50代を過ぎてから、あえて自分の見た目や生き方にお金をかける男たちがいる。全身脱毛や美肌治療で若々しさを取り戻した65歳男性、55歳でタトゥーを入れたことを機に人生観まで変わった59歳男性――。
一見ムダ遣いにも見える出費が、自己肯定感や行動力を引き出し、老後の幸福度を押し上げていた。中年男性たちの“前向きな散財”の効能に迫る。

60歳にして“プチ美容整形”にハマる

55歳で「はじめてのタトゥー」を入れた59歳美容師が、見た目...の画像はこちら >>
健康維持のために50代から体を鍛える人は少なくないが、さらに美容医療に目覚めて大金を費やす中年男性もいる。

「50歳ぐらいのときに、首周りのイボをレーザー治療で除去してから、美容に対する意識が芽生えて、60歳記念で脱毛を始めました。初めはヒゲを剃るのが面倒くさいという理由で顔周りだけやったんですけど、この先、要介護状態になったときに醜い体を妻や娘にさらしたくないと思って、全身脱毛したんです」

こう話すのは千葉県で会社を経営する木下安吾さん(仮名・65歳)だ。60歳から“プチ美容整形”にハマり、150万円以上費やしてきたとか。

「私が行っている脱毛サロンは一回4万円なのですが、レーザーが白髪には反応しないので、15回以上通い続けてつるつるにしてもらいました。もう、陰部周りもお尻の穴周辺、玉袋の裏側までつるつるです(笑)。それで毛がなくなると、今まで毛の下に隠れていたシミやくすみが気になりだして……特殊な光を照射してシミやホクロ、小じわまで消してくれる美肌治療のフォトフェイシャルにも挑戦するようになったのです。

私が通っている美容サロンは、フォトフェイシャルが一回2万円程度なのですが、もう40回以上通っていて、顔はもとより全身のシミ、くすみがなくなりました。照射する光の熱が真皮層にも届いて肌にハリを与えて、きめ細かくしてくれるので、最近は誰に会っても『若い!』と驚かれる」

「美容医療について娘と話をする機会も増えた」

55歳で「はじめてのタトゥー」を入れた59歳美容師が、見た目はいかつくなっても「昔より低姿勢になった」深いワケ
木下さんは千葉県で会社を経営。50歳頃に首周りのイボをレーザー治療で取ったことで、美容意識が高まり、全身脱毛、フォトフェイシャルにも取り組むように
木下さんが“目覚めた”背景には、娘の影響もある。

「一番下の娘は私が40代後半で生まれた子供なんです。その同級生の親は、だいたい私よりも10歳以上年下なので、以前から『もっと自分が若かったら……』と歯がゆく感じていました。その意識が、いつしか娘の同級生のパパに負けたくないという気持ちに変わった。
ジジくさい親父だと思われたくない、と。結果的に、美容医療はいいことずくめでした。自信を持って娘と2人でお出かけできるようになったし、美容医療について娘と話をする機会も増えた」

つやつやの肌を取り戻したことで意識も変わったという。

「もっと綺麗に見られたいという意識から、服にも気を使うようになったし、体形維持にも努めるようになりました。毎日1万歩は歩くようになり、登山を楽しむようになった。おかげで、健康診断で引っかかることはなくなったし、女性からの評判はうなぎ上り。『どこで美肌治療してるのか教えて』と言われるので、私よりもサロンの評価が上がっている気がするけど(苦笑)」

55歳でタトゥーを入れてみたら人に優しくなった

55歳で「はじめてのタトゥー」を入れた59歳美容師が、見た目はいかつくなっても「昔より低姿勢になった」深いワケ
55歳で初めてタトゥーを入れたShigeさん(59歳)
科学の力で若々しさを取り戻す人がいれば、彫り物に目覚めて少々いかつい見た目に生まれ変わる中年男性もいる。

「初めてタトゥーを入れたのは55歳のとき。昔からアウトローな雰囲気に、漠然とした憧れがあったんですけど、子供とプールや温泉に行けなくなるのは嫌だなと思って、ずっと見送っていたんです」

こう話すのは、東京・世田谷区で美容院を経営するShigeさん(59歳)だ。その両腕には十字架やドクロ柄のタトゥーがいくつも彫られている。いかにもヤンチャな見た目だが、実際には堅実派だ。

「僕が55歳のときに一番下の娘が20歳になったので、もう子育ても卒業だなと思ってタトゥーを入れたんです。でも、半分勢いで入れたので、最初に彫ったのは自分の美容院の店名です(笑)。
以前から80歳まで美容師として働きたいと考えてきたので、『簡単に店を閉じないぞ!』という意思表示の意も込めて。ただ、80歳まで働き続けるのが簡単ではないことはよくわかってる。

だから、54歳のときに介護施設でアルバイトを始めて、2年ほど前に介護士の資格を取得しました。現在はグループホームで週1回、介護士として働きながら入居者のケアをしたり、髪を切ってあげたりしています。当然、タトゥーは隠した状態で……」

その後、気の向くまま彫り物を増やしていったShigeさんだが、右肩に入った「一蓮托生」のタトゥーだけは特別な意味があるという。

「離婚や娘のうつ病が重なって、家族がバラバラになりかけたときがあったんです。結果的に、心を病んでしまった娘をみんなで支えて、元どおりになった。そのときに彫ってもらったものです」
 

40万円以上の満足感がある

55歳で「はじめてのタトゥー」を入れた59歳美容師が、見た目はいかつくなっても「昔より低姿勢になった」深いワケ
Shigeさんは高校を中退して美容師の道へ。東京・経堂で美容室を経営し今年で26年目。YouTube「shigeちゃんのTake it easyな日常」も運営
55歳から4年間でタトゥーに費やしたお金は40万円以上。Shigeさんは、その金額以上の満足感があると話す。

「最初は『格好いい彫り物をした』という自己満足でしかなかったのですが、だんだん『タトゥーを愛する人に迷惑をかけてはならない』という妙な使命感が芽生えて、昔よりも低姿勢になりました(笑)。介護士の資格を取った影響もあるかもしれませんが、人に優しくしようという気持ちが強くなった。

あとは、格好悪い爺さんになりたくないという気持ちが強くなったので、体形維持には気をつけています。
おかげで、年配のお客さんからも『彫師を紹介してほしい』と言われるようになりました。50代でタトゥーを入れるなんてバカだなと思う人も多いだろうけど、一度入れてしまったら簡単には消せない分、間違いなく何かを変えるきっかけにはなる」

高齢者専門の精神科医として35年以上活躍する和田秀樹氏は、「好きなことをやることで幸福度は確実に高まる」と話す。

「年を取ったら髪の毛が薄くなる人もいますが、プチ整形もタトゥーを入れることも自ら変化を楽しむ行為。その前向きな行動は新たな価値観と自己肯定感をもたらし、豊かな老後に繫がるでしょう」

【精神科医 和田秀樹氏】
東大医学部卒。東大医学部附属病院などを経て、和田秀樹こころと体のクリニック開設。幸齢党党首。『80歳の壁』など著書多数
55歳で「はじめてのタトゥー」を入れた59歳美容師が、見た目はいかつくなっても「昔より低姿勢になった」深いワケ
精神科医の和田秀樹氏
※2026年6月2日・9日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[50代からの[幸せ散財]革命]―
編集部おすすめ