巨人の新ファーム本拠地・ジャイアンツタウンスタジアムを特集する「月刊Gタウン」。今回は7月21日にGタウンで開催されたサッカーJ1東京Vと女子プロサッカーWEリーグ・日テレ東京Vの合同ファン感謝祭を取り上げる。

競技の垣根を越えた異例のコラボはなぜ実現したのか。3つの視点からひもといた。(取材・構成=後藤 亮太、小島 和之)

◆なぜ巨人とタッグ? ライバルではなく共闘…可能性広がる

 Gタウン完成によって、巨人ファームと東京Vのホームタウンは同じ東京・稲城市になった。東京Vの栗田大輔副社長(54)は「よみうりランドを挟んで2チームがある。こんなパワーコンテンツはない。お互いの価値が高まっていけば」と、伝統クラブが球界の盟主と交流を持つ意義を強調する。同地区のファンを奪い合う「ライバル」という捉え方はない。双方向の交流で、今まで届かなかった層まで裾野を広げることが可能と予測した。

 東京Vはバレーボールやチアダンスなど17競技のチームを運営する総合型スポーツクラブ。スポーツ全体の普及という観点からもタッグを組む利点は大きく、城福浩監督(64)は「地域に根ざした活動の可能性も広がるし、スポーツ界の取り組みとしても先例になれれば」と期待を込めた。

◆なぜGタウンで開催?…行き来が自由にできるメリットを活用

 東京Vが野球場でのファン感謝祭開催を着想したのは、3月1日のGタウン開業記念セレモニーに出席した時。栗田副社長は「素晴らしい施設。

こういう所なら地域の人やファンも喜ぶ」と感じた。

 昨年はホールで実施したが、Gタウンではスタンドとの行き来を自由にするなど、新球場のメリットをフル活用した。「クリエイティブなものを作り出すことが大事」と、前例主義から脱却して斬新なイベントが実現。主将のMF森田晃樹(25)が「野球はあまり見たことがなかったけど、機会があれば見に行きたい」と話したように、2000人の来場者だけでなく、選手まで野球に興味を引かれていた。これまで届かなかった層にアプローチする、という狙い通りの1日になった。

◆巨人のメリットはあるか?…同じホームタウン連携して地域貢献を

 巨人側にも「異例のコラボ」という感覚はなかった。山本広海総務本部長は「同じホームタウンを持つチームが連携して地域に貢献できないか、という前提。ライバル競技とかは考えずに実現に至った」と明かす。

 多目的スタジアムとして貸し出しを行う中、野球に縁がなかったサッカーファンが、野球、球場の魅力に触れるきっかけにしたい狙いもあった。当日は家族連れが多く来場。「『去年より選手との距離が近く良かった』や『グラウンドに入れて最高』という声をいただきました」と手応えを語った。

 両チームは、8月30、31日にも地域のスポーツ振興が目的のイベント「タッグフェスタ2025」をGタウンで開催。

「子どもたちがいろいろなスポーツに取り組み、楽しんでいけるような体験を一緒に生み出していきたい」。ウィンウィンの関係が構築されつつある。

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