◆第107回全国高校野球選手権大会第8日 ▽2回戦 関東第一6―1中越(13日・甲子園)

 関東第一(東東京)はエース左腕・坂本慎太郎(3年)が中越(新潟)に1失点完投で初戦を突破した。

 坂本の133球目、こん身の直球だ。

遊ゴロ併殺打で試合を締めると、関東第一の背番号「1」は大きく息を吐き、笑った。「ほっとした」。苦しみながらつかんだ完投勝利だった。初回、自らの暴投で中越に先制を許すと、5回まで毎回被安打。それでも、最速139キロの直球、カーブを軸に尻上がりに調子を取り戻した。同点の5回2死二、三塁。4番・窪田優智に「気持ちで投げた」と直球を続けて、空振り三振。ピンチを脱し、大きくほえた。

 昨夏の忘れ物を拾いにきた。24年夏の甲子園、京都国際との決勝、1点ビハインドの10回2死満塁。左翼手でフル出場した坂本は空振り三振で、最後の打者となった。相手投手は、同学年の西村だった。

「2年の自分と西村が最後になったのは、絶対に何か意味がある。その答えを探せるのがこの甲子園」。今春参加したU―18日本代表合宿で、西村と再会。意気投合し、甲子園決勝での再戦を誓いあった。

 昨夏は背番号「7」、東東京大会は「8」、そして「1」を背負い聖地に戻ってきた。目の当たりにしたのは、第1試合で力投する西村の姿だった。センバツ4強・健大高崎を相手に160球3失点完投。「自分も応えなきゃと思った」。7回打席で右すねに自打球を当てた。痛みはあったが「最後まで行きたい」と米沢貴光監督(49)に直訴。6回以降は安打を許さず投げきった。

 家族の思いも背負い、最高の夏にする。

小学4年で母を亡くし、昨年12月に父も他界。スタンドからは、姉・良子さん(43)、兄・龍馬さん(34)が祈るように見守っていた。「後悔のないように。次も頑張って」と龍馬さんは弟へ言葉を贈った。

 京都国際との再戦は、準々決勝以降の抽選次第。坂本は激しい対抗心を燃やしている。「絶対に対戦したい。西村から全打席打って、全打席三振をとる」。目標はもちろん、昨夏届かなかった日本一だ。(古澤 慎也)

 ◆再戦は準々決勝以降 京都国際と関東第一の再戦は、早くても準々決勝以降になる。準々決勝以降は再抽選となるが、それまで両校は勝ち抜けるか。

 ◆坂本 慎太郎(さかもと・しんたろう)2007年5月1日、千葉県生まれ。

18歳。松戸柏リトルリーグでプレーした小学生時代からカーブを得意とする。中学では取手リトルシニアに所属し、22年のU15W杯日本代表に選出。関東第一では1年春から背番号20でベンチ入り。今夏の東東京大会では背番号8。最速139キロ。170センチ、65キロ。左投左打。

編集部おすすめ