◆JERA セ・リーグ 広島5x―4巨人=延長12回=(13日・マツダスタジアム)
秋広、大江との2対1のトレードでソフトバンクから巨人に加入したリチャード内野手(25)が、“球団初”の大仕事をやってのけた。広島戦に「7番・三塁」で出場。
リチャードはバットを振り抜き、願った。「いってくれ」。高々と上がった白球は落ちてこない。長い滞空時間を経て、マツダの左中間席へ飛び込んだ。移籍後2打席目で名刺代わりの一発。50年以降、トレード発表翌日に1軍戦に出場した選手は球団初で、歴史に名を刻む衝撃デビューだ。悠然とダイヤモンドを回る姿から威圧感が漂った。
3点を追う5回先頭。1打席目は三振だったが引きずらない。
新天地での飛躍への思いは強い。今季は開幕スタメンを飾ったが、6試合22打数2安打で4月5日に出場選手登録抹消された。苦しむ中、12日に秋広、大江との2対1でのトレードが決定。心機一転、再出発した。早朝に広島入りし、試合前には入団会見。「(巨人は)威圧感をすごい感じるチームだった」と印象を口にし、自らのユニホーム姿を鏡でチェック。「さっき見たんですけど、僕も威圧感がちょっと出てるかな」。
エールに応えたかった。ソフトバンク在籍時には王球団会長から大きな期待を寄せられた。技術面だけでなく心の持ち方など数々の助言をもらった。一つ一つが財産になっている。「『自分はできるんだと思っていきなさい』、『自信を持て』、『自己肯定感を上げよう』といつも言われていた」。移籍決定後には自ら連絡。「『君にとっては大きなチャンスだから頑張ってきなさい』と、声をかけてもらった。絶対に頑張ろうと思った」。愛の激励に豪快なアーチで応えた。
チームは12回サヨナラ負けを喫したが、岡本が左肘靱帯(じんたい)損傷で離脱している状況で、明るい材料になったロマンあふれる右のスラッガー。阿部監督は「いい働きをしてくれた。
交換トレードでの加入発表翌日の1軍出場は初
◆巨人記録室 ソフトバンクから交換トレードで加入したリチャードが移籍即先発で1本塁打を含む2安打。巨人で2リーグ制以降となった50年以降、交換トレードでの加入発表翌日の1軍出場は初。これまでは06年の木村拓也(前広島)、11年の大村三郎(前ロッテ)の2人が最短で2日後だった。
2リーグ制以降で巨人のシーズン途中に交換トレードで加入した選手が同年の移籍後初戦で安打を打ったのは
年 選 手(前所属)打―安[本]
51 樋笠 一夫(広)1―1[1]
92 大久保博元(西)3―1
99 光山 英和(中)6―3
08 鶴岡 一成(横)4―2
11 大村 三郎(ロ)1―1[1]
20 ウィーラー(楽)3―1
25 リチャード(ソ)4―2[1]
で、リチャードが7人目。移籍初戦マルチ安打は08年鶴岡以来、本塁打は11年の大村以来ともに3人目だ。巨人に頼もしい新戦力が加わった。(恩田 諭)