◆第107回全国高校野球選手権大会第13日 ▽準々決勝 県岐阜商8×―7横浜=延長11回タイブレーク=(19日・甲子園)
4強が出そろった。8強で唯一の公立校・県岐阜商がセンバツ王者の横浜を延長11回タイブレークの末、サヨナラで撃破。
サヨナラの打球が左前に抜けると、拳を突き上げた。県岐阜商の4番・坂口路歩(ろあ)が延長11回、2時間42分の激闘に終止符を打った。「うれしいのひと言。最高です」。3回戦まで計1失点だった横浜から16安打8得点。
今春センバツVの横浜相手に序盤5回までの4点リードも追いつかれた。9、10回と相手の2度の「内野5人シフト」にサヨナラを阻まれた。それでも10回に3点差を追いつき11回、死闘の末倒した。
横山の美技が大甲子園の雰囲気を変えた。初回2死二塁。ピンチで、4番・奥村頼人の打球が右翼後方へ飛んだ。「絶対に先制点はやらない。なんとしてでも捕ってやる」。背走しながら追い、右腕を伸ばしてジャンピングキャッチ。生まれつき左手指が欠損しているがハンデは感じさせない。チームを救うミラクルプレーに、球場中からの拍手が鳴りやまなかった。
打撃でもみせた。4回2死一塁で、来秋ドラフト上位候補の最速152キロ右腕・織田翔希の146キロ直球を左前にはじき返して4戦連続安打。「速い球を意識していた。逆方向に打てたので良かった」。チャンスを拡大し、貴重な2点目につなげ、今大会試合前まで3試合23回2/3連続無失点だった怪物右腕をこの回途中でKOした。
試合前日の18日、ナインは横浜の投手陣を打ち崩すべく、打撃マシンを145キロに設定。速球に打ち負けないコンパクトな打撃を徹底した。横山は「昨日から速い真っすぐを練習してきたので、その成果。しっかり捉えられて良かった」と笑みをこぼした。
戦前に春夏の甲子園を4度制した古豪が、創部100年の節目に16年ぶりの4強入り。公立校では明石商(兵庫)以来6年ぶりだ。89年ぶりの夏の頂点も確かに見えてきた。横山は「全国制覇を目標に今までやってきた。しっかり勝ち切って、こういうハンデがあってもみんなと同じようにできることを示したい」。今は強打者の一人として、頂を捉える。(北村 優衣)
◆県岐阜商 1904年創立の県立校。全校生徒1075人(うち女子517人)。野球部は1925年創部。夏の選手権には出場31度、優勝1度、準優勝3度。センバツは出場30度、優勝3度、準優勝3度。主なOBに高木守道(元中日)、和田一浩(元中日)、石原慶幸(元広島)、佐々木泰(広島)。