◆第107回全国高校野球選手権大会第10日 ▽2回戦 西日本短大付2―1聖隷クリストファー(15日・甲子園)
16強が出そろった。西日本短大付(福岡)が聖隷クリストファー(静岡)に競り勝ち、昨夏から3季連続16強入り。
「絶対自分が決めてやる」。そう心に決めていた。1―1の同点で迎えた8回無死一塁。内角高めに甘く入った直球を、西日本短大付・佐藤は逃さなかった。力強く振り抜いた打球はグングン伸びた。左翼手の頭上を越え、フェンス直前でようやく落ちた。「狙っていた球が来て、うまい具合に芯に当たってくれた」。勝ち越しの適時二塁打。三塁を陥れようとしてアウトになったが、大歓声を一身に浴び、小さくうなずいた。
ユニホームを脱ぐと「文学少年」だ。「野球だけに視野が真っすぐなってしまったらダメだと思うので」と自らを分析する4番打者は、小説家・村上春樹さんの著書を愛読する“ハルキスト”だ。
仲間を思う気持ちを、形にした。先発の原綾汰は4―3で勝った弘前学院聖愛との1回戦では7回から2番手として登板し、相手打線を0点に抑えた。だが延長10回、1点を勝ち越して、なお1死満塁の絶好機。自身が遊直に倒れた上、飛び出した二塁走者が戻りきれず痛恨の併殺。左腕を援護できず、大きな悔いだけが心に残った。この日も8回途中1失点と好投していた背番号11に「どうにかして原を助けないと」と燃えていた。8回、左腕が1点を献上した直後の攻撃で価値ある一打を放った。
3季連続、聖地で2勝。「自分たちが挑戦者なので、下から食らいつくくらいの気持ちで」と東洋大姫路との次戦を見据えた背番号3。培った集中力で、目の前の1球を仕留める。
◆佐藤 仁(さとう・じん)2008年1月8日、福岡県生まれ。17歳。小4から企救丘(きくがおか)ジュニアドリームスで野球を始める。北九州子どもの村中では八幡東ボーイズに所属。西日本短大付では2年夏からベンチ入り。高校通算18本塁打。180センチ、91キロ。右投右打。