◇1974年4月6日(後楽園)
現役時代の長嶋茂雄さんは、抜群の勝負強さでファンの記憶に刻まれる名場面を数多く残してきた。公式戦2186試合、日本シリーズ68試合の中から、ベースボール・アナリストの蛭間豊章記者が12試合のメモリアルゲームを厳選した。
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前年まで素手でバットを握っていたミスターがこの年から白いバッティンググローブをつけるようなった。そして迎えた開幕戦。初回が1死一、二塁の好機で一邪飛、3回が遊ゴロ併殺打とブレーキになっていた。しかし、1点を追う6回、ヤクルトのエース右腕・松岡弘の2球目の直球を叩くと打球は左翼席中段にライナーで飛び込む同点ソロ。
「好きなんだな、オープニングゲームが」
一塁ベース手前でファンに向かって小さく右手を振り、満面の笑顔でダイヤモンドを一周。「一発を出すって昨日、予告しただろう。狙っていたんだ」と胸を張った。
ちょうどこの日は長男・一茂さんの小学校の始業式、そして長女の幼稚園の入園式で、家で開幕と合わせ赤飯が炊かれており、花を添える一発となった。この5年連続10本目の開幕戦アーチの記録は、いまだにプロ野球記録。メジャーでも誰も達成していない。
◇1974年4月6日(後楽園)
ヤクルト 100 000 010―2
巨 人 000 002 000―2
【本】長嶋1号、末次1号(以上巨)、大矢1号(ヤ)