巨人のライデル・マルティネス投手(28)が15日の阪神戦(東京D)でNPB史上最速で通算200セーブを達成。来日1年目から通訳を務め、“右腕”的存在だった中日の桂川昇・球団本部運営部国際グループ長(57)が祝福とともに素顔とエピソードを明かした。
200セーブ達成おめでとう。出会いは16年。当時の森(繁和)監督と「球を速く投げられる投手を探そう」とキューバへ行きました。当時の球種は直球とチェンジアップだけ。粗削りでしたがオマール・リナレス氏(現中日巡回コーチ)に紹介してもらい「連れてこう」と。最初はスパイクのサイズの情報すらなかったです。
その後、キューバ代表で来日した時に森さんとホテルまで会いに行って。体も細く、あどけなかった。森さんの嗅覚、見抜く力のすごさと同時に、宝石になるかただの石ころなのか分からないところを努力で磨いてダイヤモンドになって輝いた彼自身のすごさ。素質+努力で今があると思います。
支配下登録された2年目後半に彼はけがをし、それを機にオフの帰国前は必ずコーチにリハビリ法や練習メニューを聞きに来るようになって。毎年日本に戻ってくる度に体が大きく、球速がアップしていました。
数年前、与田(剛)さんとキューバに向かった際に帰国中の彼と会う約束をして。彼は家から車で約1時間半かけて来る予定でしたが、国の事情でガソリンスタンドに行っても「ガソリンがない」と。前日から並んでもタンクが来ず、結局現地で合流できなかった。いくら日本で成功しても、母国ではこんな大変な思いをして頑張ってるんだ…と。
来日当初に一度、昼食にステーキをごちそうしたんです。冗談で「日本で成功したらおごってね~」と言ったら、それ以来ずっと食事代を払ってくれるようになって。今でも「最初におごってくれたんだから」と。義理深い男です。ドラゴンズ・クラウン賞をもらった翌23年には、運転免許切り替えのために休日に名古屋の試験場にも何度も通って。YouTubeを見て学科の勉強をしたり、日本は交通ルールが厳しいから「もっとミラーを確認して」と教官の指導も受けてね(笑)。
20年以上この仕事をしてますが人柄や野球への姿勢は歴代1位。彼とモイネロ(ソフトバンク)が今の“キューバルート”を再構築した、扉を開いたパイオニアだと思います。打たれて、涙も流して、今のライデルがいます。一体どこまで行くのか。陰ながら見届けたいです。