「明星食品という社名なので、光り輝かないと明星食品ではないと考えている」。4月1日付で社長に就任した豊留昭浩氏。
日清食品でマーケティング部長や営業企画部長を歴任した後、日清シスコの社長を務めるという異色の経歴を持つ。経営方針として掲げた「収益力強化」「独自性強化」「組織力強化」を進めつつ、明星食品をどのように輝かせるか。新社長の手腕が注目される。

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4月1日の社長就任後、まず社員に言ったことは「明星らしさを磨き、キラリ☆と光り輝かせる」ということ。明星食品のスローガンは「おいしさ、キラリ☆」。非常に良いスローガンだと思っている。明星食品という社名なので、光り輝かないと明星食品ではないと考えている。

そのための一つ目が「不易流行」の実践だ。「不易流行」はわたしが仕事をするうえで座右の銘としている言葉。不易とは不変のことで、変わることのない本質的なものを忘れないなかにも新しい流行・変化をどんどん取り入れていくということ。それがいずれ不易、本質的なものになっていくという考え方だ。名門企業、ロングセラーブランドというのはこの繰り返しなのだろうと思う。
明星食品も長い歴史がある。先人たちの「既存の知」、現従業員の「新しい知」、これにわたしが日清食品、海外、菓子事業で経験してきた「多様な知」を掛け合わせることでイノベーションを起こし、新しい明星食品の歴史を作りたいと考えている。

二つ目が「打倒!日清食品が原動力」。少し強い言葉だが、グループに入ってからの明星食品は少し遠慮しているのではないか。社員を鼓舞し、モチベーションアップを図っていくために伝えたメッセージだ。明星食品には70年を超える伝統とブランドの歴史がある。創業以来、日清食品とはライバルとして鎬を削ってきた関係だ。同じグループではあるが、日清食品とは全く異なるDNAがあり、日清食品とは、麺を作る発想、商品を作る考え方が違う。だから面白い。異なる戦略で補完し合い、切磋琢磨して競い合う。明星食品が元気であれば、日清食品にも良い刺激となり、両社が活性化すると考えている。「きょうそう」は漢字で書くと異なる意味が二つある。
一つはCo-creation(共創)。日清食品ホールディングスがハブとなり、生産、資材、物流、安全研究、人事、総務、財務などの管理部門は、日清食品、明星食品が共に創り上げていく、協力し合うものと考えている。もう一つはCompetition(競争)。マーケティング、製品開発、営業。これはまったく別活動で、お互いに市場で競い合う関係の「競争」。この二つの「きょうそう」を行っていきたい。

三つ目の「共感・共生・共創カンパニー」、これはこれからの明星食品が目指す姿。明星食品は「もっと美味しく、もっと便利に、もっと楽しく」を創造していく。コロナ禍でライフスタイルや価値観、お客さまのニーズも多様化している。お客さまの生活を見つめ、お客さまの気持ちに共感した商品を作り、お客さまに共感していただけるようなことをしていきたい。また、サステナビリティ企業を目指し、CSV経営を実行していく。特に環境、健康、働き方の分野に注力し、地球、地域社会、お客さま、お取引先さま、従業員との共生・共創を図っていきたい。


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豊留昭浩(とよとめ・あきひろ)氏=1960年8月16日生まれ、60歳。兵庫県出身。関西大学商学部卒業後、83年4月に日清食品(現・日清食品ホールディングス)入社。日清食品(中国)投資有限公司マーケティング部長(02年4月)、日清食品マーケティング部長(08年6月)、取締役マーケティング部長(08年10月)、取締役営業企画部長(13年4月)、日清シスコ代表取締役社長(15年4月)、日清食品ホールディングス執行役員兼日清シスコ社長兼湖池屋取締役(17年9月)を経て、今年4月1日から現職(日清食品ホールディングス執行役員兼明星食品社長兼湖池屋非常勤取締役)
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