第107回全国高校野球選手権大会を出場辞退した広陵(広島)が16日、同校の公式サイトで「本校及び本校の生徒に関するご指摘について」と題した新たな声明を発表した。

 その中で、文春オンラインの記事「《広陵高校野球部》中村奨成の同期生が決意の告白 部内暴力の“悪しき伝統”を放置したのは中井監督」についても言及した。

同記事は、過去に野球部に在籍した男性A氏へのインタビュー記事が掲載されたもので、学校は「文藝春秋社からこの件についての問い合わせをいただき、当時の記録及び関係者に再確認を行ったうえで同月12日に回答を差し上げております。しかし、本校が回答した内容は、有料記事部分に要約が記載されているのみですので、誤解を避けるため、A氏がけがをされた事象に関する本校から文藝春秋社への回答の概要を別紙のとおり公表させていただきます」と説明。後述の通りに発表した上で、「A氏が『2015年秋頃に野球部内での集団暴行に遭った』という事実はありません」などと否定した。

 同校を巡っては、大会直前の7月下旬から、部内で暴力を伴う不適切行為があったとされる事案がSNS上で拡散。大会運営への支障や、在校生への中傷があったことを踏まえ、14日に予定されていた津田学園(三重)との2回戦を前に出場辞退を決めた。

 以下、声明全文

 (1)2015年4月に本校に入学し硬式野球部に所属していたA氏についての質問事項のうち、以下の点について誤りがあり、または、把握をしておりません。

〈1〉A氏が「2015年秋頃に野球部内での集団暴行に遭った」という事実はありません。2015年9月18日、A氏が夜間の自主練習中、硬式野球部室の鉄製の重いドアで頭を打って倒れたと、部員からコーチに連絡があり、来校中の外部トレーナーとともに救護いたしました。頭を打っていることもあり、外部トレーナーが救急車を要請してコーチが同乗し、近隣のX病院に搬送しました。X病院での検査の結果、異常はなかったものの、A氏が一部上肢下肢の動作不良を訴えていたので、念のため別のY病院に移動して頭部以外の検査を実施しました。Y病院からは別の本校硬式野球部指導者も同行しております。Y病院における検査についても異常は認められなかったものの、A氏がY病院では下肢の動作不良を訴えていたため、同日深夜、念のため再度の慎重な検査のためにZ病院にて再検査をしました。

CTとMRIの検査がなされましたが異常はなく、経過観察のため入院をすることとなりました。

 以上が、A氏が頭部を強打して救急搬送された夜から、Z病院に翌日未明に入院した過程となります。この過程でコーチらがA氏本人から「部室のドアで頭を打った」という経過を聞いておりました。この過程には、中井哲之監督は関わっておりません。

 翌日、部員からコーチが経過を聴取したところ、以下のような経過でした。A氏と部員Xがドア付近でふざけあっていたところ、別の部員Yが練習道具を部室に取りに来て退出する際、開けたドアが勢いよく閉まったときにA氏の頭部に強く当たったとのことでした。このとき、別の部員Zが閉まる扉でA氏が頭部を打ったところを目撃しており、部員Zから来校中のトレーナーに連絡をしております。

 今般貴誌からこの件についてお問い合わせをいただいたこともあり、当時在職していたコーチら、当時の外部トレーナー及び連絡をとることができる当時の部員らに再度確認を行いましたが、上記のとおり当時把握した事実経過に間違いありません。また、鉄製のドアのクローザー(ゆっくり閉まるように調整する機構)が正常に機能せず勢いよく閉まる状態であったことが事故の発生原因と考えられたことから、直ちに当時の本校用務員2名が応急修理をしてドアクローザーの調整をしました。また、その約2年後に、安全性・利便性を高めるため当該ドアの交換改修をしております。これらのことについても、今般、ご存命の当時の用務員1名にドアクローザーを調整した経緯を確認し、その後のドア交換に関する記録を確認いたしました。

 したがいまして、以上の事実経過には疑義がないものと考えております。

〈2〉A氏に対して「真暗な部室内において、上級生である2年生複数人が正座するよう指示した後、上半身を中心に蹴るなどの暴行を加えた」「上級生の中にはスパイクを履いたまま暴行に及んだ生徒もいた」といった事実は把握しておりません。本校硬式野球部は当時から暴力行為やいじめなどがないよう厳しく指導をしておりましたし、そのような申告がA氏からされたこともなく、お尋ねのような事実はなかったと考えております。

 なお、上記のとおり自主練習中に発生した偶発的な事故であるため、広島県高野連・日本高野連には報告をしておりません。暴力事案である可能性があれば直ちに広島県高野連に一報を入れているはずですが、本校からそのような連絡を入れた記録はありません。

 (2)上記(1)の件に関する中井哲之監督の発言についても、ご指摘はいずれも事実誤認であると考えております。

〈1〉A氏の入院中に中井監督はZ病院を訪問しており、「少しでも早く良くなって野球を頑張ろう」と声をかけております。このとき、A氏と話をする中で、部室の扉で頭を打ったという事故発生の経過について言及があった可能性はあります。しかし、前提として本件が暴力事案であると把握されておらず、A氏からもそのような申し出がありませんから、「隠蔽を図る」という動機がありません。また、同日、A氏の父親から、A氏を本校に紹介した外部の方に対して、「中井監督が見舞いに来てくれた。息子も喜び前向きに頑張ろうとしている」という連絡があった旨、当該外部の方から中井監督に対して連絡がありました。

 したがって、ご指摘のようなやりとりはないものと思われます。このことについて中井監督及び当時同行した職員に今般改めて確認いたしましたが、暴力事案があったという認識も隠蔽を図るやりとりもいずれもないと回答を得ております。

〈2〉中井監督訪問の同日に、当時の野球部長と部員XもA氏本人を訪ねており、怪我が生じたことについてA氏とその父親にお詫びをしております。

 A氏は、Z病院への入院後、身体が一時的に麻痺するなどの症状があり、退院後も一時車椅子での学校生活となりましたが、その後硬式野球部の活動にも復帰されております。本校の設備が一因となってA氏にお怪我を生じさせてしまいましたことついて、本校としても申し訳なく思っております。

以上

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