第107回全国高校野球選手権大会南北北海道大会の地区予選が21日、函館、十勝、釧根地区で開幕する。北大会で過去11度決勝に進んでいる旭川東は、25日の1回戦で旭川高専と対戦する。

兄2人と姉が同校野球部出身の主将・今津良介内野手(3年)が旭川東と今津家にとって悲願の聖地に導く。

 “最後の砦(とりで)”が勝負の夏に挑む。旭川龍谷OBで旭川市長の父・寛介氏、そして兄姉3人はいずれも甲子園未出場。末っ子の三男としてプレッシャーもかかるが、「緊張よりも楽しみという気持ちのほうが大きい。目標は優勝しかない」と良介は力強く言い切った。

 今津家が届いていないタイトルはただ一つ。優勝のみだ。長男・寛春さんは旭川地区予選で敗退したが、マネジャーの長女・桜子さんは北大会出場(1回戦敗退)。慶大の1番打者として今春のリーグ戦で3本塁打を放った次男・慶介外野手(3年)は同大会で準優勝を果たし、兄姉3人で着実にステップアップしてきた。

 兄2人も主将を務めた。特に慶介は抜群のリーダーシップを発揮し、春地区予選コールド負けのチームを束ねて夏に決勝進出。背中で引っ張ってきた偉大な兄のスタイルを追い求めるあまり、良介は新チーム初の公式戦となる2年秋の大会前に「俺じゃないかも」と弱音を吐くこともあったという。

 それでも、きょうだい4人全員の指導に携わってきた佐藤俊行副部長(45)が「兄を追いかけようと思わなくなってからすごく変わった」と言うように、就任当初の苦悩をきっかけに心境は変化。「最初は一人でやろうと考えていたけど、兄のように引っ張っていけるような突出した技術はないのでそれは違う。周囲の声を聞きながらみんなで同じ方向をむけるようにまとめていく。それが自分のやり方」と、“良介流”の方法でチームを引っ張ってきた。

 初戦に勝利すれば代表決定戦で、春に敗戦(3●7)した全道準Vの旭川実と激突する可能性がある。これまで同校は北大会の決勝に11度進出しているが、いずれも準優勝。悲願の初優勝に向け、いきなり鬼門を迎えることになるが「まずは春のリベンジをして、勝ち進んでいきたい。甲子園に行きたいのは野球部だけじゃない。OB、OG、先生を含めた学校の悲願だと強く感じている」。“華麗なる一族”の高校野球最終章。兄姉はもちろん、旭川東卒業生の思いも胸に一つずつ勝利を積み重ねていく。(島山 知房)

 ◆今津 良介(いまず・りょうすけ)2008年2月10日、旭川市出身。

17歳。道教大旭川小2年時に旭稜野球少年団で野球を始める。道教大旭川中では旭川北稜シニアでプレーした。旭川東では1年秋に初めてベンチ入り。2年夏に北北海道大会に出場した。176センチ、75キロ。右投右打。家族は両親と兄2人、姉。祖父の寛氏は元衆院議員。

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