◆第107回全国高校野球選手権大会第6日 ▽2回戦 高川学園8―5未来富山(11日・甲子園)

 高川学園(山口)は雨の影響で甲子園入りが遅れた応援部隊が着いた瞬間、4番の遠矢文太捕手(3年)に勝ち越し3点二塁打が飛び出すミラクル。未来富山のプロ注目左腕・江藤蓮(3年)を攻略し、4年ぶりの勝利を挙げた。

 力強い応援が、快打には欠かせなかった。3―3と同点の4回2死満塁だ。高川学園の主砲・遠矢文太は気合を入れ直した。「あいつらのためにも絶対打たないと」。中越えへ勝ち越しの3点二塁打。未来富山のプロ注目左腕・江藤蓮のフォークを逃さなかった。

 前日の夜から続いた豪雨の影響で、吹奏楽部が来場を断念。山口からの応援団を乗せたバスは試合開始に間に合わなかった。序盤、一塁側アルプス席からの応援は、補助部員や保護者による声と手拍子だけ。到着したのは4回、遠矢の第3打席直前だった。すぐに準備を整え、勝ち越しのチャンスに合わせて応援歌がスタート。遠矢にとって、何よりの後押しになった。

 2点を追う2回には先頭でソロ。1ストライクから2球目のカーブを左翼へ運んだ。「甲子園という舞台でしか味わえない感覚。一生残るもの」。両校に本塁打が出たのは、低反発バットが導入された24年春以降では初。同校が甲子園で本塁打を記録したのも、21年の1回戦・小松大谷戦でドラフト1位候補の立石正広(現創価大)が放って以来2本目だった。

 1日の朝食で、隣に座った松本祐一郎監督(38)は、バナナを遠矢へ手渡して言った。「バックスクリーンをイメージして食べるか」。バナナをバットに見立て、あらゆる状況から本塁打を放つことをイメージ。3安打5打点の4番打者は「きょう打った変化球(カーブ)をレフトスタンドへ運ぶ想像もしていた」と胸を張り、指揮官も「言ってみるもんやな」とニンマリの様子だった。

 スタンドで見守った父・智幸さん(43)は俳優・菅原文太の大ファン。「力強い男になってほしいと、文太という名前をつけてもらった。

強く生きることを大切に」と親孝行の途中でもある。応援そのものに感謝した一日。誰よりも強く、熱く、チームを引っ張る。(藤田 芽生)

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