国際派女優として知られ、エッセイストとしても活躍した岸惠子さんが7日、横浜市内の自宅で老衰のため死去した。93歳だった。

所属事務所が19日、公式サイトで発表した。

 岸さんが主演した映画「かあちゃん」(2001年、市川崑監督)で共演した俳優の原田龍二はこの日、スポーツ報知の電話取材に応じ「優しくしてくださって、ありがとうございますの言葉に尽きます」と追悼。岸さんとの撮影を振り返った。

 岸さんとは、同作の撮影を通じて出会った。原田は「特別な演技におけるアドバイス、プライベートな話は一切されなかったですね。それだけお芝居に集中されていたからだと思います。主演ですし、大家族のおさの役。さらに、市川崑監督は妥協を許さない。岸さんも緊張なされていたと思う」と振り返った。

 撮影は寒さが厳しい2月の京都で行われた。物語の舞台は江戸時代。主役の岸さんが演じたのは貧乏長屋の母親役だった。

「2月の京都は本当に寒くてですね、中にも着込めない。どうしてもピリピリしがちですけど、岸さんはいつもゆったりとした優雅な感じ。みすぼらしい着物のお衣装でしたが、エレガントさは漂っていましたね。しゃべり方がゆっくりですよね。心にゆとりがあるのが、声からも分かった」。役者としての凜とした、たたずまいに感銘を受けたことを明かした。

 原田が演じたのは泥棒。役柄もあって、撮影の合間は一人でいることが多かったが、岸さんがさりげなく支えてくれたという。「僕の心情を察してくださって『こっちいらっしゃいよ』って輪の中にいざなってくださった。僕にとっては優しかった」と感謝した。

 主役として緊張感を持ちながら挑む岸さんの姿に、とにかく圧倒された。「市川監督は岸さんのことを『惠子ちゃん』とか、『惠子さん』とか。

慣れ親しんだ呼び方をされていた記憶があります。でも、いざお芝居が始まると、主役の責任感でしょうね。さらに京都の時代劇ということで、ひと味違うスイッチを入れる。そんな仕事の姿勢を感じました」。完成した作品を見ても、その存在感は特別に感じられた。「市川監督の作品は画質のトーンが暗めですが、岸さんは暗めの中でも輝いている。主役の華、存在感の重みだと思います」と語った。

 岸さんは同作で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた。その裏には、厳しい環境の中でも心にゆとりを持つ人間性、周囲への気配り、真剣に作品と向き合う姿勢があったようだ。

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