◆第107回全国高校野球選手権大会第12日 ▽3回戦 県岐阜商3―1明豊(17日・甲子園)

 ハンデを感じさせない一打に、甲子園からこの日一番の歓声が巻き起こった。初回、2点を先制し、なお2死二、三塁。

生まれつき左手の指が欠損している県岐阜商・横山温大は「しっかり真っすぐを捉えて強い打球を打とうと思って」と狙い通り初球の直球を力いっぱいはじき返し、右前適時打を放った。聖地で3試合連続安打。同学年の河崎広貴主将も「練習が終わった後も一人でティー打撃とか素振りをしている。人よりやっているからこそ、今があるんだと思う」と一目置く努力家が、またも鍛錬の成果を見せつけた。

 守備でも魅了した。8回1死一塁。右飛を右手にはめたグラブで捕球すると、飛び出していた一塁走者を見て、すばやくグラブを左手に持ち替え、一塁へ矢のような送球。走者を刺すことはできなかったが、攻守に存在感を発揮した。

 レッドソックス・吉田正尚に憧れを抱く。23年WBCの準決勝・メキシコ戦の3点を追う7回2死一、二塁、173センチ、87キロと決して大きくはない吉田が、内角低めをすくい上げ、右手一本で同点3ランを放った。170センチ、70キロで鍛えた右手を軸にスイングする横山にとってはまさに理想型。「小柄でミート力も飛ばす力もある。

小さい頃から憧れてて打ち方とかもマネさせてもらっている。間をつくって“動から動”で打てるように、タイミングの取り方とかを意識してやってます」と明かした。

 チームは公立校初の春夏通算90勝に到達し、09年以来の8強入り。準々決勝では、待ち望んでいたセンバツ覇者の横浜と激突する。「春の王者と戦えるということで非常にわくわくしてますし、自分たちの力がどこまで出せるか楽しみ」。物語はまだまだ続く。(大中 彩未)

 ◆横山 温大(よこやま・はると)2007年7月17日、岐阜・各務原市生まれ。18歳。小3から緑陽スポーツ少年団で野球を始める。愛知江南ボーイズを経て、県岐阜商では2年秋からベンチ入り。好きな食べ物は母が作るカレーライス。家では尾崎豊の曲を口ずさむ。

50メートル走6秒2。遠投100メートル。170センチ、70キロ。右投左打。

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