各担当記者が推す選手を紹介する「推しえて」は、西武・佐藤太陽内野手(23)。24年育成ドラフト2位で入団。
スピード昇格にもちろん喜びはあったが、今はもがく日々だ。
「今年はプロの技術をつけるっていうのがテーマだったので、もちろんうれしいですけど、ちょっと(想像より)早かったですね」
春季キャンプは高知・春野の2、3軍スタート。3月、楽天とのオープン戦2連戦(草薙)で1軍にスポット参戦した。
「ほんとに無我夢中で打って守って走って。キャンプでやってきたことを出そうっていう雰囲気があったので、そこに乗っかろうとやってました」
プロ入り後初の1軍。レベルに圧倒された。
「収穫よりは反省が多かったので、いい経験になった」
悔しさを手土産に、ファームに戻ってからは打撃力向上に熱が入った。
「始動が遅いって言われることが多いので、早めに準備して打ちにいこうと」
一方、守備ではとにかく確実性にこだわった。
「ミスをしないことを一番の目標にして、そこから何が必要かを逆算する。一つは焦らないこと。
手応えをつかみ始めた7月にはさらに打撃フォームを改造。最近のお手本は自分とはタイプの違うバリバリのホームラン打者。SNSで偶然目にしたMLBフィリーズのカイル・シュワバー外野手だ。
「手の動きが本当に少ないんで、そこはまねしたい」
鍛錬が実り、7月にはファームで10試合に出場して打率3割8分1厘、16安打、7打点、1盗塁の成績を残し「スカパー!ファーム月間MVP賞」も受賞した。
「不安もあったけど、長打も打てるようになりましたし、それが受賞という結果につながったことはよかった」
勢いに乗ったまま期限直前の7月25日に支配下選手契約。翌26日から1軍の試合に出場したが、なかなか初安打が出ず、焦りが募った。
「ファームと雰囲気もだいぶ違うので。その中で守備について足を動かして…とか、いろいろ考えてたら今までさばけてた打球もミスしちゃったりとか」
ようやく初安打が飛び出したのはプロ6試合目の5日・日本ハム戦(エスコン)。第1打席でカウント2―2から山崎の8球目、チェンジアップを捉えて右翼フェンス直撃の二塁打を放った。
「ツーストライクから粘るっていうのは意識してたので。感触は良かった」
1本出たことで心も軽くなった。その後も15日に抹消されるまで1軍で試行錯誤を繰り返した。
「活躍したとかじゃないんですけど、7日の日本ハム最終戦は守備も打撃も焦りはなかった。こういう感じが一番いい状態なのかなって思いながら試合をしていました」
もともと堅守巧打の内野手。グラブへのこだわりも強い。
「久保田スラッガーのやつで、ちょっと縦型で捕球面広くして、小指側広めで作ってます」
将来的には、DeNA・藤田2軍ディフェンスチーフ兼内野守備兼ベースコーチの現役時代のような守備力を兼ね備えることが理想だ。
「動き、捕り方、投げ方全部がめちゃくちゃきれいなんですよ。小学生ぐらいからずっと見ていて憧れてます」
伸びしろ十分の23歳。謙虚に努力を積み重ね、最高の選手を目指す。
「全てにおいて技術不足をすごく感じます。ヒットに重きを置く中でも一発あれば魅力的。わがままですけど、いいバッターひっくるめて全部備えたみたいな選手になれたら」
◆佐藤 太陽(さとう・たいよう)2002年5月19日、静岡県生まれ。23歳。浜松商では甲子園出場はなし。