「芸人です」
 そう法廷で述べた人物は、1年8か月前までお茶の間に笑いを届けていた。

 不同意性交などの罪で起訴されている、お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバーの斉藤慎二被告(43)。
6月2日の第5回公判から、弁護側立証に移行する方針だと分かった。進展を前に、これまで明らかになった証言を振り返る——。

初公判で全面否認「同意があったと思っていた」

「唇や歯で防ごうと」「それでも舌がねじ込まれ…」 元ジャンポ...の画像はこちら >>
「私の行為にAさんが同意してくれていると思っていました」

 この言葉ではじまった裁判。斉藤被告はやや重い声になりつつ、はっきりとした口調で起訴内容を否認した。事前に文言を考えていたのだろう、供述に淀みがなかった。

 起訴状によると、斉藤被告は2回にわたって、ロケバスの車内で共演者だったAさん(20代)にキスなどをし、さらに口腔性交としたとされる。

 この裁判では、初公判を前に非公開で争点などを整理する「公判前整理手続」が行われていた。この手続きで争点は、①起訴内容の犯行があったのか否か、②斉藤被告はAさんが同意していないことの認識(故意)があったか否か、の2点に絞り込まれている。

弁護側も口腔性交があったことを認めている

 弁護側の主張は一部の犯行を全面的に否認しているが、Aさんとのキスや口腔性交があったことは概ね認めている。

「斉藤さんは、Aさんが自分に好意を持ってくれていると思い、キスをしました。『嬉しいです』と言っていたのでAさんは受け入れていると思いました」(弁護側冒頭陳述・要約)

 さらに前代未聞の口腔性交については、このように弁解している。

「最後の撮影が終わった後、ロケバスで着替えをしているとAさんが入ってきました。もう少し自分と一緒にいたいのだろうと考えました。Aさんに自分の臀部を見せると、笑ったような表情をしました。
この後、口腔性交が行われました。故意はありませんでした」(同上)

検察側は真っ向反論「拒絶できない状況だった」

 一方の検察側は、冒頭陳述でAさんの供述などを引用して、犯行を指摘した。

「Aさんは被告からのキスを両手で押して抵抗したり、『やめてください』と言っていた。さらに、Aさんが斉藤被告からの突然の性的行為に恐怖や驚愕を覚えたうえ、ロケ中だったため時間に余裕がなかったことや、斉藤被告の芸能界での影響力から行為を断ると自身の不利益になると考え、同意しない意思を表明することが困難な状況にあった。それも斉藤被告は認識していた」(検察側冒頭陳述・要約)

 今年3月から3回にわたって、上記を立証するために関係者の証人尋問が行われた。特に、被害者本人であるAさんの証言は、犯行の存在を裏づけるようなものばかりだった……。

被害女性が法廷で証言した“恐怖のディープキス”

「唇や歯で防ごうと」「それでも舌がねじ込まれ…」 元ジャンポケ斉藤裁判、被害女性が語った“恐怖のディープキス”
初公判時の東京地裁前。289人の傍聴希望者がわずか20席の傍聴席を求めて列ができていた
 別室から映像のみで出廷したAさん。斉藤被告と初めて対面したときの印象について、「すごく気さくな方だなと思っていました」と回顧した。ロケバスの中で二人は、仲睦まじく雑談していたという。「本当に肌きれいだね」、そう褒めてきた斉藤被告はAさんの頬を掴んだ。

「頬を掴んできてキスをされました」

「本当に驚きました。ロケバスでキスをしてくるなんて、この人異常じゃないかと思ってすごく怖くなりました」と振り返るAさん。斉藤被告は「つい可愛くてさ、ごめんね」と謝罪するも、さらに性的行為に及んだ。

「さらに斉藤からディープキスをされて胸を触られました」

 ロケバスという密室の犯行。
Aさんは拒否する姿勢を示したという。

「唇や歯で(斉藤被告の)舌が侵入してこないようにしたんですが、それでも舌がねじ込まれてしまいました」

 Aさんは、この性的行為を「ディープキス」だと表現するほどに濃密だったようだ。

2度目の被害証言では「屈辱的だった」という怒りも

 その後も撮影をこなし、3店舗に向かうロケバスのことだった。ふたたびAさんは襲われたというのが、検察側の見立てである。

「斉藤と雑談をしていたら、斉藤が身を乗り出すようにディープキスをしてきました」

 Aさんによると、斉藤被告の肩を押して抵抗はしたという。すると、斉藤被告は照れるような口調でこう言ってきたという。

「『かわいくて、俺ってダメだね』と言ってきました。その口調は腹立たしくて屈辱的でした……」

ロケ終了後に起きた“口腔性交”とPTSD発症の訴え

「唇や歯で防ごうと」「それでも舌がねじ込まれ…」 元ジャンポケ斉藤裁判、被害女性が語った“恐怖のディープキス”
斉藤被告を乗せたと思われる車が東京地裁に入っていく様子 2026年5月13日/筆者撮影
 その後、最後の撮影も無事に終わった。「やっと解放される」と安堵したAさんに、ふたたび斉藤被告は牙をむいたとされる。

「ピンマイクを外すためにロケバスで待機するように言われました」

 Aさんは「勝手な行動をすると迷惑がかかる」と考えて、斉藤被告が車内で着替えをしているロケバスに戻った。斉藤被告は「今日はこんな可愛い人に出会えて幸せだった」と伝えてすぐに、自身の陰部をAさんの面前で露出した。そして、前代未聞の「口腔性交」が行われたのだ。

「PTSD(心的外傷後ストレス症)を発症しました。日常的に(事件が)フラッシュバックしたり、関連する物や道に近づけなくなりました」

 斉藤被告側は、「口腔性交」自体は認めている。
「反省すべき点があった」として、斉藤被告はAさんに示談を申し込んだ。示談では、斉藤被告の芸能界復帰の承諾も求められた。

「初公判の態度であったり、反省していないことと罪を認めていない態度から示談は受け入れられません」

ADとディレクター証言が示した当日の状況

 Aさんは法廷で一貫して「抵抗していた」と述べている。この証言は信用できるのか。検察側は外堀をうめるように、番組ADとディレクターの証人請求をした。

 検察側は、性的行為を拒否できなかった理由に「権力構造」も指摘している。番組ディレクターは、斉藤被告は「人気者」だとする一方、Aさんは「SNSで活躍する一般の方」と明言している。

 番組ADは、Aさんの当時着ていた服装を考慮して、ロケバスでピンマイクを外すように求めた際のことを振り返った。

「Aさんは、『私はここでいいです(筆者注:ロケバスの外でいい)』と遠慮するような反応をされました」

 Aさんは一度、ロケバスへの乗車を拒否していたのだ。一方で、両者ともに「Aさんの様子はおかしくなかった」と弁護側に有利な証言もしている。

6月2日から弁護側立証へ

「唇や歯で防ごうと」「それでも舌がねじ込まれ…」 元ジャンポケ斉藤裁判、被害女性が語った“恐怖のディープキス”
事件発覚後、斉藤被告が所属していた「吉本興業」は契約解除の声明を出していた(同社HPより)
 初公判から3か月。関係者によると、「6月2日の公判から弁護側立証に入る方針だ」という。

 否認事件では通常、弁護側立証として被告人質問や証人尋問が行われる。初公判で弁護側は、「斉藤さんに芸能人としての影響力はあったのか、証人の証言や被告人質問を聞いて判断してください」と、斉藤被告の芸能人生で掴み取った「栄光」と矛盾する発言をした。


ドライブレコーダーの映像は存在するのか

 ロケバスでの白昼の性犯罪。事件後、SNS上では「ロケバスのドラレコはないのか」と疑問を呈す投稿が多かった。

 しかし現在までに、ロケバスのドラレコ映像は証拠提出されていない。というのも、裁判で弁護側は「運転席の境目にはカーテンがありましたね。カーテンの向こう側は見えない」と言及している。

 特に、口腔性交が行われたのは斉藤被告の着替え中だ。なおさら、カーテンは閉められていたはずであり、仮にドラレコ映像があっても直接的な証明はできなさそうである。

 6月2日、注目の裁判は進展を迎える。早速、斉藤被告の口から事件が語られるかもしれない——。

文/学生傍聴人

【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。趣味は御神輿を担ぐこと。
高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。
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