◆第107回全国高校野球選手権大会第13日 ▽準々決勝 日大三5―3関東第一(19日・甲子園)

 真っ青な夏空を仰いで、ひとつ息をついた。最後の打者になった関東第一(東東京)・坂本慎太郎(3年)は胸の中でつぶやいた。

「両親は上で見ていてくれて、お疲れさまという言葉をかけてくれると思います」。母は小学校の時に亡くなり、父は昨年末に急逝。昨夏、決勝で敗れた悔しさを晴らすことはできなかったが、2年連続の8強進出を空の上で喜んでくれるはずだ。

 2点を追う9回2死。初球から積極的にスイングした。昨夏の京都国際との決勝戦。初球を見送って最後の打者になった悔しさが、坂本の熱源になっていた。1ボールの後、96キロのカーブを打ちにいったが結果は中飛。「この1年間練習してきて本当にいい打席だったと思う」と振り返りながらも、「フライアウトになってしまったので、最後のバッターになって一番悔しかった」と涙した。それでも5回には2点差に迫る右前適時打を放って意地をみせた。米沢貴光監督は「坂本一人にたくさんのことを背負わせてしまった。でも引っ張って来てくれたというのもありますし最後、坂本で終わってしまったというのも一つの流れだったと思います」とエースに感謝した。

 日大三(西東京)との東京決戦。「気持ちの入ったピッチングでした」と意気に感じてマウンドに登ったが、左腕からのスローカーブをまじえた緩急をつけた投球も通じず、6回までに被安打7、5失点。相手の4番・田中諒(2年)には左越えソロを許した。「警戒している打者に甘い球を投げてしまうなど意識が足りなかった。東京のチャンピオンを決めるので、力負けというか気持ちの面でちょっと負けていたのかなと思います」と反省。準決勝に進んだライバルには「自分たちの分まで東京を背負っていってほしい」とエールを送った。

 打って投げての二刀流。今後は大学に進んで野球を続ける意向だ。「大学でも二刀流はこだわっていきたいと思います。最大目標はプロ野球選手なので、技術をしっかり磨いていきたい」。天国の両親もきっと、そう願っているはずだ。

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