◆71年5月25日(神宮)

 現役時代の長嶋茂雄さんは、抜群の勝負強さでファンの記憶に刻まれる名場面を数多く残してきた。公式戦2186試合、日本シリーズ68試合の中から、ベースボール・アナリストの蛭間豊章記者が12試合のメモリアルゲームを厳選した。

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 長嶋がプロ野球5人目となる2000安打の勲章を手にした。8回無死、浅野啓司から左前安打で達成。一塁上でヘルメットを振り、さわやかな笑顔でファンの歓声に応えた。「良くやったというスタンドのファンの声を聞いて、本当にうれしくなったんだ」

 今では通算2000安打への報道は細かい数字を掲載するのが常になったが、当時の報知新聞は、長嶋のファンの声援に応える大きな写真が1面を埋めているものの原稿は長嶋と、サヨナラ本塁打を放ったヤクルトの溜池敏隆が同居。記録関係も年度別成績の表だけでランキング表はなく、付きものとして2面に評論家・金田正一の「おめでとう」原稿があるだけ。サヨナラ負けしたこともあって、少々あっさりとしたものだった。

 ミスター自身は記録には無頓着だった。「記念のボールなんてひとつもないよ。2000安打のボール? とっておく気もない。過ぎたことをいつまでも覚えていても仕方ない。オレはいつも“あした”に生きるんだ」

 ちなみに35歳となったこのシーズンは6度目の首位打者を獲得した。

 ◇71年5月25日(神宮)

巨  人 004 000 000 0―4

ヤクルト 000 010 102 1X―5

勝 松岡

敗 渡辺秀

本 柴田2号2ラン、王10号2ラン(以上巨)、溜池2号(ヤ)

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