上智大初のNPB選手誕生なるか―。東都大学野球リーグ3部に属する上智大の最速153キロ右腕・正木悠馬投手(4年=米レドモンド)が今秋のドラフト会議に向け、プロ志望届の提出を決断したことが2日、スポーツ報知の取材で分かった。

中2から高校卒業まで米ワシントン州で過ごし、帰国生入試で上智大に入学した異色の経歴の持ち主。すでに複数のNPB球団が視察に訪れており、プロの舞台を目指してさらなるレベルアップを目指す決意だ。

 国際的で洗練されたスクールカラーから、受験生に人気を誇る上智大。華やかなキャンパスから、初のNPB選手が生まれる可能性が出てきた。最速153キロ右腕の正木は、プロ志望届を出す覚悟を固めた。「プロに行きたいです。育成でも行きたいですし、高いレベルで野球がやってみたいと思っています」

 潜在能力は十分だ。吉田裕監督(68)が「パワーがすごい」と評するように、抜群のフィジカルを誇る。デッドリフトは200キロ以上を持ち上げ、ボックスジャンプも150センチを軽々と跳ぶ。50メートル走も5秒7の俊足。遠投115メートルと肩も強い。自主性を重んじる同校硬式野球部で、才能が開花。

大学1年時には最速140キロだった直球は今春の東都3部リーグ戦で153キロを計測。NPBのスカウト陣も続々と視察に訪れている。

 1歳の時に父の仕事の都合で米アラスカ州へ。小1で日本に戻り、小2から野球を始めたが、中2から高校時代を米ワシントン州で過ごした。レドモンド高ではさまざまなポジションに就いた。クロスカントリーにも挑むなどマルチスポーツを体験。帰国生入試で上智大に合格。「一番楽しかった投手をやってみよう」と専念したところ、急成長を遂げた。

 過去、投手コーチから専門的な指導を受けた経験がなく、インスタグラムで海外の投手の動画を参考にするなど、独学でここまで来た。今春リーグ戦前には東都1部の強豪・国学院大の練習に1日参加。「レベルが高く、本当に楽しかった」と目を輝かせた。NPBに多くの選手を輩出した同校の鳥山泰孝監督(49)は「バネがあり、身体能力が高い。

決まった時のボールの質、強さはいいものがある」と称賛。「伸びしろがあり、多様性の時代に魅力的なプロセスとキャラクターを備えた選手」と期待した。

 上智大では昨秋、1学年上のユエン凱投手(23)が同部初のプロ志望届を提出し、BC福島に入団したばかり。先輩の「お前なら行けるよ」という後押しもあり、NPBへの思いも強くなった。就活もやめ、進路は野球継続に絞った。無限の可能性を秘めた逸材が、夢のプロへ鍛錬を重ねる。

 ◆正木 悠馬(まさき・ゆうま)2002年11月19日、横浜市生まれ。22歳。豊海小2年から月島ライオンズで野球を始め、銀座中では練馬ボーイズに所属。中2から父親の仕事の都合で米ワシントン州へ。レドモンド高では複数の守備位置を経験。上智大で投手に専念し、1年春に救援でリーグ戦初登板。

フォーク、カーブ、カット系スライダーとジャイロスライダーを操る。179センチ、80キロ、右投左打。好きな芸能人はサンドウィッチマン、オードリー。

 ◆上智大学硬式野球部 1916年創部。スポーツ推薦はなく、ほとんどの選手が一般入試を経て入部する。選手主体のチーム運営で部員40人が活動する。平日は四谷キャンパス近くの真田堀グラウンド、休日はクラブハウスも併設された上智短大秦野キャンパス内の野球場で練習に励む。部訓は「清純であれ、闘志を持て、和を乱すな、勤勉であれ」。OBの吉田裕監督が指導を行う。

 ◆今年のドラフト動向 今春リーグ戦で評価を上げたのは創価大の強打者・立石正広内野手。希少な右の大砲かつ俊足も際立ち、二塁も守れる1位候補。大学生投手では東洋大の155キロ右腕・島田舜也や青学大の152キロ右腕・中西聖輝、早大の152キロ右腕・伊藤樹、中京大の153キロ右腕・高木快大、仙台大の152キロ左腕・渡辺一生らに熱視線が注がれる。

高校生投手では健大高崎の158キロ右腕・石垣元気、大阪桐蔭の153キロ右腕・森陽樹らが逸材だ。

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