「ありがとう」と感謝していた相手が、数日後には一番会いたくない敵になってしまった——。
 いまの阪神ファンにとって、DeNAはまさにそんな存在だ。
阪神は9月15日の中日戦に敗れ、泥沼の7連敗。それでも首位を守り、優勝マジックまで減らしたのだから、何とも奇妙な状況である。

DeNAが巨人を3タテで阪神のマジックが減少

 そんな皮肉を生んでいるのが他でもないDeNAだ。13日からの巨人3連戦をすべて制し、0.5ゲーム差まで阪神に迫っていた2位巨人を足止めした。阪神にとっては願ってもない3連勝だった。
 SNSでは「今日も負けたのに、DeNAさんのおかげでマジックがまた減った」と感謝する虎党も現れた。だが、喜んでばかりもいられない。巨人を叩いてくれたDeNAが、さすがに勝ちすぎているのである。

 DeNAは9月に入って10勝2敗。9日から7連勝中で、この7試合では52得点、11失点と相手を圧倒している。

上位2球団を直接叩くDeNAの「異次元の勢い」

 しかも9月の阪神、巨人との対戦では6勝1敗。下位球団から白星を稼いでいるだけではなく、上位2球団を直接叩きながら浮上してきた。直近の巨人3連戦だけでも22得点5失点。最後は13-2の大差をつけ、阪神を追う巨人を完膚なきまでに叩きのめした。


 阪神と巨人のファンにとって、いまのDeNAは脅威だろう。ただ、弱気になる理由はDeNAが強いからだけではない。自分たちのチームにも、不安材料があまりに多いからだ。

 阪神は7連敗中。いくら首位とはいえ、9月中旬にここまで白星から遠ざかれば、10月の短期決戦まで楽観できるファンは多くないだろう。

 また、巨人は事情が少し違う。阪神が足踏みする間に首位を射程圏に捉え、首位浮上が見えてきた。ところが、そこで待っていたDeNAに3連敗。せっかく目の前まで来た首位を奪えないどころか、CSで再戦する可能性のある相手に3日続けて敗れた。

 しかも最終戦は13失点。巨人ファンからすれば、これだけ叩かれた相手と「10月にまたやるのか」と考えたくもなるだろう。

「ありがとう」が恐怖に…残り5度の直接対決が阪神を待つ

 DeNAはこれで巨人と5ゲーム差、首位阪神とは5.5ゲーム差まで迫った。阪神ファンの「ありがとう」も、ここまで来ると別の感情へ変わり始めて当然だ。


「DeNAのおかげでマジックが減ってるとはいえ、このDeNAと戦って勝てる気がせん」

 今回の状況を、そのまま言い表したような声もあった。

 しかも阪神とDeNAには直接対決がまだ5試合残されている。仮にDeNAがその5試合をすべて取れば、他カードの結果を別にしても、現在の5.5ゲーム差のうち5ゲームを直接対決だけで削ることになる。

 もちろん、かなり極端な仮定である。現時点で5.5ゲーム差がある以上、逆転優勝はなお容易ではなく、DeNAが一気に優勝争いの本命へ浮上したなどと騒ぐのは早計だろう。

DeNAはCSでの“最恐の対戦相手”に?

 ただ、クライマックスシリーズ(CS)では話は別だ。

 3位DeNAと4位ヤクルトの間には8ゲーム差があり、現状では阪神、巨人、DeNAの3球団がCS進出へ大きく前に出ている。ペナントレースで5.5ゲーム差があることと、9月10勝2敗のDeNAと短期決戦でぶつかりたいかどうかは別問題である。

 まして巨人は、その相手に3連敗したばかり。SNSで「DeNAは絶対嫌やねー。ハマスタは勝てる気しないし、東京ドームでも2年前思い出すから」といった声が出るのも無理はない。

 いまのDeNAをさらに不気味に見せているのが、この「2年前」だ。

 振り返れば2024年のDeNAもレギュラーシーズンは3位だった。
首位巨人とは8ゲーム差があり、143試合を通してセ・リーグを圧倒したチームではなかった。

 ところがCSファーストステージでは、甲子園で2位阪神に2連勝。続くファイナルステージでは東京ドームでリーグ王者の巨人も破り、3位から日本シリーズへ駆け上がった。

 さらに日本シリーズではソフトバンクに2連敗してから4連勝。阪神、巨人、最後はパ・リーグ王者まで倒し、26年ぶりの日本一をつかんだ。

2年前の下克上が再び?阪神と巨人がDeNAを恐れる理由

 もちろん、2024年と2026年は別のシーズンだ。好調な9月だけを見て、「今年も同じ下克上が起こる」と決めつけることはできない。

 だが、怖いのはDeNAが勝っていることだけではない。阪神は7連敗、巨人はそのDeNAに3連敗した直後。相手が強いうえに、自分たちの足元までぐらついているからこそ、DeNAが余計に怖く見えるのだろう。

 だから「DeNAありがとう」と笑っていた阪神ファンも、首位浮上を期待していた巨人ファンも、同じ相手を警戒している。

 DeNAの逆転優勝まで視野に入れるのは、さすがに厳しいかもしれない。
ただ、10月を考えれば、2年前の下克上が脳裏をよぎるだけの材料は十分そろった。

 阪神と巨人にとって何より厄介なのは、そのDeNAがこの勢いを保ったまま10月を迎えることではないだろうか。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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