来年2月6日開幕のミラノ・コルティナ冬季五輪まで半年を切った。スピードスケート女子のエース・高木美帆(31)=TOKIOインカラミ=がこのほど、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。
高木にとって、北京五輪後の3年半は試行錯誤の日々だった。所属先や強化体制の変更など挑戦を続け、23年夏にスケート靴のブレード(刃)を新調。ブレードと滑りの調整に苦心し、昨季は1000メートルで国内外10戦9勝も、主戦場の1500メートルは世界距離別選手権で4位にとどまるなど、五輪プレシーズンは不完全燃焼の思いが残った。
「スケーティングとブレードに対して、見つけきれていない期間が続いていた。昨季のうちに自分のものにしたいと強く思っていたけど、結果的には実感がないまま終えた。春のオフシーズンもずっと、もやがかかっているような感覚だった」
一方で現状に目を背けずに向き合うことで、内側から闘志が湧き出てきているのも感じている。
「特に1500メートルは過去2年間で会心のレースだと思える機会がなかなかない。そこはフラストレーションがたまっている部分でもあるけど、振り返ったり、悩んだり、解決策を考えていく中で自分と向き合って『やっぱり速く滑りたい。もっと速くなりたい』という気持ちは必然的に湧き上がってくるものはある」
ミラノ五輪まで時間は限られている。悩みはあっても、迷いはない。
「スケーティングに対して未完成、見つけきれてない部分を見つけながら、五輪に向かっていかなければいけない。例えば体の使い方。新しいことを試す中で軌道が少しずつずれていたことに気付いて作り直したり、考え得ることを信じて取り組んでいる。道を間違えたから戻るとか、そういう時間はない。進んでいくたびに後ろの道がなくなっていくような感覚。常にその時に最善だと思える道を選択しながら、前を向いて走っていく」
北京五輪は5種目で計4個のメダルを獲得し、オールラウンダーとして圧巻の活躍を見せた。だが、世界記録を保持する1500メートルは平昌に続いて銀メダル。悔しさとともに、得意種目に抱く思いの強さを再確認した。
「北京でも、どの種目も同じように勝ちたいという気持ちはあった。滑る前は強く意識していたわけではなかったけど、終わった後で自分の気持ちの変化に目を向けた時に、1500メートルは世界記録保持者としてのプライドや意地、W杯での勝利数の多さ、そういうのを全部ひっくるめて、この舞台(五輪)で勝ちたいと思ったところはあるんだなと感じた。背負うもの、大事にしている気持ちが一番大きかった」
それでも北京五輪後、4年後を目指すか、すぐに答えは出せなかった。覚悟が固まり、公言したのは23年春。
「あの時、自分が達成したいなと思った目標はずっと変わらずにある。『ミラノで1500メートルで勝つ』。そこに向かって愚直に、ただひたすらに速く滑ることだけを考えて進んでいきたい」
◆高木 美帆(たかぎ・みほ)1994年5月22日、北海道・幕別町生まれ。31歳。帯広南商、日体大卒。18年世界選手権総合優勝。19年に1500メートルの世界記録樹立。20年全日本選手権で史上初の5種目V。五輪は10年バンクーバー大会に史上最年少15歳で出場。