◆第107回全国高校野球選手権大会第6日 ▽1回戦 東海大熊本星翔10―7北海(11日・甲子園)

 豪雨で被害を受けた故郷に白星を届けた。東海大熊本星翔が北海(南北海道)との打撃戦を制し、4度目の出場で待望の甲子園初勝利。

大雨で応援団が到着できない中、兄弟校・東海大大阪仰星の奏でる応援曲に乗って聖地1勝をもぎ取った。

 雨空の甲子園に、東海大熊本星翔の校歌が響き渡った。4度目の出場で、待望だった甲子園初勝利だ。大雨特別警報が発令された地元・熊本にも力を注ぐ初戦白星。3―3の7回に打者11人で6得点。今大会初の2ケタ得点を記録し、主将の比嘉健太は「県民の皆さんに勇気を与えられたかな…」と充実感を漂わせた。

 比嘉主将は言葉をつないだ。「テレビを見ていたら熊本の警報のニュース。ずっと気にしていた」。線状降水帯の影響で、前日の10日夜に記録的な豪雨となった。決して他人事ではなく、電話で友人や家族へ被害状況を確認する選手もいた。一夜明け、応援にも影響。

応援団を乗せたバスは5回裏終了時に広島までたどり着くのがやっとで、甲子園に間に合わなかった。

 救世主は兄弟校の東海大大阪仰星だった。熊本星翔の吹奏楽部は部員が少ないため、合同応援の態勢をとっていた。2年前の23年にも東海大大阪仰星の吹奏楽部とチアリーディング部が三塁側アルプス席を盛り上げ、甲子園春夏通算初勝利をアシスト。困った時はお互いさまの「友情応援」もナインの力になった。

 地元出身の選手も躍動した。3点を勝ち越した7回一死一、二塁では菊池市生まれの堀田延希が左中間へ2点三塁打。8回1死満塁でも中犠飛を放ち「ほっとした。打点を稼ぐことができて良かった。(熊本は)酷い状況と聞いています。笑顔を届けられれば」と心に誓った。

 堀田は隈府小、菊池南中で2学年先輩の阪神・百崎に憧れ、星翔の門をたたいた。

中学3年時に食事する機会があり「甲子園に連れて行ってやる」という先輩の言葉に感動。百崎は有言実行し、打線の中心として23年に甲子園へ導いた。「親近感というか、仲もいいので。自分から勝ちましたと報告したい」。雲の上の存在であることに変わりはないが、少しだけ胸を張れる1勝をつかんだ。

 比嘉主将と堀田は「この世代で歴史を塗り替える」と何度も口にしてきた。野仲善高監督(44)も「何とか次もいい試合を見せて、元気づけられれば」と言葉に力を込めた。まだまだ道半ば。戦う理由がある。  (松ケ下 純平)

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