阪神・佐藤輝明を巡り、メジャー球団の関心が改めて注目を集めている。
 米紙「ニューヨーク・ポスト」のジョン・ヘイマン記者によれば、メッツが佐藤を獲得候補として調査しているという。
さらにヤンキース、ドジャース、フィリーズも関心を示していると報じられた。

 佐藤は以前から将来的なメジャー挑戦の意向を示しており、今オフにもポスティングシステムを利用して海を渡る可能性が取り沙汰されている。もちろん、現時点で移籍が決まったわけではないが、現地では早くも守備位置を巡る話まで出始めている。

日米で異なる「三塁守備の評価」

 そのなかで目を引くのが、佐藤の三塁守備に対する評価だ。
 ニューヨーク・ポストの記事では、米球界のあるスカウトが佐藤について「good pop(長打力がある)」と打撃を評価する一方、三塁守備については「questionable(疑問がある)」と指摘。メッツが獲得した場合は、一塁へコンバートされる可能性が高いとの見方も紹介されている。

 だが、日本での評価を知るファンなら、少し引っかかるところではないか。

 佐藤は昨季、三塁手として自身初のゴールデングラブ賞を受賞。記者投票では220票を集め、2位の宮﨑敏郎(DeNA)に200票以上の大差をつけている。さらにデータ分析会社DELTAが選ぶ「フィールディング・アワード2025」では、両リーグを通じて三塁手部門1位となった。

 つまり、昨季の佐藤は打つだけの選手ではなく、三塁守備でも日本球界トップクラスの評価を得ていたのである。

 とはいえ、ゴールデングラブ賞を受賞したからといって、守備に対する評価が不動になるわけではない。今季は失策も目立ち、現地では別の物差しで評価されている可能性も十分あるだろう。


 それにしても、日本で守備を高く評価された佐藤に対して、海の向こうでは一塁への転向案まで出ているのだから面白い。

 しかも佐藤は、これまで一軍公式戦で一塁を守った経験がない。外野なら経験があるが、仮にメッツで一塁を任されれば、プロでは未知のポジションに挑むことになる。

守備への懸念を補って余りある「NPB最高峰」の圧倒的な打撃力

 それでもメッツだけでなく、複数の強豪球団から名前が挙がる。

 その理由はシンプルだ。佐藤には、それを補って余りあるバットがあるからだ。

 8月16日終了時点で106試合に出場し、打率.315、28本塁打、78打点、OPS1.021。本塁打王争いではトップを射程圏に捉え、OPSは12球団の規定打席到達者で唯一1.000を超えている。

 昨季も40本塁打、102打点で二冠王に輝き、セ・リーグMVPを受賞した。今や単なる「長距離砲」という評価には収まらない。NPB最高峰の打者として、MLB球団から本格的に値踏みされる立場になったということだろう。

村上宗隆と岡本和真の存在は追い風に?

 そこに追い風となりそうなのが、ひと足先に海を渡った村上宗隆と岡本和真の存在だ。

 今季メジャーデビューした2人は、ともに打線の中軸を担っている。村上は日本時代の主戦場だった三塁から一塁へ移り、一方の岡本は三塁を中心にプレー。
同じ日本人の強打者でも、MLBでの居場所はそれぞれ違う。

 米メディア「Dodgers Way」も、村上と岡本の成功を、今オフに佐藤を巡る活発な市場が形成されそうな理由の一つに挙げている。

 もちろん、2人が活躍したから佐藤も成功する、という単純な話ではない。ただ、日本球界を代表する強打者がそろって結果を残していることが、佐藤を見る側の安心材料になっているとしても不思議ではない。

外野にも強力なライバルが…ドジャースで見えない佐藤の居場所

 そして、4球団の中でも日本のファンが気になる名前といえば、やはりドジャースではないか。

 ドジャースは以前から佐藤に関心を示す球団の一つと報じられており、今回も候補に名を連ねた。だが実際に加入するとなれば、まず考えなければならないのが守備位置である。

 現在、佐藤の本職である三塁を守るのはマックス・マンシーだ。

 マンシーは今季、大谷翔平に次ぐチーム2位の本塁打を記録。契約も2027年まで残っている。現状を考えれば、佐藤を獲得したからといって、すぐにマンシーから定位置を奪うという話にはなりそうもない。

 では外野ならどうか。

 こちらは佐藤に経験がある。
阪神では三塁を主戦場としながら、ライトやレフトも守ってきた。日本でも、もしドジャース入りした場合は外野へ回る可能性を指摘する報道が出ている。

 もっとも、ドジャースほどのチームになると話はそう簡単ではない。

「Dodgers Way」も、マンシーが2027年まで契約下にあることに加え、外野の両翼にもテオスカー・ヘルナンデスやカイル・タッカーがいるため、佐藤がすんなり収まる場所は見えにくいと指摘している。

 実際、海外のファンコミュニティーでも「三塁は十分に守れる」「レフトやライトもできる」といった声がある一方、マンシーら既存戦力との兼ね合いから、ドジャースとの相性を疑問視する意見も見られた。

 一方で、一塁への転向を予想する米報道に対しては「(NPBで)一塁を守っていない」と疑問を投げかけるファンもいた。

守備位置が議論されることこそ期待値の高さの証拠か

 もちろん、これはあくまでファンの声だ。それでも、獲得報道が出た途端に「欲しい」「いらない」だけではなく、「どこを守らせるのか」という議論が起きるあたりが、佐藤の面白いところでもある。

 メッツでは、経験のない一塁への転向案が浮上する。ドジャースなら、本職の三塁には好調なマンシーがおり、経験のある外野にもライバルがいる。

 こうして見ると、米球界のスカウトから三塁守備に「疑問符」をつけられたことだけを取り上げて、佐藤の評価が低いと考えるのは早計だろう。

 むしろ複数球団から関心を寄せられ、加入後のポジションまで話題になっているのは、それだけ打者として無視できない存在になった証しとも取れる。


 昨季は日本で打撃二冠とMVP、さらにゴールデングラブ賞まで手にした佐藤。村上、岡本に続いて本当に海を渡ることになるのか。そして、そのとき彼はどこのユニホームを着て、どこを守っているのだろうか。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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