2025年1月から開催されたWurtSの全国ライブハウス2マンツアー「WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅳ」。今回のツアーのテーマは"ENCOUNTERS"、つまり、"出会い"。
全国6カ所9公演それぞれに、WurtSがリスペクトを表明するアーティストが対バン相手として出演。全国を周りながら、yama、Saucy Dog、Chilli Beans.、クリープハイプ、にしな、 [Alexandros]、PEOPLE 1、UNISON SQUARE GARDENとの出会いを重ねてきたWurtSが、最後に迎えた対バン相手が、彼のアーティストとしての人生に絶大な影響を与えたASIAN KUNG-FU GENERATIONだった。この記事では、2月6日、Zepp Hanedaで開催された両者の対バンの模様をレポートしていく。

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先攻はアジカン。コーラスとしてAchico(Ropes)を、キーボーディストとしてGeorge(MOP of HEAD)を迎えた6人編成での出演。オープニングナンバーは「Re:Re:」。おそらく、アジカンをライブハウスで観るのが初めての観客も多かったはずで、それ故か、幕開け早々からフロアの熱気が凄まじかった。信頼のサポートメンバー2人と共に紡ぐバンドアンサンブルは、熱く、豊かな、そして堂々たる響きを放っていて、観客も負けじと懸命に手拍子を重ね、拳を高く突き上げていく。続く「リライト」では、イントロが鳴った瞬間に並々ならぬ歓声が上がり、サビの大合唱を通して会場全体に大いなる一体感と熱き高揚感が満たされていく。これこそが、時代を超えて愛され続けるロックアンセムの力だ。間奏で、後藤正文(Vo・G)は、「WurtS君には、僕たちのツアーにも出て頂いて」と、2023年のアジカンのツアーで共演した時のことを振り返り、感謝を伝えつつ、「今日はどうか最後まで自分らしく楽しんで頂けたら嬉しいです」と呼びかける。そして突入したラストのサビでは、さらに壮大な大合唱が巻き起こり、間髪入れずに「Easter」へと繋ぐ。
この10年間を通して幾度となく披露されてきた「リライト」→ 「Easter」の鉄壁のコンボに、思わず胸が高鳴ったアジカンファンは多かったはず。ロックの王道を衒いなく闊歩していくアジカンの堂々たる勇姿に、歓声が止まない。そして、近年の最新モードを色濃く反映した2曲へ。混迷を極め続ける2020年代において、それでもなお、たおやかに、しなやかに、そして揺るぎなく希望のフィーリングを紡ぎ出していく「You To You」。続く「出町柳パラレルユニバース」では、後藤が〈細い路地の先に君〉という歌詞に合わせてフロアの一人ひとりの観客を指差しながら歌い、瑞々しく躍動するバンドサウンドに合わせて〈君らしく踊ればいいじゃない〉と高らかに呼びかけていく。一人ひとりの観客が、手を振ったり、拳を突き上げたり、それぞれ自由にライブを楽しむ光景がとても美しかった。

WurtS×アジカン、世代を超えて繋がり合ったZepp Hanedaの熱き一夜

ASIAN KUNG-FU GENERATION(Photo by 山川哲矢)

MCパートで後藤は、来年、アジカンはバンド結成30周年を迎えることを告げ、「私、生まれてないって人いますよね」「WurtS君だって、この世には誕生しておらず」と語った上で、バンドを続けていると、こうした世代を超えた出会いがあって、これまで作ってきた楽曲に込めた想いを世代を超えてパスし合うことができる、と語った。「作った時は生まれてなかった人たちと一緒に歌えるなんて思ってなかった」「尊いし、幸せなことだなと思いながら演奏しています。ありがとう」。そう感謝を伝えた後藤は、この世界は決して美しいことばかりではないと前置きした上で、「けど、俺たちは、そういうものを抱えたまま、一緒に歌ったり、踊ったりできる」と、穏やかながらも強い信念を感じさせるトーンで語った。そして、そうした気持ちで作ったという最新曲「ライフ イズ ビューティフル」を披露。〈問おう 今、未来は誰の手の中〉〈歌おう 未だ、未来は僕らの手の中〉未だ見ぬ未来へ向けてまっすぐに放たれる渾身のロックチューンを受け、フロアから次第に拳が突き上がり、熱烈な手拍子が巻き起こっていくシーンは、この日のライブにおける屈指のハイライトの一つだったように思う。
続けて、「ソラニン」「転がる岩、君に朝が降る」へ。アジカンが誇る、年代や世代を超えて愛され続ける代表曲の多さに改めて驚かされる中、いよいよラストナンバー「遥か彼方」へ。原点の一曲に滲む初期衝動を遺憾無く解き放ちながら、パワフルに突き進んでいくアジカン。そして、声や拳を重ねながら彼らに懸命に伴走していく観客たち。熱き一体感に満ちた、あまりにも豪快なフィニッシュだった。

転換の時間では、パープル&イエローのライティングがフロアを照らす中、燦々とした光を放つ天井のミラーボールが、WurtSのステージに向けた期待感を絶えず高めていく。そしていよいよ、後攻のWurtSがステージイン。熱き口火を切ったオープニングナンバーは、「ライフスタイル」だ。WurtSは、優美で絢爛なフィリーソウルを彷彿とさせるサウンドに身を委ね、時おり、しなやかにステップを刻みながら、アジカンのライブパフォーマンスによって既に熱が高まったフロアをさらに容赦なくアジテートしていく。「『「WurtS LIVEHOUSE TOUR』へようこそ!」「羽田まだまだいけますか!」。熱烈な呼びかけから、「Talking Box (Dirty Pop Remix)」へ。瞬く間に巻き起こる熱きハンズクラップ、そして、狂騒のドロップパートへ突入。
WurtSは、自ら高く上げた両手をクラップしたり、何度も「ジャンプ!」と呼びかけながら、会場全体の怒涛の熱狂を鮮やかに指揮していく。曲の終わり、右手の拳を天に向けて力強く突き上げる彼の堂々たる勇姿にとても痺れた。「まだまだ踊れますか!」という呼びかけから「SWAM」へ。この曲では、DJのウサギがフロントへ躍り出て、キレッキレのダンスで魅せていく一幕も。そして、「まだまだもっと体を動かしていきましょう!」というアジテーションから「NERVEs」へ。前半戦にもかかわらず、一切ためらいなく放たれていくフロアアンセムの連打を受け、会場の熱気が際限なく高まっていく怒涛の展開が続く。

WurtS×アジカン、世代を超えて繋がり合ったZepp Hanedaの熱き一夜

WurtS(Photo by takeshi yao)

最初のMCパートで、彼は、アジカンに向けて「本当にめっちゃかっこよかったです」と賛辞と感謝の言葉を送った。そして、今回の2マンツアーのテーマが"ENCOUNTERS"であることを説明し、「"出会い"を大切にしながら、これからも登っていきたい」と決意を表明した上で、昨年10月リリースのアルバム『元気でいてね。』に収録されている"出会い"をテーマとした楽曲「没落天使」を披露してみせた。ロマンチックな響きを放つエモーショナルで直球のロックチューンを受け、さらに会場全体の熱量が高まり、そして、その熱は、「ブルーベリーハニー」「BORDER」へと引き継がれていく。中盤のハイライトを担ったのが、「YOU AND I」。もともと静と動のコントラストが際立つ楽曲ではあるが、ライブでは、暗転+ピンスポットライトなどの照明演出も相まって、さらにドラマチックなテイストに。
〈愛したいし壊したい けど、やっぱなし、 ナシで、ぶっ放す銃 でも触れたい〉という、切実なアンビバレンスを抱えた言葉によりいっそうの力がこもり、また、間奏では、言葉にならない想いを託すように激情的にコードストロークを刻み付けていく。強く心を震わせる、あまりにも感動的な名演だった。

WurtS×アジカン、世代を超えて繋がり合ったZepp Hanedaの熱き一夜

WurtS(Photo by takeshi yao)

2度目のMCパートで、WurtSは、中学生の時に初めて行ったライブが、2015年のアジカンのツアー「Wonder Future」だったと語り、その時、会場の一番奥からアジカンを観ていて、「リライト」を観客みんなと一緒に歌っている光景に感銘を受け、その時の体験がその後の自身の活動に繋がっていると振り返った。今回、こうして対バンが実現したことについて深い感慨を伝えつつ、「いざ立ってみると、あぁ(ステージから)こう見えたんだって、グッときました」「ありがとうございます」と胸の内の想いを丁寧に語った。そして、「ここからロックな曲続くけど、皆さんついてこれますか?」という呼びかけから、いよいよライブは終盤戦へ。「地底人」では、アジカンに負けじとロックバイブス全開で突き進みながらフロアの熱狂を牽引し(DJのウサギは何度もヘドバンを繰り返していた)、「ソウルズ」では、〈叫ぼうぜマイソウル〉と観客に歌声を求め、そして観客の歌声を自らのエネルギーに換えるようにして全身全霊の歌を響かせていく。ステージとフロアの熱き応酬は、その後の「ユートピア」「NOISE」でさらなる気迫を増していき、激烈な轟音にまみれながら豪快にロールしていく「ふたり計画」をもって、この日の本編は熱く締め括られた。

WurtS×アジカン、世代を超えて繋がり合ったZepp Hanedaの熱き一夜

WurtS(Photo by takeshi yao)

アンコールでは、「アジカンさんのファンもいるということで」と告げた上で、アジカンの曲のカバーを披露することを伝えた。当日の朝までどの曲をカバーするか悩んだ末、彼が選んだのは、「或る街の群青」だった。「アジカンさんが披露するのが一番かっこいいと思うんですよ」と前置きをしつつ、「僕なりに披露していいですか?」と呼びかけ、アコースティックギターの弾き語りで同曲のカバーへ。ブリッジミュートと大らかなコードストロークが交互に展開していく緩急の効いたアレンジが光っていて、何より、この曲に込められた蒼く切実な衝動がありありと伝わってきた。アジカンへの深い愛とリスペクト、理解に基づく、とても素晴らしいカバーだったと思う。
ラストは、誰もが待ち望んでいたであろうライブアンセム「分かってないよ」。会場を上手と下手の2つに分けて行った大合唱合戦では、「アジカンが好き、WurtSが好きなみんななら、もっとできるって信じてます!」「もっといくよ!」「アジカンさんのために、もうちょっと!」と何度も歌声を求めていく。最後は、会場全体が明るく照らし出される中、この日一番の壮大な大合唱が轟き、アジカンとの対バン、および、今回のツアーは熱烈な大団円を迎えた。このツアーを通した9組のアーティストとの"出会い"は、間違いなく、今後のWurtSの活動に大きなフィードバックを与えていくはず。まだ幕を開けたばかりの2025年、今後の彼の次のアクションに注目と期待をし続けていきたい。

セットリスト
ASIAN KUNG-FU GENERATION
1. Re:Re:
2. リライト
3. Easter / 復活祭
4. You To You
5. 出町柳パラレルユニバース
6. ライフ イズ ビューティフル
7. ソラニン
8. 転がる岩、君に朝が降る
9. 遥か彼方

WurtS
1. ライフスタイル
2. Talking Box (Dirty Pop Remix)
3. SWAM
4. NERVEs
5. 没落天使
6. ブルーベリーハニー
7. BORDER
8. YOU AND I
9. 地底人
10. ソウルズ
11. ユートピア
12. NOISE
13. ふたり計画
EN1. 或る街の群青(ASIAN KUNG-FU GENERATION弾き語りカバー)
EN2. 分かってないよ

<ライブ情報>

Vポイント presents ツタロックフェス2025
2025年3月22日(土)23日(日)幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
主催:CCCミュージックラボ(株)/ライブマスターズ(株)
企画:CCCミュージックラボ(株)
制作:ライブマスターズ(株)
運営:(株)ディスクガレージ
特別協賛:CCCMKホールディングス(株)/ 三井住友カード株式会社
問い合わせ:info@livemasters.jp

【3月22日(土)DAY1】
indigo la End / オレンジスパイニクラブ / KANA-BOON / カネヨリマサル / CLAN QUEEN / Kroi
KOTORI / Chevon / SHISHAMO / トンボコープ / NEE / にしな / ブランデー戦記 / マルシィ / ヤングスキニー / WurtS

【3月23日(日)DAY2】
アルステイク / シンガーズハイ / SKRYU / Chilli Beans. / This is LAST / TETORA / Novelbright /
ハルカミライ / Hump Back / ハンブレッダーズ / FOMARE / プッシュプルポット / bokula. / moon drop / reGretGirl / レトロリロン / ガラクタ(Opening Act)

最終先着先行
【2月8日(土)10時~】
専用URL:https://eplus.jp/tsutarockfes/
1DAY券各日 U-18:9,300円(税込)/一般:11,800円(税込)
2DAYS券一般:22,000円(税込)
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