トライアルホールディングスは、7月1日付で西友を完全子会社化し、売上高1.2兆円超の巨大な小売グループが誕生した。両社は新たな価値を提供するため協業を加速させ、今秋をメドに西友のプライベートブランド(PB)「みなさまのお墨付き」などをトライアルの店舗に導入、年内にも関東で小型店舗「TRIAL GO」を集中出店、製造・物流拠点の最適化による生産性向上、トライアルによるリテールメディアのエリア拡大などを順次展開する。


■西友新社長に楢木野氏

7月2日に都内で記者会見を開催。両社統合によるビジョンを「買い物を面白く、暮らしを豊かに。」とし、スローガンに「STAND TOGETHER」を掲げた。後者を考案したトライアルHDの永田洋幸社長は「西友とトライアルの頭文字をとった。『ともに立ち向かっていこう』との想いを込めている。流通情報革命を一緒に進めていきたい」とした。

統合に伴い、西友は経営体制を一新。新社長はトライアルカンパニー会長の楢木野仁司氏が担い、会長にトライアルHD社長の永田氏、副会長に西友前社長の大久保恒夫氏が就いた。

大久保氏は「西友にとってITやマーケティングに長けたトライアルは最適の組み合わせ。近年われわれが取り組んできた商品力と販売力の強化を一段と加速できる」と期待を寄せた。

■全国のCK・PC最適化で生産性向上

当面の事業方針は西友の楢木野社長が説明。PBや総菜など商品の相互展開を計画しており、まずは秋口から同社の「みなさまのお墨付き」を全国のトライアル店舗に導入する。「非常に多くの方に支持され認知度も高いPB。
供給先のメーカーとはこれから増産に向けた協議を始める」。

「TRIAL GO」はこれまで九州で実験的に展開してきたが、今後は関東の都市部で西友の既存店を母体にドミナント出店する。店舗間の連携を活かしたできたて総菜の提供、サイネージを活用した販促、IT活用によるオペレーションの省人化も推進。「都市部の知見が豊富な西友と一緒になることで、トライアルがこれまで苦手だった小型店の出店を実現していける」(楢木野社長)。

一方、両社合計で全国にセントラルキッチン11施設、プロセスセンター10施設、物流センター50施設を有する。相互活用による生産性の向上を検討しており、例えば関西でトライアルのセントラルキッチンが供給タイトな場合、西友で余力のある京都や岐阜のセントラルキッチンでカバーするなどの案があるという。

リテールメディアの展開はトライアルグループでRetail AI社の代表取締役を兼務する永田社長が説明。「われわれが考えるリテールメディアは店舗内でIoTデバイスを活用したOne‐to‐Oneマーケティング。従来のマス広告ではなく、買い物中のお客様に商品の魅力を直接伝えたりしている」と述べ、大手ビールメーカーとの共同施策では定番品の販売が前週比1.5倍になった事例を紹介。「将来的に西友が強みを持つ関東エリアや中部エリアへの展開を加速させたい」と展望した。
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