◆第107回全国高校野球選手権大会第11日 ▽3回戦 関東第一4―1創成館(16日・甲子園)
関東第一(東東京)は2年連続、日大三(西東京)は7年ぶりの8強。この日、準々決勝の組み合わせ抽選が行われ、春夏通算5度目の東京対決が実現した。
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一塁ベース上で、えびぞりになるほど力強い雄たけびを上げ、天を見上げた。0―0の3回1死満塁、関東第一のエース・坂本慎太郎が初球を振り抜き先制の2点打。小4で母を亡くし、昨年12月に父も他界。「お父さんとお母さんが絶対に見てると思って」。スタンドで見守った姉・良子さんは「みんなで応援行くねって言ったら『ありがとう、頑張る』と。悔いのないように戦ってほしい」と目を細めた。
積極的にバットを出した理由がある。昨夏の決勝。延長10回2死満塁、最後の打者となった打席で「得意な内寄りの真っすぐ」の初球に手が出なかった。「あの時と同じコース。しっかり振れた」。二刀流は6回からマウンドに上がると4回無失点。
ルーチンがある。同学年の女房役・中浜一葵と1日1球の投球練習だ。寮で4月から同部屋の中浜は「自分がキャッチャーで、坂本がピッチャーをやって近い距離で軽くボールを投げる。試合が終わるイメージとかをしてます」。東東京大会前に始め甲子園出場につなげた縁起の良い儀式。再び同部屋となった今大会も続け、勝ち上がってきた。
準々決勝は日大三との東京勢対決だ。相手を伝え聞くと数秒沈黙し「東京ですか…」と苦笑い。ただ、昨夏準Vの悔しさは忘れていない。「絶対勝ちたい。去年の忘れ物を絶対取りに帰る。
▼5度目の東京対決 日大三、関東第一がそろってベスト8進出、第2試合での対戦が決まった。夏の甲子園で東京が東西2代表になった74年以降、2校ともに8強進出は、15年関東第一・早実以来、5度目。
また、東京勢同士の対戦は、72年春決勝で日大桜丘が、連覇を目指した日大三に●5―0。兄弟校対決に勝利。夏は77年2回戦で、早実が前年Vの桜美林に4―1。95年準々決勝で帝京(この年V)が●8―3創価。10年3回戦で関東第一が●10―6早実に次ぎ、春夏通算5度目だ。