◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人2―1日本ハム(18日・東京ドーム)

 祈るような気持ちで、西舘は打球を目で追った。5回。

上川畑に先制の右前適時打を許し、なお2死満塁。清宮幸への初球、153キロ直球を痛烈にはじき返された。快音を残した打球は鋭く右中間を襲ったが、右翼手・キャベッジが背走し、最後は懸命に左手を伸ばしてつかんだ。救ってくれた助っ人をベンチ前で待ち構え、グラブを合わせて感謝した。

 今季2度目の先発マウンド。最速154キロを計測した直球を軸に、フォークやカットボール、スライダーを丁寧に織り交ぜ、打者の目線を変えた。「一発が出る打者が多いので安易に取りにいくんじゃなくて、(力で)押していけるようなイメージで」。3回まで完璧に抑え、走者を出しても粘った。

 7回85球5安打5奪三振1失点にまとめ、7回の打席で代打を送られて降板。その回に味方が勝ち越し、今季2勝目が舞い込んだ。2年目でうれしい本拠・東京D初勝利にもなった。お立ち台に上がり「ファンの方たちが多いところで1勝を挙げられたのはすごいうれしい。

自分の役割は最低限できたかなと思う」とはにかんだ。阿部監督も「先制点を与えたけど7回までしっかり投げてナイスピッチング。次もそのままローテで回すと思うので頑張ってほしい」とねぎらった。

 純粋な心は変わらない。小学生の時、100メートル走の世界新記録を出したウサイン・ボルトの姿をテレビで見て、父に尋ねた。「お父さんとどっちが速いの?」。父・満弥さんも「面白いですよね。純粋な子でした」と懐かしそうに目を細める。「学生時代のコーチとかには『天然。宇宙と交信している』って言われるぐらいなんです」と父は語る。柔和な性格でこの日も「先発の時は自分が投げている以外の時の方がソワソワする」と素直な思いを口にしていた。その一方で「1イニングでも長くと思っている。

そういう責任もあると感じています」と覚悟ものぞかせる。チームを背負う責任も次第に芽生えてきた。

 信頼も勝ち取った。杉内投手チーフコーチは「来週火曜は西舘で。(井上)温大もいい時間を過ごせればと思うので1週飛ばしてって感じだと思います」と24日のロッテ戦で先発を託すことを明言した。「野手の人たちに助けてもらっているので感謝は忘れず、次の登板に向けてまた頑張りたい」と西舘。謙虚な思いを忘れず、腕を振る。(水上 智恵)

 ◆高橋由伸氏Point 西舘は初回から飛ばしているように見えた。先に点を取られないことを意識し、一番は球が走っていた。空振りを取れる直球は何よりも武器になる。変化球でもカウントを取れたのは大きい。ストライク先行でリズムも良かった。

元々、春季キャンプの時からローテーションの一人として期待されていたし、今さら言うことはない。球に角度がつき、ベース上での強さも増した今、先発陣の中心的な存在になれると思う。今年は菅野が抜け、昨年から15勝分が消えた。西舘には、ここからその穴も埋めにいってもらいたい。(スポーツ報知評論家・高橋 由伸)

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