◆JERA セ・リーグ 巨人0―3阪神(16日・東京ドーム)

 巨人が「長嶋茂雄終身名誉監督追悼試合」として行われた阪神戦(東京D)で完封負けを喫した。6月3日に89歳で永眠した長嶋さんの代名詞で永久欠番となっている背番号「3」のユニホームをチーム全体で着用して臨んだが、阪神・村上にわずか2安打と封じられた。

それでも「残念だけど、素晴らしい一日」と偉大な恩師をしのんだ阿部慎之助監督(46)。ミスターが巨人、球界に残したものとは―。

 天国のミスターに勝利を届けられなかった。必勝を掲げて臨んだ長嶋茂雄さんの追悼試合で完封負け。阪神・村上の前にわずか2安打で二塁も踏めなかった。チーム全員が永久欠番の背番号「3」で臨んだ特別な一戦。「恐れ多いぐらいで。つけていいのかなって。長嶋さんを象徴する番号なので」と重みをかみしめた阿部監督は「みんなその重圧に負けちゃったかな」と悔しさをにじませた。

 試合前の追悼セレモニーでは長嶋さんの背番号にちなみ33秒間の黙とう。始球式では投手に松井秀喜氏、左打席に王貞治氏、右打席に原辰徳氏、球審に高橋由伸氏という豪華演出の中、阿部監督は捕手を務めた。「そうそうたるOBの皆さんがいらっしゃって。

やっぱりジャイアンツってすごいなと思いながらやらせていただきました」。球団創設91年目。ミスターが愛した巨人の指揮官として身が引き締まった。

 大型ビジョンには、長嶋さんの選手、監督時代の功績をたたえる特別映像が映し出された。場内のBGMとして、ミスターをモチーフに作曲されたサザンオールスターズの「栄光の男」も流れた。「我が巨人軍は永久に不滅です!」の名ゼリフを残した現役引退セレモニーの映像や、権藤博氏、山本浩二氏ら球界関係者の追悼メッセージ動画も流れた。東京Dの巨人戦では今季最多4万2403人の大観衆。劣勢の展開でも、ミスターパワーでミラクルが起きる期待感に包まれたが、無情にも阪神にはね返された。

 普段は背番号「97」の井上が「3」で先発も、初回に森下に2ランを浴びるなど3回3失点で降板。4番の岡本が3か月ぶりに1軍復帰した打線も沈黙した。長嶋さんはこの試合を見て何と言うと思うか―。阿部監督は「たぶんメチャクチャ怒られているんじゃないですかね」と想像した。

自身のプロ1年目の監督が長嶋さんで、勝負に対する厳しさを知っている。良い報告ができず無念だった。

 勝率5割に逆戻りして首位・阪神と12差。東京Dの阪神戦シーズン8敗目は球団ワーストタイで、今季の伝統の一戦は6勝14敗となった。苦しい状況だが、選手が背番号「3」でプレーした経験は残り36試合、必ず糧になるはずだ。OBも大集結した追悼試合に「とても残念でしたけど、素晴らしい一日でした」と長嶋さんに思いをはせた阿部監督。ミスターの遺志を継承して強い巨人軍をつくると胸に誓った。(片岡 優帆)

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