◆JERA セ・リーグ ヤクルト2ー1巨人(11日・神宮)

 放物線を見つめるしかなかった。先発の堀田賢慎投手(23)が1球に泣いた。

無失点で迎えた6回1死三塁。甘めの148キロ直球を茂木に右中間席まで運ばれた。5回1/3を2失点で今季初黒星。「絶対に厳しくいかないといけない1球。(打者の)足元をズラすくらいでも良かった。その余裕がなかった。僕の甘さ」。今季2度目の先発で快投していただけに、悔いの残る81球目だった。

 2回までに2併殺。最速152キロの直球で胸元を突き、130キロ台のチェンジアップ、カットボールで緩急をつけた。5回1失点だった4月27日の阪神戦(甲子園)以来のチャンスで意地のゲームメイク。杉内投手コーチからは「十分。

期待以上のピッチングをしてくれた。賢慎は次につながる」と合格点を与えられた。

 母の日と重なった先発日。毎登板後に連絡をくれる母・有里さんからは「何とか勝って~」とお願いされていた。晩酌好きな親の影響で、日頃から名酒を調べるようになった23歳。「僕が買えそうな(値段の)ものを…」と心を込めて選んだウイスキーやワインを毎年贈っている。白星も届けたかった。「6、7回は先発として乗り越えないといけない。投げ切る精神力がまだまだない」。一皮むけるための改善点は分かっている。(堀内 啓太)

 ◆清水隆行氏Point 堀田が6回に茂木に2ランを浴び2失点降板。だが内容は悪くなかった。

6回無死三塁でサンタナに対して、甲斐の要求通り内角へチェンジアップを投げ、見逃し三振に仕留めた。この球を右、左に関係なく投げられる投手は意外に少ないものだが、堀田はそれができる。インサイドへきっちりと真っすぐを投げていたのもチェンジアップの効果を引き立たせていた。悔しい敗戦だろうが、また先発のチャンスをもらえるはず。この悔しさを次につなげてほしい。(野球評論家)

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