック一筋ではなくジャズっぽいものが入っていたりロカビリーっぽいものが入っていたりと、いろんな形でギター表現を示したかった。それもクラシックギター、アコギと、いろいろ駆使しながら。

―ここでズバリ尋ねると、いまこのタイミングでギターをフィーチャーした作品を作るのは、Reiさんにとってどういう意味があったんでしょうか。もっと自分を知りたくなったというようなことなのか、ギタリストとしての可能性をもっと広げたいというようなことなのか。

Rei:今までの作品のなかで今回は最も私小説感が強いかなって思っているんです。今の自分がどういうことを考えて生きているのか。そのことのリアルをドキュメントするような作品にしたいって思ったときに、それならばギターにとことん向き合って表現するのが一番相応しいんじゃないかと思いました。

―どういうことを考えて生きているのかのリアルをドキュメントする作品にしたいと思った、そのきっかけが何かあったんですか?

Rei:図らずとも今が人生のシーズンにおいて変革期なのかなと思うような出来事が今年いろいろあったので。自分を曝け出すことを恐れずにそれを表現する上で、ギターは最適な楽器だったと思います。

―いろいろあったというのは、どういうことなのか、聞いてもいいですか?

Rei:はい。今回はストックから出してきた曲はひとつもなくて、全部書き下ろしなんですが、初めにできたのが「Heaven」なんです。これを書いたのは……今年の3月から親しかった人を続けて4人亡くしまして。

―4人も?!

Rei:そんなことは初めてで。お葬式に行っては、三途の川のほとりでその人たちが羽を広げて飛んでいく姿を呆然と見ていて、自分の人生観のようなものがゼロに戻ってしまったというか、信じてきたものを信じられなくなりました。あまりにあっけなくて。命、夢、音楽、記憶、愛情といった目には見えないものが全て疑わしくなってきた。それまでなんの疑いもなく信じていたことが不思議なくらい。どんな音楽でさえも嫌いになって聴けなくなってしまった。そのとき、じゃあ音楽が完全に嫌いになる前に1枚だけ作品を作ろうと思って、リリースの予定のない8曲入りのアルバムを作ったんですよ。

―歌詞も書いて?

Rei:いえ、それはインストなんですけど、親友に向けて作った作品です。譜面を起こして、アレンジもして、レコーディングではお友達に演奏やミックスをしてもらって、マスタリングもして、リリースしないのにレコードにしました。この世に1枚しかないレコードです。それを作りながら、「あ、私はまだ完全に音楽を嫌いにはなっていないんだ」って思えた。人生の意味が見いだせなくなりながらも、もう一回音楽に対する気持ちを捨てきれずにいる自分を確かめることができて、それで「Heaven」という曲を作ることもできたという感じなんです。ずいぶん遠回りでしたけどね。

―でもそんなふうにして作った「Heaven」は、決して哀しみに満ちたトーンの曲ではないですよね。

Rei:じめじめした作品にはしたくなかったし、バキバキのポップソングにすることで初めて昇華されるかなって気持ちもあったので。とにかくメソメソした曲は1曲も入れたくないという気持ちで作りました。

―天国に行くことがどういうことなのか、悲しいことなのか幸福なことなのかもわからないという視点で書かれていますもんね。

Rei:そう。幸せって何かな?みたいな。私は基本的に生命がなくなったら意識もなくなると思っている派で、天国があるとしてもそれはこの世なんじゃないかなって考えなんです。だから曲の後半で「雲から見下ろすCity ”Heaven” どこにいてもそこはHeaven」と歌っている。天使になって見下ろしている今世がそもそも天国で、その人の感じ方次第なんだ、そのことに気づいてよ、って言っています。

―なるほど。それもあって物悲しい曲ではなく、このようにロックな曲調で歌っている。因みにリリースされないこの世に1枚だけのレコードのインストゥルメンタルの曲群は、どういったトーンだったんですか?

Rei:それは現代クラシックとアンビエントを織り交ぜたみたいな感じで。あとキース・ジャレットに『The Melody at Night, With You』というピアノ・アルバムがあって、それは彼が精神的病にかかってピアノの蓋を開くことさえできなくなったときに支えてくれた奥様のために弾いて作った作品なんですけど、そういうイメージでした。

―いつか聴いてみたいですけどね。では、今作の音楽性に関して特にこだわったのはどういうところですか?

Rei:大きな意味でブルーズは意識しました。自分はやっぱりブルーズをやっているミュージシャンだというふうに思っていて。ポップミュージックだったりジャズミュージックだったりルーツミュージックだったりといろいろフュージョンされてはいるけど、精神的にはブルーズをやっている。それはつまり、孤独に寄り添う音楽、人のBLUEに寄り添う音楽を作りたいという気持ちがあるということなんですけど。そのことをもう一度自覚しながら作っていたところがありました。

―人のBLUEに寄り添う音楽。「HEY BLUE with Cory Wong」がまさしくそういう曲で。

Rei:そうですね。

―その「HEY BLUE」。アルバム『QUILT』で2曲コラボレーションして、去年のフジロックを始めライブでも度々共演しているコリー・ウォンをここでもフィーチャーしていますが、彼のことはどんなギタリストだと捉えていますか?

Rei:すごくフレンドリーでダウン・トゥ・アースなんですけど、その一方でカリスマティックなところがあって。

―ニコニコしながら、とんでもないプレイをしますもんね。

Rei:本当にそうなんですよ。やっぱりリズムギターの名手としてこの世界で一目置かれるって、すごいことだと思うんです。さっきのお話じゃないけど、シングルノートでブリブリ弾くギタリストのほうが、どちらかというとギターヒーローとして印象に残りやすいじゃないですか。でもリズムギターであれだけの存在感を出せるというのは並大抵なことじゃない。ピート・タウンゼントとかナイル・ロジャース、日本だと山崎まさよしさんのようにリズムギターの名手と言われるギタリストがいて私も好きですけど、コリー・ウォンも本当に貴重な存在だなと。

―今言ったなかでは、コリー・ウォンはナイル・ロジャースに近いのかもしれませんね。ファンキーなのに泥臭くなくて洗練された音を出す。

Rei:そうだと思います。6月にも彼の豊洲PITでの公演にゲストで出たんですけど、お客さんの熱量がすごいんですよ。東京も大阪もチケットが即完してそれぞれ追加公演もあったんですけど、ギターのインストをやってあれだけ多くの人に求められるんだ、ギター・インストを聴きにくる熱狂的な人がこんなにたくさんいるんだということに希望を感じましたね。

MONJOEとの邂逅、「人生のクロスロード」で見つけたもの

―それから今作『XINGS』では「Heaven」「BLACK&WHITE」「Good Job!」の3曲でMONJOEさんがプログラミングとアレンジを手掛けているのもトピックです。BE:FIRSTからNumber_iまでの作品を手掛けて今を時めく存在である彼とは以前からお知り合いだったんですか?

Rei:確か2018年だったかな、GLIM SPANKYのイベントで彼がDATSで出演したときに対バンしたことがありました。それ以降は会っていなかったんですけど、今回打ち込みとかトラックメイキングで新しい方と一緒にやってみたいという気持ちがあったなかで、彼とコラボレーションしたいと思いまして。

―やってみて、どうでした?

Rei:名うてのミュージシャンやプロデューサーと一緒にやる際、その人の抱えているたくさんの仕事のうちの自分はひとつにすぎないんだなと感じてしまうときがあって、そういうのってやっぱり切ないし士気も下がるんですけど、MONJOEくんはこんなに引く手あまたでありながら私の音楽や姿勢に対してすごくリスペクトを持って密に取り組んでくれて、それが何より嬉しかったです。

それから人によってアレンジの流儀や理念みたいなものがあると思うんですが、私は入っている楽器は全部ちゃんと立たせたいと思っています。例えばお芝居で言うところのエキストラという考え方――賑やかにするために人を入れるみたいなことが好きじゃなくて、サウンドで言うと厚みや華やかさを出すためにラインが聴こえない楽器を重ねるというやり方は私流ではない。入れた全ての楽器の音に意味がある、かさ増し要因的な楽器は必要ない、っていうのが私の考え方で、その点において彼と合致したのも嬉しかったです。

―最後にアルバムのタイトル『XINGS』にはどういう意味を込めたのかを教えてください。

Rei:アメリカではXINGSという道路標識があって、十字路、交差点の意味ですけど、それを用いて”ギターと私が出会う場所”、”古い私と新しい私が出会う場所”、”私とリスナーが出会う場所”を表現したいというのがありました。それともうひとつは、ブルーズにおいてクロスロードというのが象徴的なモチーフだったりするので、その意味も込めて。

―親しい人を亡くして音楽を嫌いになりかけたけど、そこからまた気持ちを新たに音楽に向き合うようになったという話をさっきしてくれましたが、そうした体験も含め、ミュージシャンとして今、人生のクロスロードに立っているといった実感があったのでしょうか?

Rei:確かにそれもあったんでしょうね。今までも真正面からギターに向き合った作品を作ろうと思いつかなかったわけではないんですけど、やるなら今だという気持ちになったのはそれも関係していたかもしれない。あと、機が熟した感じが自分のなかにあって。どうしてもっと前にこれが作れなかったんだろうと考えてみたんですけど、やっぱりいろんな変遷を経てきて、これを作れる自分にようやくなったということだと思うんです。ジョニー・ウィンターとかアルバート・キングとかエリック・クラプトンといったミュージシャンには、聴いたらすぐにこの人だとわかる音がある。自分もそういうふうにシグニチャーサウンドを意識した作り方をずっとやってきたんですけど、今回ようやく自分にしか出せない音の片鱗が見えた気がしています。この作品が次のステージに私を連れていって、違う景色を見せてくれるという手応えがあったし、そういう予感に胸を躍らせています。

Rei
Mini Album 『XINGS』
発売中
再生・購入:https://umj.lnk.to/Rei_XINGS

Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味

『XINGS』(初回限定盤)

Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味

『XINGS』(通常盤)

Reiが語る、人生の変革期にギターと真正面から向き合うことの意味

Rei 10th Anniversary Live 2025 "BLU CROSSROAD"
2025年2月9日(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA
チケット購入:https://eplus.jp/rei/

Rei Release Tour 2024 ”SIX XINGS”
2024年11月1日(金)岡山:YEBISU YA PRO
2024年11月2日(土)静岡:UMBER
2024年11月8日(金)名古屋:JAMMIN
2024年11月10日(日)大阪:味園ユニバース
詳細:https://guitarei.com/gigs/
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