◆日本生命セ・パ交流戦 2025 巨人2―1西武(20日・東京ドーム)
巨人が西武との接戦を制し、リーグ3位に浮上した。今季初スタメンマスクの小林誠司捕手(36)が攻守で躍動。
小林の笑顔がはじけた。同点の6回2死二塁。初球だ。高橋の外角低め131キロスライダーを執念を込めて振り抜いた。誰もが祈るような思いで見つめた白球は、狭い遊撃手と中堅手の間にポトリと落ちた。今季初安打が勝ち越しの中前適時打。歓喜するベンチを見て、小林が両手を振る。「気持ちと皆さんの応援が打たせてくれた」。
昨年リーグVを決めた9月28日・広島戦(マツダ)以来の今季初スタメン。「チームが勝つためにという気持ちだった」。先発が発表されると割れんばかりの歓声が起こった。プレーボール後も人一倍大きな声援が注がれる。「ありがたかった」と力に変えた。5月24日に初昇格し、6打席目の初安打がV打。勝利の立役者となった。
扇の要としても際立った。赤星を引っ張り、6回1失点の好投を演出。さらに7回無死一、二塁ではバントを空振りしたことで飛び出した二塁走者の動きを見ると、すぐさま二塁へけん制。送球を捕球した泉口が三塁へと転送し、アウトにした(記録は盗塁死)。
ずっと、この姿を想像してきた。昨季は主に菅野(現オリオールズ)とバッテリーを組み、42試合に出場。それでも今季は開幕から2軍で過ごす日々。「悔しさはあった」。ファームでも常に1軍戦をチェック。自分がマスクをかぶる姿や打席に立つ場面を想像し、野球のことで頭を埋め尽くした。時には投手に連絡を入れた。「常に自分が試合に出ている感覚をイメージしていた。いろいろな状況を想定してた」。1軍に合流してからは出番がなくても、投手と積極的に会話。声をかけるタイミングにもこだわった。
盟友のエールも原動力だ。広陵時代にバッテリーを組んだ同級生の元広島投手・野村祐輔さんが昨季限りで引退。引退に際して直接連絡をもらい、昨シーズン後には食事もした。野村さんからは「1年でも長く選手を続けてほしい」と熱い激励を受けた。「今の僕があるのも野村のおかげ」と感謝する存在からの言葉を胸に戦っている。
今季加入した甲斐、岸田、大城卓ら実力者がそろう捕手陣で改めて存在感を示した男は、頼もしく言った。「キャッチャーとしてより強くなったと思っている。これからもっと勝てると思うので一緒に苦しみながら頑張りたい」。乗り切れないチームを救う活躍。本拠に小林コールが響き渡った。