◆第107回全国高校野球選手権大会第12日 ▽3回戦 沖縄尚学5―3仙台育英=延長11回タイブレーク=(17日・甲子園)

 8強が出そろった。沖縄尚学は、最速150キロの2年生エース・末吉良丞(りょうすけ)が延長11回を169球で投げ抜き、今秋ドラフト候補に挙がる仙台育英(宮城)の吉川陽大(3年)との好左腕対決を制して、2年ぶりのベスト8。

準々決勝は、西日本短大付(福岡)に逆転勝ちして14年ぶりに8強に進んだ東洋大姫路(兵庫)と対戦する。県岐阜商は明豊(大分)に勝利し、甲子園90勝目。公立校唯一のベスト8進出となった。18日は休養日で、準々決勝は19日に行われる。

 投球数は160を超えていた。未体験ゾーンに足を踏み入れた末吉が最後の力を振り絞った。2点リードの延長11回2死三塁。初回から投げ合ってきた吉川との直接対決だ。「先輩とか関係なく、負けたくない。ここで絶対に切る」。決め球のスライダーで二ゴロに打ち取った。「よっしゃ、勝ったぞ!」。

ポーカーフェースを貫いてきた左腕は、控えめに両手を上げてグラブをたたいた。

 169球、3失点完投。175センチ、89キロのぶ厚い体には、無尽蔵のスタミナが宿る。「誰よりも投げ込みました」。5月以降、3日続けて100球以上を投げ、1日はノースローという日々を送った。延長10回に、この日最速タイの145キロを計測。14三振で完封した金足農との1回戦に続き、2ケタ12三振を奪った。沖縄勢による大会2度以上の2ケタKは、10年に3度マークして沖縄に初めて深紅の大優勝旗をもたらした興南・島袋洋奨らに続き、3人目の快挙となった。

 心もタフだった。延長タイブレーク10回、自軍の攻撃が無得点に終わり、追い詰められた10回裏に強さを示した。無死一、二塁から右打者のインローにスライダーを連投。送りバントの失敗を誘った。

「できるものなら、やってみろという気持ちでした」。サヨナラを阻止し、11回の勝ち越しにつなげた。

 夏の甲子園を前に、帽子のつばの裏側に好きな漢字の「羽」の1文字を記した=写真=。「比嘉先生(監督)からよく言われるのが、フォームのバランス。『羽』という字はバランスが良くないときれいに見えないんです」。3死球を与えて苦しむ場面もあったが、バランスを意識して、その都度修正した。

 激闘を制してチームは甲子園30勝目を挙げて8強入り。沖縄尚学の聖地での延長戦勝利は、比嘉公也監督(44)がエースとして初優勝に導いた99年センバツの準決勝(8〇6PL学園=延長12回)以来になる。「30勝を達成すれば、夏の頂点が見えてくる」と末吉。金足農を完封した際、スカウトから「今年のドラフトでも1位かも」との声が漏れた2年生左腕が、大きな羽を広げて日本一を取りに行く。(浜木 俊介)

 ◆末吉 良丞(すえよし・りょうすけ)2008年11月18日、沖縄・浦添市生まれ。16歳。

仲西小2年の時に仲西ヴィクトリーBBCで野球を始め、仲西中では軟式野球部。沖縄尚学では1年夏に背番号20でベンチ入り。秋季大会からエースナンバーに。最速150キロ。175センチ、89キロ。左投左打。

 ▼沖縄県勢2年生初・2度目の2ケタ奪三振 沖縄尚学の2年生左腕・末吉良丞が、初戦・金足農戦14Kに次ぎ、今大会2度目の2ケタ、12奪三振。夏の甲子園で下級生が1大会2度の2ケタ奪三振は、21年京都国際の2年生左腕・森下瑠大が2、3回戦と、2試合連続でマークして以来。また、沖縄県勢で1大会2度以上の2ケタ奪三振は、10年に3度記録した興南・島袋洋奨、14年に2度の沖縄尚学・山城大智と3人目。左腕では「琉球トルネード」の異名を取った島袋以来。2年生投手では初めてだ。

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