◆第107回全国高校野球選手権大会第10日▽2回戦 明豊6―1佐賀北(15日・甲子園)

 正午。明豊戦の試合を控えるなか、黙とうをささげた。

「徳次おっちゃんが頭の中にあった」。佐賀北・川崎澪(2年)投手は曽祖父の弟がプロ通算188勝の川崎徳次さんだ。

 1921年生まれの徳次さんは太平洋戦争で東南アジアに出征。「つらかった。きつかった。食糧の補給がいつ来るかわからず、大事に持っておき、腐らせた食べ物を食べていた」。澪の父・正平さん(49)は徳次さんからそう聞いたという。

 徳次さんは戦後、上手投げから横手投げに変更。選手引退後は監督も務め、西鉄ライオンズの黄金期を作り上げた。

 戦後80年。澪は「野球ができることは当たり前ではない。ご飯を食べて、服が着られて、ユニホームを買っていただいて、本当にすべての日常が当たり前ではない。

感謝したい」と言葉に力を込めた。

 尊敬する親せきと同じ景色を見た17歳。「来年絶対帰ってこい」との3年生の激励に涙した。

 「覚悟が決まった。絶対に帰ってくる」と澪。「切磋琢磨しながら、誰でも完投できる投手陣を作りたい」。2年生で唯一ベンチ入りした右腕が、成長した姿で聖地に戻ってくる。

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