◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 困難を乗り越え、輝きを取り戻したアスリートは本当にカッコいい。JRAの高田潤騎手(44)は大けがを克服して今年、障害リーディングを快走。

12年ぶりのタイトル奪回を視界に入れている。

 22年12月のレースで転倒して第2頸椎(けいつい)などを骨折し、復帰まで1年近くを要した。「折れた骨が大きくずれて、医師から『あと数ミリ、骨がずれていたら命がなかった』と言われました」と振り返る。復帰後は5か月以上も勝てない時期があり、「年齢的に成績を出せなくなったら終わり」と悩んだという。窮地を救ったのは後輩の藤岡佑介騎手。「バランスが崩れています」と指摘を受け、トレーニングなどの助言をもらい、勝ち星が増え始めた。

 自身の経験と近年の落馬事故から、騎手が頸部を守るためのネックガードプロテクターの導入へ注力。昨夏、JRAが承認し、レースでの使用が認められた。アメフット用、バイク用のものなどを自分で試した末、「ボートレース用のものを使っていて現在、競馬用を開発中です」。先頭に立ってメーカー、騎手と話し合いを重ね、安全面の向上に努めている。

 今月末に恒例となった児童養護施設の訪問を予定。行動力と面倒見の良さで多くの後輩、関係者に慕われ、Xでは6万人以上のフォロワーがいるインフルエンサーでもある。

「自分は1980年生まれの松坂世代。同世代のスポーツ選手はほとんどいなくなった。俺が頑張らないと」。高田が勝つことで元気をもらえる人が大勢いる。(中央競馬担当・内尾 篤嗣)

 ◆内尾 篤嗣(うちお・あつし) 1998年入社。思い出の障害ホースは中山大障害連覇のキングジョイ。

編集部おすすめ